チーム名の通り、考えていることもバラバラだった。プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」予選Bリーグの第1試合、チーム糸谷とチーム菅井の対戦が5月1日に放送された。チーム糸谷のメンバーは糸谷哲郎八段(32)、山崎隆之八段(40)、服部慎一郎四段(21)の3人。いずれも独特な指し回しが魅力の棋士で、つけたチーム名は「FREE STYLE」。指し手については、いろいろな手が飛び交うとファン・関係者も楽しみにしていたが、戦前に3人で集まって目標を決めるところから、その自由奔放ぶりが全開になった。
1日の放送で映し出されたのは、3人がビルの屋上で座りながら、チームの今後を語り合う場面。間に少年のようにシャボン玉で遊ぶレア映像が挟まれたが、それよりも各棋士が語る目標の違いに、ファンは驚きの連続となった。
服部四段 やるからには優勝ですかね、やっぱり。
自称「忍者」でもあり、積極策も慎重策も指しこなす新四段は、かつて街頭で漫才をしたこともある変わり種。若者らしく、はっきりと「優勝」の2文字を言葉にした。ところが続いて、チーム最年長の山崎八段の目標は“急降下”した。
山崎八段 めっちゃ言いにくいんですけど、僕、予選突破したことないので、予選突破してみたいです…。
確かに山崎八段は個人、団体通して過去2回出場し、いずれも予選敗退で終わっている。早指しは得意ながら、持ち時間5分・1手指すごとに5秒加算というフィッシャールールには苦戦してきた。本人からすれば、とても現実的な目標でもあるのだが、当然他の2人はずっこけた。
糸谷八段 めちゃめちゃトーンダウンしたじゃないですか!優勝から予選突破って言われたら、もう…(笑)
このコメントには、柔軟な対応で強豪棋士の攻めを受け潰してきた糸谷八段もこらえきれなかった模様。ついには人目もはばからず、爆笑し始めた。結局、締めの3人がひとことずつ目標を語ったが「優勝!」(服部四段)、「予選突破!」(山崎八段)、「MVP!」(糸谷八段)と、最後も合わせるつもりは一切なし。この好き放題な戦いこそが、チーム糸谷の魅力だ。
◆第4回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名漏れした棋士がトーナメントを実施、上位3人が15チーム目を結成した。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)