幼いころから、何千、何万という対局を見てきた棋士、女流棋士も思わず「速いぃぃ!」と悲鳴にも似た声をあげずにはいられなかった。プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」予選Bリーグの第1試合、チーム糸谷とチーム菅井の対戦が5月1日に放送された。この第4局で糸谷哲郎八段(32)と郷田真隆九段(50)が対戦。後手の糸谷八段が一手損角換わりを選択し、これを郷田九段が真正面から受け止める一局になったが、この序盤の指し手が尋常ではないスピードに。両者の手が交錯しかねないほどの、超速将棋となった。
一局終えた後の、感想戦でもここまで速くはないかもしれない。それほどまでに、2人の手は速く動いていた。記録係の声に合わせて一礼し、糸谷八段がチェスクロックを押したところで対局開始。ここから目にも止まらぬ速さで手が動き、駒も動いた。解説していた石井健太郎六段(29)が「戦型は、一手損角換わり」と言い終えるか否かのところで「速い!」と驚くと、続けて聞き手の渡部愛女流三段(27)からも「なんか速いぃぃ!」と、謎なものを見るような悲鳴をあげた。さらに再び石井六段も「郷田先生が、こんなに速く指すところを見たことがないです!」と、それまで落ち着いた口調で解説をしていたのもどこへやら。ついつい声がうわずった。
作戦会議室で見ていた棋士たちも同様だ。チーム糸谷・山崎隆之八段(40)は「めっちゃ速い!おおー!」と、カーレース観戦のようなリアクション。また、手元にあった盤駒を使っていたチーム菅井のリーダー・菅井竜也八段(29)が「こちらで見ますか」とモニターの方を向いてつぶやくと、チームメイトの深浦康市九段(49)も「もう追いつかないもんな」とお手上げ状態になった。
プロが追いつけないのだから、アマチュアの視聴者たちが追いつけるわけもない。ABEMAのコメント欄には、まさに前代未聞の超速将棋に「何倍速だよw」「格調高い早指し」「まさかの速さ」「何これ、想像以上なんだけど」と驚きの声が連続。公式戦では見ることができない戦い様を堪能した様子だった。
なお、この一局は終盤にも盤上の駒が乱れるほど、激しい叩きあいに。糸谷八段が勝利したが、敗れた郷田九段は「お見苦しかったかもしれないですけど、気合を入れて指しました。もうちょっと対局姿をちゃんとしないと。でもなりふりも構っていられない、そんなところです」と振り返っていた。
◆第4回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名漏れした棋士がトーナメントを実施、上位3人が15チーム目を結成した。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)
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