「映画人の人生を狂わせる私権制限なのに…」なぜ東京都は映画館を“集客施設”に分類? 憤る全興連会長
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 緊急事態宣言が延長される前日、都庁前では映画館への休業要請に抗議するサイレントデモが行われ、駆けつけた映画配給会社「東風」の木下繁貴代表は「映画館やプラネタリウムはダメっていうのが急に出たことはとてもショックだ。理不尽な状況だ」と訴えた。

・【映像】「”過ちを改めるに憚ることなかれ”と言いたい」佐々木会長に聞く

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 政府は宣言延長に伴い、イベントなどについて感染対策を行ったうえでの再開を容認、映画館や劇場などの施設についても人数制限などを条件に営業を認めていた。一方、東京都は映画館や体育館を「集客施設」、劇場や演芸場を「イベント関連施設」と区分、「映画館のように無観客で開催ができないイベント系施設については休業」(都担当者)と、大規模な映画館に対し休業要請を継続したのだ。

■「人生を狂わせる私権の制限なのに、憤りしか感じない」

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 シネマサンシャインを運営する佐々木興業社長で、映画や演劇の興行者らでつくる全興連(全国興行生活衛生同業組合連合会)の佐々木伸一会長は次のように説明する。

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 「延長前の緊急事態宣言に基づく休業要請では、国の事務連絡上も百貨店や映画館・プラネタリウムは“大規模商業施設”に分類され、演劇場や演芸場に対しては無観客での開催が要請されていた。しかし7日に延長が決まった際、国は映画館を“イベント関連施設”に分類し直していたのに、なぜか都は“大規模商業施設”のままにしたために、このようなおかしなことが起きている。

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 この点について我々が都に説明を求めたところ、“総合的な人流抑制”というような答えしか戻ってこなかった。それが説明というのであれば、何でもありになってしまう。例えば家電量販店に来る人と、映画館に来る人とで、“人流”の何が違うというのか。こんなひどい説明で納得しろと言う方がおかしい。

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 公務員や自治体は当然、憲法に拘束されているはずだが、特措法全体も含めて、我々に保障されている営業の自由や法の下での平等などの私権の制限を課していると思う。人の人生を狂わせるかもしれない命令を、何の根拠や覚悟もなく出されるのは非常に遺憾だ。憤りしか感じない」。

 佐々木会長たちはこれまで、業界として様々な感染防止対策に取り組んできたという。その甲斐あってか、現時点で映画館におけるクラスターが確認されたことはない。

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 「私も携わったが、実証実験を繰り返し、科学的知見に基づいてガイドラインを作成した。そもそも興行の許可を得ている映画館には、非常に厳しい環境の制限がある。換気のレベルについても、客席数150人で全員がマスクをしていた場合、1人が感染していたとしても、残りの149人に感染してしまう可能性は0.2%。クラスターの事例がないということからも、非常に厳しくやってきたという自負がある」。

■医師は「どうしても休業を要請するなら、しっかりとした補償を」

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 Twitterアカウント「手を洗う救急医Taka」としても知られる、新型コロナワクチン公共情報タスクフォース副代表理事で CoV-Navi副代表の木下喬弘医師は「どのような場面の感染リスクが高いのか、科学的なエビデンスに基づいて対策を決めていくのが基本だし、第1波、第2波を経て、どういうシチュエーションで感染が増えるのかということはわかってきた。また、日本ではクラスター対策を行う中で、WHOや米CDCよりも早く“三密の回避”ということも出てきた。

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 ただ、“この場面よりもこの場面の方が感染リスクは高い”ということを正しく定量的に言うのは非常に難しく、推測でやっていくしかない部分もある。例えば声を出さない映画館での感染リスクがライブハウスの感染リスクよりも低いということは間違いないと思うが、演劇と比べてどうなのか、クラシックのコンサートと比べてどうなのか、ときめ細やかに決めていくのは難しい。実際、飲食店への要請も、ものすごく確かな根拠があって行われていることではないだろう。

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 それでも何か対策を打たないといけないということであれば、密閉空間で、人が喋る場所はリスクが高い、ということを元に順位を付けて考えていくしかない。僕自身は映画館の感染リスクがそれほど高いとは思わないが、どうしても休業要請をするということであれば、しっかりとした補償をするしかない」と話す。

■「小池知事には、“過ちを改めるに憚ることなかれ”と言いたい」。

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 立憲民主党の蓮舫代表代行は12日の会見で、「映画館はダメで、なんで劇場はいいんだ。国立の文化組織と、それ以外の扱いはどうなんだ。むしろ宣言を受けた地域の人たちの混乱に拍車をかけているのが非常に心配だ」と懸念を示している。

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 佐々木会長は「東京の劇場経営者たちからは“なぜ、映画館とプラネタリウムが?”という声を多くいただいているし、東京の映画館が閉まることで公開が中止になる作品も多いことから、地方の映画館もあおりを受けて非常に疲弊している。また、出演作が公開されなかったことで、一生に一回のチャンスを失ってしまった若いタレントさんもいるかもしれない。

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 我々が出させていただいた収益から配給会社、製作委員会などにリターンされ、映画の再生産がつながっていく。この流通の仕組みが止まってしまえば、協力金や補償だけでは成り立たなくなってしまう。言い方は良くないが、“大きな映画”が公開中止や公開延期になっているので、その先にある“小さな映画”の上映ができなくなる事態が容易に想像される」と指摘する。

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 その上で、「勘違いしていただきたくないが、我々は何が何でも映画館を開けたいと言っているわけではない。公共の福祉、感染防止に協力するのは当然のことで、これまでも科学的な根拠があることには従ってきたし、我慢すべきことは我慢する。そして時宜を得れば、みんな笑顔でお客さんをお出迎えする。そういう世の中になることが一番の願いだ。

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 しかしマスコミも含め、“よく分からないけど、危険だからここは閉めよう”という態度によって、人生を狂わせる可能性のある私権制限を行う、そのハードルが、下がっていないだろうか。今回、仮に国との意思疎通が上手くいかず、以前の区分のままにして発表してしまったということであれば、小池知事には、“過ちを改めるに憚ることなかれ”と言いたい」と訴えた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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