スギ薬局を展開するスギホールディングスの創業者で、愛知県西尾市在住の会長夫妻が優先的に新型コロナウイルスのワクチン接種を行えるよう、市が便宜を図ったとして問題になっている。
【映像】市に何度もあった秘書の問い合わせ内容「会長の意向が強い」「薬剤師だから医療従事者枠で」
当初、秘書の問い合わせに対し、西尾市は「対応できない」と断った。しかし、優先接種について何度も秘書から問い合わせがあり、近藤副市長などに相談の上、配慮を決定。今月10日の高齢者予約を仮おさえしたが、報道を受け、当日に取り消した。
西尾市のワクチン接種方法は、電話やネット、LINEで受け付けていたが、予約開始初日の6日は、どれもつながりにくい状態が続いていた。LINEとネットは、およそ10分で受付が終了。電話はおよそ6時間で受付が終了した。
このニュースに慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏は「便宜を図ってもらうのは良くないこと」とした上で「人間臭いニュース」だと感じたという。
「ワクチン接種にかかわらず、地元で大きな会社を作って成功した人などが便宜を図るよう求める行為自体は日本全国いろんなところで起きているんだろうと思う。“裸の王様”にならず、襟を正して分別を持ちながら生きていくことは難しい。もちろん、新型コロナのワクチン接種に便宜を求めるのは良くないことだが『まぁそういうこともあるだろうな』と思った」(以下、若新雄純氏)
スギ薬局1号店跡地に高齢者向け施設を建設し、市に無償提供するなどの支援を行っていた会長夫妻。報道後、スギホールディングスは、公式サイトで謝罪のコメントを発表。秘書が西尾市役所に問い合わせをした経緯や、会長が過去にアナフィラキシーショックを経験し、ワクチン接種を希望していない旨などが公表された。西尾市によると、秘書とのやり取りは10回前後にのぼり、市の職員は通常の要請ではなく「強い圧力を感じた」としている。
若新氏は便宜の問題以上に、その後公式から出たスギ薬局側の謝罪文書に「潔(いさぎよ)くないと思う」とコメント。「僕も、もしこの後の人生でそんな大成功を収めたとしたら、裸の王様にならない自信はない(笑)。弱い人間だから。でも、その後の謝罪が大切だと思う。もし僕だったらどのように謝るか、イメージトレーニングした」という。
「僕がもし大成功できて『便宜を図って』と言ってしまいリークされて報道されたらどう謝るか。『勘違いしておごり高ぶってしまいました。浅はかな人間でした。もう一度、市民の一人として一からやり直したい』と自分の弱さを認めて謝るしかないと思う」
「経営者として立派で、人間的にも素晴らしいのが理想だが、人間はそんなに完璧ではない。『街にこんなに貢献しているのに』と裸の王様になってしまったのなら、弱さが露呈したときにそれを認めて素直に謝れるかどうかの方が大切だと思った」
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