「仕事をすれば、その分だけ子育ての時間が減ってしまう。私も、完璧に両立させたいと思いながらも子どもを親に預けたこともあった。するとやっぱり“育児放棄”だと言われて、“なんて自分はダメな母親なんだ、母親失格なんだ”と、病みそうになる時もあった」
シングルマザーとして13歳の息子を育てるモデルの益若つばさ。これまで子育て仕事の両立に悩み、“自分は母親失格なのではないか”と考えてしまうこともあったという。12日の『ABEMA Prime』では、そんな益若と、“シンママ”の生きづらさ、そして理想の母親像を押し付ける社会について考えた。
■「“ご飯にお醤油だけでもいいかな”、という感じの時もある」
国立成育医療研究センターが先日発表したデータでは、うつ病などの“心の不調”を抱えるシングルマザーは9人に1人の割合に達しており、ふたり親世帯の母親に比べ「毎日喫煙する」は4倍、「毎日飲酒する」も2倍との結果が出たことが注目されている。
センターでは、「3世代同居でないシングルマザーが様々なストレスにさらされている」と分析。公的支援が確実に受けられる体制の拡充を提言している。
益若は「いかに子どもが楽しく、美味しく、健康的に…ということを考えるあまり、自分のことに手が回らなくなることは多いと思う。私の場合も、息子が寮に入った途端、自分の食事のことがどうでもよくなって、“ご飯にお醤油だけでもいいかな”、という感じの時もある。特に小学校に上がる前の子どもを育てる間はストレスも溜まるし、煙草を吸ったり、お酒を飲んだりすることは良くないことだとは言えない」とコメント。
「BlackDiamond」リーダーのあおちゃんぺも「独身だろうが母親だろうが、成人なら飲酒・喫煙をしても法律違反ではないし、“母親失格”ということにはならないはずだ。批判している人の中には、自由にできない自分を投影して、飲酒・喫煙をしている人を許せないだけの人も多いのではないか」と疑問視。
ドワンゴ社長で慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏は「日本にはシングルマザーが約145万人いて、うち85万人が親や他の方と同居をしておらず、さらにその6~7割は生活保護世帯だ。喫煙・飲酒のようなデータだけにフォーカスするのではなく、ひとり親家庭の困窮という、経済の問題として考える必要がある」と指摘。
詩人で国学院大学経済学部の水無田気流教授(社会学)は「『意志力の科学』(ロイ・バウマイスター、ジョン・ティアニー著)という本では、意志の量には上限があり、使うことで消耗するということが書いてある。いろんな要素が背景にあるはずなので一概には言えないが、日本のシングルマザーは先進国の中でも最も就業率が高い上に、ワンオペで子育ても家事もこなさなくてはならない。つまり、意志決定する場面があまりにも多いために疲れ切ってしまい、健康的な生活習慣を維持するということまで意志が回らなくなっている、という可能性がある」とした上で、次のように提言する。
「8割以上のシングルマザーが働いている一方、5割以上は貧困世帯だ。就業支援はずいぶん行われてきているが、必要なのは、貧困から抜け出すための支援だ。先進国の中には、行政が担当者を付け、職業訓練期間中は支援金を出すとともに相談に乗り、就職して軌道に乗り、高水準職になって収入が安定してからも定期的な面接を行うなどしている。“スーパーのパートが見つかったからいいよね、おしまい”ではなく、貧困から抜け出すための総合的・包括的な工夫が必要だ」。
■「楽できるときに楽しておかないと、自分が壊れちゃう」
益若は先月、息子の中学校の入学式に金髪で出席したことが話題を呼んだ。自身のYouTubeチャンネルでは、「“子育ては苦労してなんぼ”っていうイメージがある」「“こんなお母さん嫌だ”とか、“ありえない”とか、賛否両論みたいな感じで。でも、息子が12歳になって思うのは、楽できるときに楽しておかないと、自分が壊れちゃうということ」と話していた。
「小学校のお受験では、親の収入や背景、“常識”とかも見られている気がしたし、私はシングルマザーなので、子どものためだと思って、髪の毛を黒くしていった。でも、中学の受験では親の面接はなく、子どもだけを見てくれていると思ったので、仕事上も“この髪色がいい”と言われている姿で行った。息子も“髪の毛の明るいママが入学式に行くけどどう思う”と聞いたら、“何も思わない。なんで?”って感じだった。
昔から批判はされ続けているので特に傷付いたということはなかったが、“一貫性がない”と言われることもあった。そして“Yahoo!ニュースのトップになってるよ”と友達に言われたので、“炎上してるんだな、めっちゃ怖いな”と思いながらコメント欄を見に行った。袋叩きかなと思ったら、意外と“個の時代だからいいじゃないか”という温かいコメントも多くて、泣きそうなくらい感動した。子どもが笑っていれば、見た目は関係ないのに、周りの視線を気にして苦しんでいるお母さんたちもいると思うし、私も今までは炎上しないようにと思って生きてきたけど、こういうことを発信することによって、変えるきっかけになればと思った」。
夏野氏は「学校も含めて、日本社会はものすごく単一だし、母親同士でも、“あのママ、ちょっと違うよね”みたいな話をしてしまう。うちの娘は高校からインターナショナルスクールに通い始めたが、生徒の人種がバラバラなので、あそこの親はどうだとか、そういう話が一切ないと言っていた」とコメント。
水無田氏は「Yahoo!ニュースのトップになったということは、それだけ関心が高く、母親に対して何か言いたい人、何か言われた母親が多いと言うことだと思う。私は個人的に“母親取り締まり警察”、“ママポリ”と呼んで、やり過ごすようにしているが、子育て支援のNPO活動をしていると、それこそ化粧していただけで、“母親のくせに化粧なんかしやがって”といった相談は枚挙に暇がない」と話す。
「実際、先進国の中で、育児も家事も要求水準が一番高くて手間数が多いのが日本だという国際比較論文もあるし、しかも夫がいても家事・子育てをやらないので、女性が男性の平均5倍くらい家事、子育て、介護などのケアワークに時間を費やしているという調査もある。先進国で一番“子育てが楽しくない”と言っているのも、日本の母親たちだ。
背景には、益若さんがおっしゃる通り、子育てにおいて母親に自己犠牲を強いて、いわば“苦行化”させている圧力があると思う。“母性神話”といって、母親は聖なるものなので、自分のおしゃれや楽しみ、個性といったものを放棄し、黙々とやらなきゃいけない。これではブラック企業で言えば、“やりがい搾取”だ。そして、それによって子どもがよく育つかといえば、必ずしもそうではないと思う」。
■「不幸だと感じたら不幸な部分を見せることも悪くない」
「自分が親になって思うのは、みんなが協力できるようになればいいのに、ということ。完璧なお母さん像、常識のあるお母さんが求められたりするし、他の親からの目も厳しい。お父さんがいても本当に大変なのに、頼る人が周りにいないシングルマザーのみなさんは、日々どれだけのストレスがあるだろうと思う」と話す益若。
「最近思うのは、何も不自由なく育てたからといって、めちゃくちゃ立派な子どもに育つかといえば、そういうわけではないということ。辛い時には辛いと言い、不幸だと感じたら不幸な部分を見せることも、教育として悪くないと思う。いいじゃん、サボっても。みんなで面倒を見ようよみたいな育て方が増えていけばいいのに」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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