「それでも怖くて言い出せなかった」家族への被害や、退職を余儀なくされるケースも…声を上げづらい男性ストーカー被害者たち
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 「お前、なに無視こいてんねん。気付いてて、わざと切ってるやろ。何やってんねん。女やろどうせ。馬鹿にすんなちゅう話やねん。馬鹿たれが。何しとんねん。さっさと連絡しろボケ!」

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 留守番電話に残された、強い口調で罵る女性の声。これは、地方議員として活動していた林さん(60代・仮名)に対する女性からのストーカー被害の一部だ。

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 「私は意識していなかったが、仕事上、別の事務員さんの方とうまくいっていたことへのライバル心というか、嫉妬というか、その辺りから始まったような気がする」「とにかく逃げられへんのですよ。怖くて怖くて」。

 多い時には、着信が一日100件を超えた。同様の電話は、妻のところにも 。「僕がどこどこの女とつきあっている、というようなのが毎日毎日、延々と」。「ただ、議員だったこともあり、事務所の中で起こっていることについて少しでも悪い噂を立てられるのが嫌だったので、一生懸命隠していたというか、抑えていた」。 

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 女性は暴力行為にも及んだという。「女性に思いきり殴られ、蹴られた。でも、抵抗のために手を出した時点で、こちらが傷害事件を起こしたという話になってしまうと思い、やられっぱなしだった。そこで警察を呼んだ。でも、現場が事務所だったので、新聞に書かれてしまうと困る。だからそのときは警察に踏みとどまってもらった」。

 それでもストーカー被害の実例のうち、「汚物を置く」という行為以外、全てが当てはまると感じ、慌てて警察に駆け込んだ。しかし待っていたのは、担当者からの思わぬ言葉だった。

 「議員としては、表沙汰になると非常に困る。それでも背に腹は変えられないという覚悟で行った。すると、“相手の女性と性行為をしましたか?”と聞かれた。“いや、していない”と答えると、“それならストーカーにはならない”“性的関係がなければ迷惑行為だ”と。でも、これがストーカーじゃなかったら、何がストーカーだ、と」。

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 具体的な対応をしてもらえないまま半年が経った頃、警察はようやく女性に警告をしてくれたが、扱いはあくまでも「迷惑行為」のまま。電話やLINEでの被害もあり、妻とは離婚に至ってしまった。

 「最終的に彼女はメディアを使ったが、議員は悪いことをしているものだという一般的なイメージがあるので、そこまでされると、もう私たちとしてはどうすることもできない。彼女は、私を社会的に抹殺することは成功した。しかし、私自身はまだ生きている。だから私が死ぬまで、まだ可能性はあると思う」。

■声を上げた男性被害者は「氷山の一角」だ

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 「男性のストーカーの場合、相手のプライベートな空間を狙うことが多いが、女性のストーカーの場合、会社に押しかけたり、家族に連絡を取ったりしてしまう傾向がある。芸能人も含め、有名な人、人気のある人と一対一の関係になりたくなってしまい、“食事に行ってください”みたいに言ってしまうところから始まる“ファン型ストーカー”は女性の方が多いのかなと思う」。

 そう話すのは、ストーカー問題に詳しいNPO法人「ヒューマニティ」の小早川明子理事長だ。

 「中には男性が脅迫され、レイプされてしまうケースもある。会社の前で“大声を上げる”と言われ、“ちょっと待ってくれ”となり、半ば強制的にホテルへ連れて行かれるケースもある。声すら聞いたことがないが、SNS上で“この人好きだな”と思い、ずっと接触し続けるようなケースもあるが、肉体関係を持ったことで、そうした気持ちが強化されてしまうこともある」。

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 このようなストーカー被害に悩まされているのは、社会的立場のある林さんのような男性だけではない。

 中下さん(20代)は、かつてアルバイト先の飲食店で、女性の同僚からのストーカー被害に悩まされていた。「その人はシフトが昼に終わる予定だったのに、僕が来る夜まで待っていたり、僕のシフトが終わったあとに手紙だとか安眠グッズとかプレゼントをたくさん渡してきたり。一番嫌だったのが、その日に起こった、特に業務とは関係ないことを長文でLINEに送られてきたこと」。

  デートの誘いも頻繁に送られてきたことから、店の顧問弁護士に相談した。ところが“店の信用問題にかかわる”という理由から、警察に相談するなど、大ごとにはしたくないと言われてしまったという。「小さい会社だったので、信用が崩れるのが怖いというのがあったのだろうが、それ以上に男性であってもストーカー被害がどれだけ苦しいことなのか、ということを問題として見られていなかったと思う」。

 後に店側が面談を行った結果、女性は自主退職。それから女性からの連絡はないという。

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 実は去年、警察が把握したストーカーの相談件数は約2万件で、そのうち、男性の相談数は2500件に上っている。それでも小早川氏は、林さんや中下さんのように声を上げた男性被害者は「氷山の一角」だと指摘する。

 「私のところにくる相談者の男女比は半々なので、実際には警察が発表している人数の10倍くらいの被害者がいるのではないか。やはり“女性のストーカーにやられているなんて言うこと自体が男として恥ずかしい”というような気持ちから相談を控えることも多い。実際、“むしろ女性に酷い扱いをしたのではないか”などと疑われたり、職場で噂になるだけではなく、異動、あるいは退職せざるを得くなったりといった不利益を被ることも少なくない」。

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 その上で「林さんに対する警察の言葉は信じられないが、“性的関係がないのに、ここまでのことはしないだろう”と考え、“本当のことを言え”、という意図で言ったのではないだろうか。しかし法律では、性的関係がない=ストーカーではないというふうには定義されていない」として、まずは警察に被害を相談するよう訴えた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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