東京オリンピックの開催をめぐり、5月26日付けの「社説」欄で中止を求めて話題を呼んだ朝日新聞。
これに対し「朝日新聞社説がようやく東京五輪中止を掲げた。遅きに失したとはいえ立場を鮮明にしたのは評価したい。懸念されるのは社説が「反対した」アリバイ作りに終わる事。菅首相に本気で中止を迫るのなら今からでも東京五輪スポンサーを降りるべきである。決断できるのは社長だけだ」とツイートしたのが鮫島浩氏だ。
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社説掲載直後の5月末で朝日新聞社を早期退職、ジャーナリストとして活動をスタートさせた鮫島氏は「社説というのは論説委員というベテラン記者たちが20~30人集まって議論をして作るもの。会社からは独立しているし、社説の意見がそのまま社員全体の意見を映し出しているものではない」と説明。
その一方、「はっきりと言えるのは、社説では開催中止を求めていても、会社の体制、特に経営陣は開催推進だ。一面から社会部まで担当している編集局の記者たち、政治部、社会部、経済部などの部長・デスクの大半も推進だ。それは五輪を愛しているからではなく、五輪スポンサーだからだ。Twitterにも書いたが、スポンサーを降りない、経営と社説は別だと言うのであれば、社説では“朝日新聞社はスポンサーを降りるべきだ”と論陣を張るべきだったと思う。
読売新聞は“国家”を代表しているようなものだし、書いていることとやっていることも一致している。しかし朝日新聞の場合、“リベラルの仮面を被った国家主義”というところが見透かされているから、本当にリベラルを支持している人たちからも不信を持たれている。私にもそういう違和感があったし、同じように感じている社員はいっぱいいる。しかし、日本社会においては“会社員”が最大の社会保障だから、なかなか辞められない」と指摘した。
■「『社説』ではなく、『論説委員室から』といったタイトルにすればいいのでは」
オンラインサロン『田端大学』を主宰する田端信太郎氏は「新聞だけでなくテレビも新卒一括採用なので、個人的には中止すべきだと考えていても、なんとなく空気を読んで書かないと出世に差し障りが出たり、左遷されたりするかもしれないと、書きたくもない記事を書いている部分があるのではないか。その意味では鮫島さんがお辞めになったのは素晴らしいことだと思う」とコメント。テレビ朝日の平石直之アナウンサーは「“中止せよ”って書かれていれば、もうそういう方向でしか書かないのかなと思われてしまうと思う。そうだとしたら、『社説』って要るんですか?って思うし、記者が自分の名前で書けばいいと思う」とコメントした。
また、元毎日新聞記者でジャーナリストの佐々木俊尚氏は「経営の責任者である社長に対し、編集の責任者である“主筆”を置いている新聞もあるくらい、編集は会社経営から独立しているということはある。ただ、それは新聞社のロジックであって、普通の読者に分からない。そこはきちんと説明する必要があると思う。
一方で、特に東日本大震災と福島第一原発事故以降、その扱いを巡って社内の分断が進んでいて、今やそこまで社論が統一していないということも事実だと思う。朝日新聞でいえば『プロメテウスの罠』を連載していた取材班と科学部とでは全く違う報じ方をしていた。僕がいた毎日新聞の場合、割に好き勝手に書いていい雰囲気だったし、社論の統一もなかったが、そもそも記者も個人でそれぞれなんだから、それでいいのではないか。震災後にはTwitterアカウントで発信する記者も増えたし、新聞社よりも記者個人が信頼できるかどうかという構図も出てきている。もう『社説』ではなく、『論説委員室から』といったタイトルにすればいいのではないか」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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