コロナ禍が女性たちに与えた影響が浮き彫りになっている。内閣府男女共同参画局の研究会が先週、丸川珠代担当大臣に提出した報告書によれば、この1年で雇用者数が男性28万人、女性20万人減少している一方、1回目の緊急事態宣言の発出時には、女性で職を失った人が男性の2倍に上っていたという。
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また、自殺者数については男性が2019年から23人減少したのに対し、女性は935人の増加。とりわけ若い世代の自殺者が増えているとの指摘もある。さらにDVの相談件数も、2020年度に比べ約1.5倍に増加。白波瀬佐和子座長は「一番弱い立場にある非正規雇用の女性たち、あるいはシングルマザーといった人たちに、深刻な影響が出ていることが明らかになった」と指摘している。
■「バイトができないのでパパ活で日用品を入手している」といった訴えも
若年女性に対する支援を行っているNPO法人「BONDプロジェクト」には、「バイトすら採用されない。先が見えない世の中で本当に苦しくて限界を感じる」「生活費が足りず、コロナの影響でメンタル不調も。バイトができないのでパパ活で日用品を入手している」といった20代女性からの訴えが寄せられているという。
「死にたい、消えたいという深刻なSOSも増えている。就活生からの相談もあるが、インターン先が見つからない、学校に行く機会を失ってしまって就職の機会も失ったという子もいる。先が見えない不安で孤独を抱えている女性たちが多い。若い女性の受け皿を充実させてほしい。社会や人との繋がりを保ちながら、安心・安全に過ごせる場所が必要だ」(橘ジュン代表)。
“ミレニアルズの私らしい働き方を叶えるプラットフォーム”「SHElikes」を運営するSHE inc.の福田恵里氏は「私たちのアンケート調査でも、コロナ禍で収入が減ったという人が25%以上いた。その一方で、追い風というか、ポジティブな部分もあると思う。『SHE』に入られた方の7割以上はコロナ禍でキャリアに対する意識が変わったと言っていて、こういう機会だからこそ、本当に今の働き方でいいのだろうか、今の会社のままでいいのだろうかと見つめ直して、アクションをする人が増えている。副業に挑戦してみたり、やってみたかったフリーランスになるべく勉強を始めたりと、テレワークとか在宅ワークを使って新しい生き方にチャレンジする方が増えるきっかけになったと思う」と話す。
しかし橘代表は「リモートの環境を望んでもできないというような相談もあるし、逆に家族に関することや虐待、DV相談も増えてきている。お家に居場所がない子からの相談もある。特に家の中で起きている暴力はされている側としている側が同じ場所にいることもあって、逃げ込む場所もない、相談したくてもでないということで、一人で抱え込んでしまうというケースが多い」と訴えた。
■経済的な困難、さらに介護負担やDV、メディアの“煽り”も背景に?
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「おそらくエッセンシャル・ワーカーや販売系の仕事に就いている方の比率が女性の方が高いため、失業や困窮のケースも多いのではないか。ただ、この問題は男女問わず、“新しい下層階級”、“アンダークラス”と言われる労働者の問題として捉えた方がいいのではないだろうか」と指摘する。
「2000年代以降、派遣法の改正によって生産人口の4割以上が非正規雇用になった。結果、就職氷河期世代の40台の人たちも含め、正社員にもなれない、ロールモデルもないという人たちが増えた。そういう中で自己啓発本やオンラインサロンみたいなものも流行っているが、ホリエモンみたいになれる人なんて、数万人に一人なわけだ。
その一方で、かつては労働者の味方だった社会運動が、憲法やマイノリティのアイデンティティ・ポリティクスと言われる課題へ向かっていった。アメリカでは、この構図がトランプ大統領を誕生させたと言われているし、中間層がそこまで転落していなかった日本でも、そうした構図がコロナ禍で一気に可視化されるようになってきたということだと思う。確かに日本はOECD諸国のうち、アメリカに次ぐくらいに支援にまわしているが、政府やメディアのコミュニケーション不足もあって申請されずに行き渡っていないという課題もある」。
また、リディラバ代表の安部敏樹氏は「自殺の問題に関しては、特に若年女性のデータの動きについてはきちんと追わなければならない。UCLA助教授の津川友介医師の分析によれば、経済的な困難以上に介護の負担やDV、メディアがコロナの恐怖を煽ったことなどが要素として大きいのではないかとの仮説が出てきた。
自殺の手前には抑うつの症状が出ることが多いので、そのサポートをしなければいけないし、これは給付金では解決しないという意味では、経済的な困難の話とは別だ。これは介護の負担を家族に押し付けない仕組み、離婚をしやすくする仕組みなどを考えていかないと、解決策にはならないと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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