トランプ政権の余波、反動で身動きが取れず? バイデン大統領がイスラエルに強気の姿勢を示せない理由
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 イスラエルとパレスチナの攻撃の応酬で死者が200人を超える中、イスラエルのネタニヤフ首相は16日のテレビ演説で、パレスチナ自治区のガザを実効支配するイスラム原理主義組織「ハマス」への攻撃続行を明言。事態が長期化する見通しも示した。

 ABEMA NEWSでは、事態の解決に向けて鍵を握るアメリカの動向について、ANN前ワシントン支局長のテレビ朝日外報部・山下達也デスクに話を聞いた。

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新型コロナウイルス対策への不満も?

トランプ政権の余波、反動で身動きが取れず? バイデン大統領がイスラエルに強気の姿勢を示せない理由

 両営が衝突に至ったのには、2つの大きな要因がある。一つが、東エルサレムの住宅で暮らす複数のパレスチナ人家族の立ち退きを求めてユダヤ人が起こした訴訟で、イスラエルの裁判所がユダヤ人側の主張を支持する判決を下したこと。もう一つが、同じく東エルサレムのイスラム教礼拝所についてイスラエルの当局が治安維持を理由にパレスチナ人の立ち入りを制限したこと。これによりパレスチナ人の不満が高まった結果、イスラエルの治安当局との間で衝突が発生、多数の負傷者が出た。10日に入り、その報復としてハマスがイスラエル側にロケット弾を発射、イスラエルもガザ地区への空爆を開始した、ということだ。

 もともと5月10日はイスラエルにとっては東エルサレムを占領した記念日であり、イスラム教徒にとっては信仰心が高まるラマダンの最終盤でもあるので、緊張が高まりやすい時期ではあった。また、新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでいるイスラエルに対し、対応が遅れていたパレスチナ人の間で不満が高まっていたという事情もあったと思う。

トランプ政権の余波、反動で身動きが取れず? バイデン大統領がイスラエルに強気の姿勢を示せない理由

 この数日間の映像を見ていると予想以上の衝突で、近年では大規模なものになってきていると思う。国際法では民間人への攻撃は禁じられているものの、すでにイスラエル軍の空爆ではハマスの司令官だけでなく、子ども58人を含む市民200人以上が犠牲になっていて、ハマスが発射したロケット弾でイスラエルにも10人の犠牲者が出ている。

 専門家の間にはイスラエルはハマスの軍事力を削ぐためにも攻撃を続行するという見方もあるが、そこで重要になってくるのが、歴史的にイスラエルとの関係が深い大国のアメリカの存在だ。本来であれば仲介に入って停戦に持ち込むことが予想されるが、今のバイデン政権は微妙な立ち位置から、あまり大きな影響力を示せないでいる。

■トランプ政権の余波、反動で身動きが取れず?

トランプ政権の余波、反動で身動きが取れず? バイデン大統領がイスラエルに強気の姿勢を示せない理由

 背景にあるのは、トランプ政権の余波、反動だ。ネタニヤフ首相と蜜月だったトランプ前大統領は、エルサレムをイスラエルの首都と認定し、テルアビブにあった大使館を移転させるなど、極めて“イスラエルびいき”の政策を進めていた。また、イスラエルがUAEなどと国交を正常化する仲介もしたし、オバマ元大統領が結んだ、イスラエルにとっては“天敵”といえるイランとの核合意を“核開発の制限だけでは不十分だ”として破棄したりもした。

 バイデン大統領としてもイスラエルのことを冷遇しようとしてしているわけではないが、やはり外交は中国を意識してアジア太平洋にシフトしてて、トランプ政権ではすぐに指名されたイスラエル大使も、未だに名前も出てきていないレベルで、ネタニヤフ首相との電話会談も就任から1カ月が経ってからだった。やはりイスラエルとあまりにも蜜月だったトランプ前大統領への“意趣返し”という意図もあるのかもしれないが、政権スタッフも含めてオバマ政権からの継続という要素が強いので、核合意についても何とか復活に向けて協議を進めたい。

トランプ政権の余波、反動で身動きが取れず? バイデン大統領がイスラエルに強気の姿勢を示せない理由

 ただ、アメリカにおけるユダヤ人コミュニティの政財界への影響は非常に強く、とりわけロビー団体「AIPAC」は民主・共和両党にとって重要な存在だ。総会には大統領・副大統領が出席してスピーチをし、イスラエルとの関係をアピールして支持を得ようとする。この影響力は、度々報じられる「全米ライフル協会」よりも強力だと言われている。やはり“核開発を10年以上遅らせる代わりに経済制裁を解く”というのは共和党支持者やコアなイスラエルの支持者としては認めたくない。中間選挙を控えているバイデン大統領としては、だからこそ今回の問題で強く出ることが難しいということだ。

 しかし民主党のバーニー・サンダース議員などから”あまりにもイスラエル寄りだ”という声を上がっているし、国内外での批判も高まっている。今後の状況次第ではバイデン大統領が姿勢を変えてくる可能性もある。実際、昨日のネタニヤフ首相との電話会談では、“停戦を支持する”と、多少は踏み込んできた。イスラエルとしてはバイデン政権の態度に不満はあるものの、逆にこの隙を突くことで、より強硬に出ても咎められないんじゃないかと考えた可能性もあるが、ネタニヤフ首相は汚職で捜査されるなど、国内基盤が弱くなっているところもある。そういう部分を理解して上手く解決に向かわせることができるか、バイデン大統領の手腕が問われる。(ABEMA NEWS)

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