コロナ禍が後押ししたオンライン学習は一層の普及を見せており、ネイティブスピーカーから直接学べるサービスはもちろん、海外の一流大学が講義の一部を無料で公開するなど、海外留学はもはや過去のものになったのだろうかと思わせるトピックも多い。
・【映像】海外留学はコスパ悪い...?YOUは何しに海外へ?経験者に現実を聞く
一方、橋下徹氏との共著『生き方革命 未知なる新時代の攻略法』で堀江貴文氏は“留学はコスパが悪い”との見解を示している。留学を希望していた人の86%がコロナ禍においても「変わらず行きたい」、12%が「むしろ前より強く行きたい」と答えたというアンケート結果もある(「ICCコンサルタンツ」調べ)が、AI翻訳などの技術が格段に進歩しつつある昨今、海外留学をしてまで語学を学ぶ必要はどこまであるのだろうか。
■「もう絶対行きたくない。そのくらい辛かった」
「もう一回留学してくださいって言われても絶対行きたくない。そのくらい辛かった」と話すのは、サッカー選手の通訳になるという夢を叶えるため、オーストラリアの大学院に1年間の語学留学をした酒井龍さん。「よっしゃ!とりあえず3カ月でペラペラになって、後の9カ月はエンジョイしたろうと思ってた」。
ところが現実は厳しかった。「まあ喋れない、喋れない。ネイティブの輪に入ると、ギャグがわかんないからずっと愛想笑い。自分に嘘をついている感じがして辛かった。“あなたと喋ると時がゆっくり流れるみたい”と言われたこともあった。落ち着いた雰囲気を与えられているのかなとも思ったけど、よくよく考えたら、“お前と話している、会話が止まる”っていう意味じゃないかなって。結局、友達もできず授業が終わったら速攻で部屋に帰って、ずーっとベッドの上で体育座りをして…」。
そこで酒井さんが編み出したのが、カメラに向かって英語を喋っては聞くを繰り返すという学習法だ。「僕の中では、これが一番いい方法だった。今もずっと続けているし、オーストラリアに行かなくても、日本でこれをやればよかった。正直、僕の留学はコスパが悪かった」。この学習法で身につけた英語力で、酒井さんは見事サッカー選手の通訳になるという夢を叶えたのだった。
■「行くなら小学生くらいまでに行くのが一番いいんじゃないか」
「観光ばかり」「同じ日本人とばかりつるんで、英語を覚えるわけがない」。留学生に対しては、そんな厳しい意見もある。
「語学留学を通して友達を作る良い機会になるのではないかと考え、高校、大学の休みを利用して韓国、イタリア、アイルランドに1カ月ずつ留学をした」と話すのは、安藤みなみさん。しかし、やはり日本人と一緒に過ごしてしまい、どの言語も習得できなかったという。
「恋人を作っている子は上達度が違ったが(笑)。結局、私も独学で勉強して、英語は日常会話レベル、韓国語も割とかなりできるようにはなった。やっぱりモチベーションさえ保てれば机上で習得することもできると思う。ただ、海外だからこそ、学んできだスラングや構文を生でアウトプットする機会につながる。そこに価値を見出したり、高い費用をかけたりするかどうかは本当に人それぞれだと思う」。
親の仕事の都合で中学・高校時代を米国イリノイ州で過ごしたフリーライターの中川淳一郎氏は「最初は何を言っているのか全然わからなかったのに、5カ月経ったある朝、突然英語が全部わかるようになった。語学の勉強をしたというよりは、日本人が全然いないクソ田舎だったので、歴史の先生が“お前たちの国に原爆を落としてやったことに感謝しろ。そのお陰で戦争が終わったんだ”とか言ってくるのに対して、どう反論するかというのを含めて考えたりしていたからかもしれない。
だから今でもTOIEC900点台後半とか取れてしまうが、英語のまま理解しているので、日本語に訳せといったら訳せない。その意味では、大学生になってから語学留学に行くのは遅すぎじゃないかと思う。行くなら小学生くらいまでに行くのが一番いいんじゃないか。そして“留学はオワコン”という意見もあるかもしれないが、現地の人たちから認められるという経験はものすごく大事だと思う。“この中でもやっていけるんだ”という自信があれば、日本なんか余裕だろ、という自信にも繋がっていく」と話した。
■「恥をかきながら乗り切り、身に付けていくものだ」
これまで1万人の留学志望者をカウンセリング、その誤解や幻想に警鐘を鳴らしてきた「留学カウンセラー」の栄陽子さんは「やっぱり英語の勉強は日本で(中高)6年もやってモノにならえんかったものが、場所変えたかて、モノにならん。しかも“ロスのスタバは高いなあ、せやかてちょっと旨いんちゃう?”みたいなことばっかり言うてる日本人ばかりやから全然ダメやね」と明るく指摘する。
「英語は学校である程度学習するが、それ以外の言語ならゼロだ。だから安藤さんのように、ゼロの状態で行ってみることには価値があると思う。一方で、英語の語学留学は3カ月、理想的には1カ月くらいでいい。18歳だったら18歳までの頭と経験値があるので、例えば洗濯機を見れば何に使うのか、どう使うのかは分かる。そして中3くらいまで覚えた単語を使って、向こうの小1、小2くらいの感じで、なんとなくアメリカ人ぽく、オーストラリア人ぽく喋れるようにはなるものだ。
私にも経験があるが、ネイティブなの人たちがワーワーと話していることはわからないが、外国人同士なら簡単な英語でもランチに行くくらいであれば意外に通用する。しかし結局はそのあたりで終わってしまうので、体験として楽しいと思うかどうか、コスパがいいと思うかどうかは人それぞれだろう。それ以上の語学力を目指すなら、やはりコツコツ単語や文法を学ぶしかないし、それなら日本でも怠けなければできるということだ。
中川さんの場合、日本でやっていた英語の勉強の続きではなく、アメリカ人の中でいきなり数学を勉強させられるという環境に入れられ、下手な英語でも自分で考えたことを説明するということをやっていった身についたのだと思う。そういう体験談はよくある。
実際、アメリカの田舎の全寮制の大学に放り込むと、最初は涙だ。だけど3日、3週間、3カ月…と英語で音楽や数学の勉強をし、1学期が終る頃になると、なんとなくわかる感覚が出てくる。特にアメリカは常に意見を言わないといけないので、日本のように大学に行ってボーッと聞いていればいいというのではない。“お前はどう思うのか”と聞かれ、めちゃくちゃな英語を並べてでも言わないといけない。そうやって恥をかきながら乗り切り、身に付けていくものだ。暗記したものはすぐに忘れてしまう」。
■「英語は好きな人だけが勉強すればいいし、留学は積極的な人が向いている」
根強い“日本人の英語コンプレックス”。栄氏は「イタリア語やベトナム語ができなくても劣等感を抱くことはないのに、なぜ英語はできないことに劣等感を抱いたり、英語ができる人のことを“すごい”と思ったりするのだろうか。それは結局、高校入試や大学入試、場合によっては就職試験にも英語があるからだ。私は文部科学省に言いたい。英語の試験なんていらない。やめてほしい。好きな人だけが勉強すればいい」と指摘。
それでも語学留学の意味、そして語学留学に向いている人については、「海外に行くと知らない人ばかりなので、自分をオープンにできる。色んなものを見て、日本のことや自分自身のことを振り返る機会にもなる。例えば日本で世界地図を見ると、日本列島が真ん中にあるが、アメリカに行って世界地図を見ると、日本なんてこんなに小さい。そういうところから、自分や日本のことを愛したいと思うようになる。そういうのも大事だと思う。そして、向いているのは積極的な人だ。めちゃくちゃ英語でもギャーギャー言える人の勝ち。引っ込んだって何の意味もない」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
■Pick Up
・キー局全落ち!“下剋上“西澤由夏アナの「意外すぎる人生」
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・「ABEMA NEWSチャンネル」知られざる番組制作の舞台裏