かつての好敵手に何もさせずに鮮やかな一本勝ち。37歳、さらなる進化を続ける男は、カメラ越しに指を差しながら日本の解説席に座るアノ男に次戦での対戦を要求した。
4月29日に開催されたONE Championship「ONE ON TNT IV」で、青木真也がエドゥアルド・フォラヤン(フィリピン)を相手に1ラウンド4分20秒、腕ひしぎ十字固めで一本勝ちを収めた。試合後にはゲスト解説を務めた秋山成勲に向かって「おい秋山。次はお前だ。首を洗って待っとけ」とアピール。突然の“呼び捨て”対戦要求に秋山も「普段は“秋山さん”って呼ぶのに…」と苦笑いを浮かべる場面も見られた。
青木とフォラヤンは、ONE黎明期からライト級戦線で戦ってきたライバル。2016年の最初の対戦ではフォラヤンがTKOでタイトルから青木を引きずり下ろし、2019年の日本でのタイトル戦では青木が絞め落としてリベンジを果たしている。対戦成績は1対1のイーブンだが、3度目の対戦となった今回は、両者の対戦相手の欠場により急遽決定したカードでもあった。
ゴング開始とともに、ゆったりとしたスタンスでサウスポーに構える青木。対するフォラヤンは大きなモーションから左右のフックを繰り出すが空を切る。しかし、左のフックが青木の顔面をかすめてヒヤリとする場面も。
対する青木は、左のミドルキックを2発。前回のジェームズ・ナカシマ戦でも効果的だったミドルの蹴りについて、この日ABEMAでゲスト解説を務めた秋山成勲は「思い切り蹴ってないですけど、フォラヤン選手は打撃で来られると組まれたときの間合いをどうするか考えることが多い」と話し、組みへの“伏線”としての打撃について語る。そんな最中、青木が低く素早いタックルを放った。
フォラヤンが脇を差してケージで押さえ込むと、青木は相手に乗るような姿勢から、後方に崩し鮮やかに上を取ってみせる。さらに両足をガッチリとフックしパウンド。徐々に体勢を上げマウントポジションに移行すると、ヒジで削っていく。両足フックでマウントの位置を変えながら、青木がゴツゴツとヒジを打ち下ろすたびに「バキッ、バキッ」と骨と骨がぶつかり合う鈍い音が。次第にフォラヤンの額に薄っすらと鮮血が滲んだ。
そして、フィニッシュは一瞬だった。ヒジ攻撃を防御しようとややルーズに左腕を振り上げたフォラヤン。この一瞬のスキを青木は見逃さずに、ケージ際の狭いスペースを縫うように腕ひしぎ十字固め。ケージの壁を伝うように体勢を変えガッチリ極めて一本を取ってみせた。
秋山は「テイクダウンをとったファーストコンタクトから上手く青木選手の試合のリズムにのって、フォラヤン選手が何もできなかった」と感服した様子。視聴者からも「計算し尽くされた、完成された試合運び」「年々研ぎ澄まされてるな」と青木の完勝ぶりに称賛の声が上がった。
試合後、敗れたフォラヤンが青木に駆け寄ってひと声かけ、笑顔で会話する場面も長年凌ぎを削ってきた関係ならでは。「真也おめでとう、蛇みたいな締めだった」と悔しさを滲ませながら勝者を称えると、青木もマイクを取り「エドゥアルド、お互い同い年でもう一回チャンスがあればやりましょう。(自分も)5年前に負けて苦しいことがいっぱいあったけど、また一緒に頑張りましょう」とエール。
しかし、同い年対決を制し、清々しいエンディングだけで終わらないのが青木劇場。「次に戦いたい相手は?」と訊かれると「2人います。(今回対戦が流れた)セージ・ノースカット。そして今、日本の解説席に座っている秋山、おまえ適当なことやってんじゃねえ。試合に穴を空けたの、わかってるんだ。次はお前だ! 首を洗って待っとけ」と、プロレス仕込みのマイクで次戦の対戦相手に秋山を指名した。
この名指しのアピールを受けた秋山は「絶対、言うと思った。何年も前から話があって…僕も(良い状態で)実現するのを願っている」と本気モード。その一方で「普段会ったときは“秋山さん”って言うんだけどな。“おい秋山!”って呼び捨ては、おかしいなぁ」と、素で接したときの青木の姿を暴露して笑いを誘っていた。