EXILEなど多数の人気アーティストを擁するLDHのグループ会社・LDH martial artsとの契約をかけたFIGHTER BATTLE AUDITIONの合格者が、ついに決まった。最終審査となる“外敵”との試合を乗り越え、中村倫也とともに合格者として名前を読み上げられたのは宇佐美正パトリック。この1年で、彼の人生は激変した。
もともとはボクシング出身。高校6冠を達成する強豪だった。メディアにも取り上げられ、東京オリンピック有力候補。しかし予選で敗れてしまう。夢を失った時に知ったのが『格闘DREAMERS』のオーディションだった。MMA(総合格闘技)という新たなフィールドへの挑戦だ。
「失うものは何もない」と飛び込んだ世界。パンチには絶対の自信があった。だが同時に組み技、グラウンドという明確な弱点もあった。オーディション一次審査を突破してからも、組み技対応に苦心する。その成果は、最終選考試合で出た。相手の日高健太郎はすでにMMAで実績のある選手。ストライカーだが宇佐美に対してはタックルを狙ってきた。宇佐美はそのタックルをしっかり潰してスタンドで主導権を握る。2ラウンド、パンチ連打でのレフェリーストップ。持ち味を活かし、課題を克服しての勝利はオーディション合格にふさわしいものだった。
「自分がやるべきことができたから勝てたんだと思います。それができたのは『格闘DREAMERS』のみんなのおかげ。いろんなタイプの選手と練習できたので、対応力が身についた。それに、この企画にかける思いはみんな強いですから。自然に“負けてられない”ってなるんですよ」
これから彼は“LDHファイター”になる。言ってみればEXILEやTHE RAMPAGE、GENERATIONSの後輩でもあるということだ。
「ジャンルは違いますけど、LDHは格闘家も凄いって、誰が見てもわかるような試合をしなきゃいけないですね。それが恩返しだと思ってます。僕は『格闘DREAMERS』に夢をもらったので」
その思いは、今回の試合にも出ていた。実は試合前、指を怪我していたという。それでも総監督の高谷裕之に「人生がかかってる試合なんです。どうしても出たいです」と訴えた。高谷は「分かった。病院やバックアップの態勢は整えておくから」と答えたそうだ。
ケガがあったため打ち方を変えた。体を傾けながら、拳を返して打つアマチュアボクシングのスタイル。これが結果として功を奏した。「ピンポイントでうまく当たりました」と宇佐美は言う。
プロデビューについては、まずケガを治してから。ただ目標は最初から変わらない。男手一つで自分を育ててくれた父に「世界一のベルトを巻く」ことだ。企画を見守ってくれたLDHのHIRO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)に「ベルトを獲って巻いてもらう」という新たな夢もできた。アマチュアからプロ、ボクシングからMMA、LDHのメンバーに。大きく変わった人生だが、すべてを拳で切り拓くことだけは変わらない。
文/橋本宗洋