世界が“脱炭素社会”の実現に向けて取り組みを進める中、再生可能エネルギーや電気自動車の導入などとともに注目を集めているのが、「牛」対策だという。
食肉はもちろん、乳製品としても食卓に欠かせない家畜だが、実は日本の農林水産業が発生させている温室効果ガスのうち、実に3割が牛の「ゲップ」に含まれるメタンや糞尿の処理時に発生する一酸化二窒素なのだという。そこで農水省を中心に胃の中の微生物のコントロールや、エサの工夫などの研究が進められている。
海外に目を向けると、牛肉を使わないレストランが登場するなど、日本よりもさらに踏み込んだ対策も始まっている。さらに大胆な方針を打ち出したのが、アメリカの人気料理レシピサイト『エピキュリオス』だ。今年4月、「世界の気候変動における最悪の犯人にアピールする機会を与えたくない。“反牛肉”ではなく、“地球を守るためだ”」として牛肉を使った料理のレシピの削除を決定した。
これに対し、オーストラリアの業界専門誌『ビーフ・セントラル』は、「ハンバーガーをやめて気候が変化と示唆するのは化石燃料の使用から注意をそらす煙幕となる。レシピサイトへの数百万回のアクセスで発生するエネルギーによる排出量を考慮した方が良い」と批判している。
高校の授業で牛のCO2排出の問題を知ってヴィーガン生活をスタートさせたという工藤柊さんは、ヴィーガン向けレシピサイト『ブイクック』を運営する立場から、『エピキュリオス』の対応について「すごく尊敬できる」と話す。
「消費が減れば生産が減るというロジックから肉を選ばない人たちが増えていっているということなので、いきなり全ての牛を無くそうということではない。できる範囲でフレキシブルにやっていこうという人たちを“ヴィーガン”に対して“フレキシタリアン”と呼んでいて、家で食事を作る時には肉を使わず、友達と食事に行く時は気にせず肉も食べるという人や、ちょっと食べたくなった時だけ魚を食べるという人など、様々だ。
実はアメリカでは4人に1人がこのフレキシタリアンだというデータもあるし、”0か100か”ではなく、自分にできるところからやっていくのが重要だと思う。全くやめるから抵抗があるのであって、例えば牛乳を豆乳に変えてみるとか、チーズを大豆由来のものに変えてみる、といったところからでもいい。
また、健康目的や宗教上の理由など、背景も人それぞれだが、僕の場合は他の若い人たちと同様、環境問題と動物倫理というところが理由なので、環境負荷が減ったとしても大豆からできたお肉の方がいいなとか、動物倫理的に食べるのはやめておこう、といった選択をすると思う。
ただ、動物性のものを減らすことで削減に繋げられるCO2は全体の10%~15%くらいだと言われているので、逆に言えば牛肉を食べないということだけでは救われないのも事実だ。合わせてエネルギーの部分についても一人一人ができることをやっていくことが必要だと思う」。
オリエンタルラジオ中田敦彦の「YouTube大学」を見たことがきっかけで1カ月間のヴィーガン生活を試したというBlack Diamondリーダーのあおちゃんぺは「コストと手間が大変だ」と振り返る。
「ヴィーガンレストランは少ないし、ダシを取るにもカツオ以外のものは通販で仕入れなければならかったし、1カ月、超大変だった。3日くらい過ぎると肉を食べないことは平気になったが、ダシなどにまで気をつけるのは本当に面倒くさい。自炊は大変だとUber Eatsにに切り替えたら一食あたり2~3000円もかかってしまった。日本はヴィーガン生活をするのに向いていないと思ったし、これでは浸透しにくいと思った」。
工藤さんは「僕はいきなり牛肉以外もやめるべきだ、という立場ではないので、それこそ1カ月だけ試してみるとか、牛肉だけならいけそうだけど、ダシはオッケーにするというような、あおちゃんぺさんのような柔軟な取り組みはすごくいいと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
▶映像:牛肉を食べる人は悪者?ヴィーガン男性と考える
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