今のままでは意味がない…党首討論には「ファシリテーター」の導入を 与野党議員と政治部記者に聞く
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 9日、約2年ぶりに行われた党首討論。国会審議の活性化を目指し、総理大臣と野党の代表が国の政策について直接議論するための場として1999年に始まった党首討論。質問内容は事前通告されており、菅総理にとっては初となった今回の党首討論では、コロナ対策と東京オリンピックが焦点となった。

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 「総理の言う国民の生命と健康を守るとおっしゃるのは、開催を契機として国内で感染が広がる、それが国民の生命と健康を脅かすような事態を招かない。こういうことも含むという意味でよろしいですね」と詰め寄る立憲民主党の枝野幸男代表に、「徹底して検査をし、選手については期間中も毎日行う、その予定だ」と菅総理。さらに「私自身、57年前の東京オリンピック大会は高校生だったが、いまだに鮮明に記憶している…」と、少年時代の思い出を語り出す場面も。

 これに対し、議員たちからは「長いよ~」とのヤジも。討論を振り返り、枝野代表は「ほぼゼロ回答と言って良い内容だった」と批判した。では、与野党の議員、そして政治部の記者はどう見たのだろうか。

■「もう1回、2回見たいかと言われると…。」

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 自民党内の“菅グループ”で中核を成す「ガネーシャの会」メンバーの秋本真利衆院議員は「私は及第点、無難だったんじゃないかと思う」と話す。

 「逆に野党の方々の質問が冴えないなというか、もっと突っ込んでもいいのに、という感じがした。党首討論は、時間をかけてしっかり議論する予算委員会と違って持ち時間が短いし、総理の側から質問することもできる。そのことが分かっているはずなので、意見を開陳する場にするのではなく、もっとコンパクトに的を射た質問にした方がよかった。国会議員の私としてもエキサイティングな感じがしなかったし、党首討論をもう1回、2回見たいかと言われると…。国民の皆さんだって同じだろう」。

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 一方、議院運営委員会の筆頭理事も務める立憲民主党の小川淳也衆院議員は「2年ぶりの党首討論だし、私も期待が大きかった。しかし結果的には枝野さんと菅さんがお互い15分ずつ演説しあったような印象だ。秋本さんがおっしゃる通り、もう少し簡潔に、ポイントを絞ってポンポン球を投げるようなやり方もあったと思うし、課題が残った」とコメント。「イギリスでは毎週30分、党首討論が行われている。ブレア元首相の回顧録には、討論がある毎週水曜日の朝がどれだけ憂鬱だったかが書いてある。日本でも党首討論の定着をさせるためには、二大勢力の党首同士が真剣勝負をやるべきだ」と訴えた。

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 また、テレビ朝日政治部の官邸キャップ・吉野真太郎記者は「このタイミングで討論を行うことには、与野党ともにメリットがあった。秋には必ず解散総選挙があるので、それに向けてアピールをしておきたいからだ。枝野さんにはもちろん言いたいことあり、菅さんにも反論したいこともある。それがカチッと合ったということだが、構造的にお互いが言いたいことを言い合うという形になってしまった」と指摘する。

 「取材をしていると、菅さんも枝野さんも準備しすぎたのではないかというくらい準備をされていたようだ。一方で、お二人がおっしゃりたいことと国民が聞きたいことには違いがあったと思う。やはりお二人の言う通り、あまり討論の機会がないから、双方がいつまでも慣れない。ぶっちゃけると、私も政治記者を十数年やっているが、記憶に残る党首討論というのはほとんどない。これでは意味がないと言われても仕方ないので、今後も続けるのであれば小川さんが仰ったように、抜本的な改良が必要だと思う」。

■「国民の関心はディベートや勝ち負けではない」

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 時事YouTuberのたかまつななは「お互いにメリットがある時にしか開かれなかったらダメだ。何の意味もなさない。お二人のお話を聞いていると、私たち国民の目線とそんなにずれてはいないと思った。秋本さんには菅総理がイギリスからお戻りになったら、国民、若い人たちの声もこうだと伝えてほしい。小川さんにも、枝野さんに変えましょうよと伝えてほしい」と直言。

 その上で、「枝野さんには先日、私のYouTubeチャンネルに出演いただいたが、やはり自分の意見を長尺で発信できる場がなかなかない、テレビでは切り取られるとおっしゃっていた。私は元NHKのディレクターだが、政治家のインタビューなんて長く流しても1分くらいだし、朝のニュースで15分や30分のコメントなんて流せない。そして不祥事が起きれば、そればっかりが流される。

 だから“立憲民主党って何を考えている党なの?国民民主党との違いは何なの?”みたいなことすらよくわからない。そして選挙の時には“与党はダメかもしれないけど、じゃあどこの野党に入れたらいいの?”と困ってしまう。機会が少ないからこそ一生懸命用意したものを一生懸命読むだけ、みたいな感じになってしまうというのなら、そういう番組も作っていくべきだと思う」との考えを示した。

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 慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「国民の関心はディベートや勝ち負けではなくて、議論が深まることや、新しい発見だ。そのためには、ファシリテーターが欠かせない。限られた時間の中で質問に答えてもらい、本音を引き出すためには、間に入って“質問の意図はこうですか”“今のでは答えになってません”と議論をかき混ぜていく。ただ、それを大人がやろうとすると、中立を求め過ぎたり、誰がやるんだという話になってくる。そこは高校生や大学生に“すみません。今の全然説明になっていない”“僕らにはわかりません”と、20歳前後の若者がわかる討論にしていかないと」と提言。

 吉野記者は「その通りで、今はタイムキーパーのような人しかいない。総理大臣は守りが得意で、野党は攻めるのが得意なのに、党首討論においてはドラクエ3みたいに防御しながら戦うみたいな、それぞれが苦手ことをやっている。だから当事者たちもしっくりこないと感じてしまう。ここはやっぱりファシリテーターを付けるようにしないと、いつもの委員会に総理を呼んで質問した方がいいということになってしまう。ルールの改良が行われなければ、この悪循環が定着してしまう」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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