始まりは5歳、先生は山本美憂――。元五輪候補レスラー・中村倫也がLDH所属でプロ格闘家に「MMAに向き合ってきた年月が違う」
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 格闘技界待望の大型新人を獲得したのは、LDHだった。LDHとは、もちろんEXILEなどを擁する一大エンターテインメント企業。その中に格闘技部門となるLDH martial artsを設立してジムをオープン、選手育成に取り組んでいる。

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 このLDH martial artsの契約選手となったのが中村倫也である。レスリングで全日本選手権2連覇、U-23世界選手権優勝と輝かしい実績を誇る元オリンピック候補。どのジム、どの団体も欲しがるであろう、いわば金の卵だ。

 実は中村の場合は、単なる「エリートアスリートのプロ転向」ではない。彼は「物心ついた頃からMMA(総合格闘技)をやると決めていた」のだ。レスリングはそのための過程だった。中村の父が経営する会社が「シューティングジム大宮」のオーナーであり修斗のスポンサーだったという。一番古い記憶は2歳頃、後楽園ホールでの修斗の試合。母の膝の上で見ていた。

 ジムは遊び場のようなもの。遊んでくれる「お兄ちゃんたち」がリングで必死になって闘う姿に憧れた。レスリングで実績をあげながら、早くMMAがやりたくて仕方なかったそうだ。同時に、レスリングを究めることがMMAにも役立つという確信もあった。

 プロ転向にあたり、選んだのがLDH martial arts。元DREAM王者の高谷裕之が代表を務め、岡見勇信、石田光洋などトップクラスの選手(元選手)が拠点となるジムEXFIGHTで指導する。

「圧倒的に結果を残していますから、指導者の方々が。国内だけじゃなく海外で活躍した方、打撃の専門家、それにケンカが強い人(笑)。一つの課題に対していろんな方面から答えをもらえるんですよ。それを自分で噛み砕く。立地(代官山)と設備も最高ですからね。出稽古もしますけど、ほぼここで完結できる。ということは移動に時間とエネルギーを取られなくていい」

始まりは5歳、先生は山本美憂――。元五輪候補レスラー・中村倫也がLDH所属でプロ格闘家に「MMAに向き合ってきた年月が違う」
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 プロとして、また“LDHの格闘家”としてのキャリアをスタートさせた期待のルーキーだが特別扱いはされていない。一般参加者が選手契約を目指すオーディション番組『格闘DREAMERS』にも加わっている。中村はすでに契約しているのだが、オーディション参加者と一緒に経験を積むこともプラスになると指導が判断したそうだ。

「僕は契約している立場なので、精神的には余裕があります。でも同時に油断はできないし、所属だから頭ひとつ抜けてるなっていうところを見せないといけない緊張感はあります。変に“上から”になってはいられない。僕もMMAはまだ初心者ですから」

 エンセン井上、朝日昇といった90年代のトップシューターに可愛がられ、ジムでキッズレスリングの指導が始まるとジムでの遊びが練習に変わった。先生は山本美憂だった。5歳くらいの時だ。「テレビで見たメジャーイベントに憧れた」ということではない。生活環境に格闘技があり、それは日本格闘技の最もコアな部分だった。

「だから格闘技をやることには使命感すら感じます。レスリングからMMAに来る選手はたくさんいますけど、僕はMMAと向き合ってきた年月が違う。見てきた量、考えてきた量が違うんです。それはイコール、MMAへの思いの違いです。最近話題だから、稼げそうだからみたいな感じでMMAに来る人には絶対負けたくないですね。僕はMMAで勝つためにレスリングやってきたんで。だからオリンピック(出場権)取りきれなかったのかもしれないけど(笑)」

 プロとしての夢はUFCチャンピオン。オーディション番組参加は大きな刺激になった。

「僕の知らない世界を知っている人間がたくさんいて、みんな凄いエネルギーを持っている。こういう人たちが集まったら凄いことができるぞって思っています」

 その中心になるのが中村なのは間違いない。期待され、注目されるが、それも分かった上での活動だ。

「これだけストーリーができていますからね。すべて背負って闘う覚悟はできています。小さい時からこうなりたいと思っていたんです。その時の自分を裏切りたくない」

 いわゆるエリートアスリートでありながら、中村は“気持ち”でMMAにぶつかっている。その意味ではむしろ叩き上げか。その実力が、いよいよ『格闘DREAMERS』最終決戦の対外試合で明らかになる。

文/橋本宗洋

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