防衛省が運営するワクチン大規模接種センター(東京・大阪)の予約が昨日からスタートした。東京では来週に予定されている5万回分の枠うち7割強にあたる約3万6000件、大阪でも1週間分の予約2万5000件が26分で埋まった。政府は今後、2つのセンターで最大1万5000人/日の接種を目指す方針だ。
この「大規模接種」と各自治体による接種との違いについて、編集者で獣医師の星良孝・「ステラ・メディックス」代表は次のように話す。
「世界で最も評価が高いといわれる医学誌『The New England Journal of Medicine』が2カ月前に掲載した論文が、“小規模なワクチン接種は失敗に繋がるので、大規模に展開する必要がある”と指摘している。小規模な接種では、データが煩雑になってしまったり、各会場でのPCやスタッフの慣れにもバラつきがでてしまったりすることが考えられる。また、強い副反応が起きた場合の対応も、クリニックなどでは対応が難しいこともある。
そこで海外では野球場、サッカー場、スケートリンク、劇場、映画館、教会、広場、博物館、ドライブスルーなどで接種を実施、さらにワクチンが余った時に、海外では大規模会場に余剰ワクチンを使いたい人を集めるということも行われている。もちろん、そういう中でクラスターが起きる可能性もある。しかし、そのデメリットを上回るくらい、大規模接種のメリットは高いということだ」。
一方、各自治体での接種状況も含め、菅総理が目標に掲げる“100万回/日”までには遠い状況だ。大規模接種は2カ所で始まったばかりで、引き続き各自治体による接種が進められており、東京都ではかかりつけ医などでの個別接種を推し進めるため、医療機関に対し接種回数に応じて協力金を支給する方向で検討していることが報じられた。
「日本の場合、特に医療の面では自治体の首長の権限が強く、今回の接種も予防接種法という法律に基づいて、基本的には市区町村が対応し、地域の医療機関が分担していく形になっている。逆に言えば、国が直接的に接種を実施するのは難しく、今回の大規模接種は“自衛隊員以外にも医療行為ができる”という自衛隊法の施行令を準用し、かなり例外的にやっている。そこは頑張っているといえるが、まだ各自治体での接種を進めないといけないという状況だということだ。
しかし、例えば厚生労働省の『コロナワクチンナビ』によれば、港区、新宿区、渋谷区、品川区には現時点で対応するクリニックがない。あるいは福岡市の場合、65歳以上の高齢者が36万人いるのに対し、接種会場が10施設しかない。仮に7月下旬までに終わらせようとすれば、毎日10時間、2分に1回休みなく打ち続けてようやく、というレベルだ。また、『The New England Journal of Medicine』は、通常の診療に支障を来すということも指摘している。
確かに、体育館などの高齢者の方を並べる“舞鶴方式”では1時間150人、待機する高齢者に接種する医師などが巡回する“調布方式”など、中規模会場での工夫も注目されているし、有望だとは思う。人口の多いところでは、そうしたことも組み合わせていくのも大切だ。しかし、それらは事実上、大規模接種に近いものだと思うし、やはりこれからは大規模接種を基本にしていった方がいいのではないか。日本には、65歳以上の高齢者が3000万人いる。ペースを考えれば、今のままではとても間に合わないと言っていい」。
さらに星氏は、“打ち手”の問題も解消されなければならないと指摘する。
「アメリカでは今月、獣医師、救急隊員、助産師、検眼士、さらには医学生でも接種ができるよう、法律を改正した。17日、薬剤師にもできるようにしてくださいという要望書が河野大臣に提出されたようだが、こうしたことが日本でもできるかどうか。今回のワクチンは、肩にある三角筋という大きな筋肉の中央部に打つ。日本では“皮下接種”が基本で、筋肉内注射は例外になっているので、医師も含めて慣れているとは言い切れない。それでも異常事態なので、こうした対応は考えてもいいと思う」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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