「“あんたたちが日本酒売りたいだけでしょ”という意見もいただいた」 獺祭が“批判覚悟”の意見広告、飲食店の窮状訴え
【映像】ABEMAでみる
この記事の写真をみる(4枚)

 「飲食店を守ることも日本の『いのち』を守ることにつながります」

 これは、5月24日の日経新聞に掲載された意見広告。広告を出したのは日本酒の「獺祭」などで知られる、山口県岩国市の酒造会社・旭酒造だ。旭酒造では売り上げの一部を医療関係者に寄付するなど、新型コロナウイルスに立ち向かう人々への支援をしてきた。

【映像】獺祭が“批判覚悟”の意見広告

 意見広告を出した経緯について、旭酒造の桜井一宏社長は「私たちは酒蔵という立場なので、日本酒を卸す先の飲食店が本当に大変だというのがよく見える。巷ではよく『協力金をもらっているからお店によっては儲かっている。だからいい』という話はあるが、実際それはごく一部のお店であって、全般的なお店は非常に大変。今の状況は、私たちから見て“ゼロか100”。感染症対策は最優先でやらなきゃいけないが、そこだけで終わってしまっている。その先に、結果的に疲弊した人、苦しんでいる人たちがいるというのも、向き合っていかなければいけない問題だと感じた。私たちは飲食店に近いから余計わかるので、飲食店を切り口として、意見広告として『このままで本当にいいんでしょうか』という投げかけをした」と話す。

「“あんたたちが日本酒売りたいだけでしょ”という意見もいただいた」 獺祭が“批判覚悟”の意見広告、飲食店の窮状訴え
拡大する

 緊急事態宣言の延長後も、東京や大阪では一部の業種で緩和される一方で、酒を提供する飲食店への休業要請は継続。その飲食店が直接声をあげられない状況をなんとかできないかという思いで、今回の意見広告の掲載に至ったという。

 「結果的に飲食店でお酒を出せないことで路上飲酒の方、闇営業ではないがお酒を出しているお店に人が集まって密になる、時間を制限することによって夜8時半頃の電車はすごく混んでいる。その状況を生み出しているというのは、結果的にうまくいっていない部分があると思っている。その部分は、感染症対策を前提として直していけばいいんじゃないかというのが実感。苦しんでいる人がいるのであれば、ちょっとでも救う方向に変わっていけばよりいいんじゃないかと思う」(同)

 このコロナ禍で、旭酒造の国内向けの売り上げは少し落ちたものの、ロックダウンした国からも継続的に注文が来るなど海外向けが非常に好調だったと話す桜井社長。背景には、海外では感染状況に応じて的確な営業の緩和があり、飲食店が生き残っていけたのではないかと感じているという。

「“あんたたちが日本酒売りたいだけでしょ”という意見もいただいた」 獺祭が“批判覚悟”の意見広告、飲食店の窮状訴え
拡大する

 一律の営業時間短縮や酒類の提供停止という方法以外に取れる策はないのか。みんなで知恵を出し合うきっかけになればという一心で、批判は覚悟の上での意見広告だったということだ。

 「『(飲食店を)かばうのはあんたたちが日本酒売りたいだけだからでしょ』というご意見、『それくらいで状況が変わるわけじゃない』という冷めたご意見もいただいた。アルコールが悪と思われると、寂しいし悔しい。もちろん、対策にとって必要な部分はあるから理解する。でも、対策の結果として飲食店、生産者、酒蔵が苦しんでいる、疲弊している部分があるというのは皆さまにわかっていただきたい。その上でじゃあどうするか、みんなで意見を持ち寄ろうというのがあっていいと思っている。それが本当に私たちのお酒を通しての思い」(同)

「“あんたたちが日本酒売りたいだけでしょ”という意見もいただいた」 獺祭が“批判覚悟”の意見広告、飲食店の窮状訴え
拡大する

 旭酒造の投げかけを社会はどう受け止めるべきなのか。そもそも意見広告が持つ意味合いについて、ニュース解説YouTuberの石田健氏は「多様な意見が出るのはいいことだと思う一方で、意見広告はあくまで“意見”であり、科学的な知見などを踏まえているわけではない点は注意する必要がある。広告全般に言えるが、社会の空気を絶妙に感じ取ってクリエイティブを通して伝えるというのが基本的な目的。社会全体的に今、政府の対策に不満があるという気持ちが盛り上がっている中で、こういったものが受け入れられやすいのは事実だが、科学的な感染対策は前提として抑えておかなければならない」と指摘する。

 その上で、「例えばアメリカやイギリスで、座席制限など柔軟性のある対策を行っているということがひとつポイントとしてあると思うが、これは厳しい外出制限やワクチンの流通などの前提がある。日本の中でも『もっとこういうことができるのではないか』という声が専門家に届くことで、よりよい対策が見つかっていくかもしれないので、そういったところを議論の出発点にすることも大事だ」と述べた。

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

世界初の発見 “感染増強抗体”とは
世界初の発見 “感染増強抗体”とは
この記事の画像一覧
この記事の写真をみる(4枚)