先月、食料の廃棄量が世界ワースト1位の中国で「反食品浪費法」が成立した。客に“過剰オーダー”させた飲食店に最高で約17万円、ネットなどでの“大食い動画”には最高で約170万円の罰金が科されるというものだ。
・【映像】中国「大食い動画禁止」背景には食料安全保障?日本の食品ロス問題を考える
ANNの千々岩森生・中国総局長は中国政府の狙いについて「私も中国で暮らして3年になるが、“国家の安全”という言葉をよく耳にする。それはつまり、中国共産党の政権をいかに安定的に持続させるか、そのために批判勢力、反対勢力をいかに潰していくか、ということだ。
食料についても、環境問題、SDGsの問題もあるが、むしろ中国政府の狙いは“安全保障”だと思う。欧米とやりあう中で部品の輸入を切られてしまうと半導体が作れなくなってしまうのと同様に、食料についても止められて立ち行かなくなり、政権が不安定になることを恐れているのだと思う」との見方を示す。
中国では徹底した新型コロナウイルスの抑え込み策が奏功、北京では当たり前のように会食ができる状況になっており、「徐々にそういう“食べ残し禁止”の熱が失われているようにも思う」と話す。
「先週末、地元の人しかいないような店で食事をしたが、満席だった。各テーブルは肉も魚も野菜もお酒もあって料理の山。みんなワイワイやっていた。お達しが出た去年8月に行った店で完食したところ、サービス券をもらえたこともあった。ただ、それでは店としても客単価が下がってしまうし、中国は個人レベルでも国レベルでも、本当に“メンツ”が大事。“これだけ料理を振舞っているんだ”というのが重要で、むしろお客さんが料理を残すくらいにもてなさないとばつが悪い、という文化がある。そこはあまり影響を受けていないのではないか」。
他方、日本の状況も中国にひけをとらず、まだ食べられるのに廃棄される食品、いわゆる“食品ロス”は600万トンに上っている。
フードジャーナリストの井出留美氏は「年に600万トン以上ということは、東京都民が1年間食べられるくらいの量だ。特に日本においては、企業間で“これに従わないと取引ができない”というようなルールがある。例えば“欠品は許さない”となると、やはり作り過ぎざるを得ない。それが結局余ってしまって廃棄されているということになる。
公正取引委員会データによれば、コンビニ1店舗あたり年間平均で468万円分を捨てているという。コンビニはスーパーやデパ地下のように値引きすべきだし、消費者の側も、その“捨てるためのコスト”を払っているんだという意識を持たなければならないと思う」と話す。
「日本でも2019年に食品ロス削減推進法ができたが、議員立法なので抽象的な部分がある。フランスのペナルティやイタリアのインセンティブのように、はっきりした“アメとムチ”があったほうがいい。また、日本は世界一ゴミを燃やす国だ。しかも燃えにくい食べ物を燃やし、エネルギーとコストを使って環境を汚しているという問題もある。
その点、中国では生ごみを資源化しようとしているし、国によってはゴミをQRコードで管理していたり、インセンティブが出る仕組みを導入していたりする。その点でも、日本は遅れてしまっている」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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