「メリオダスは相棒」声優・梶裕貴が語る、『七つの大罪』への想いとは
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 鈴木央(すずき なかば)氏が2012年から2020年にかけて「週刊少年マガジン」で連載していた人気マンガ『七つの大罪』。主人公・メリオダスたち7人の大罪人が結成した騎士団の戦いを描くファンタジーバトル物語で、2014年からはTVアニメにもなり、現在は最終章となる『七つの大罪 憤怒の審判』が放送中だ。また、2018年には劇場版アニメも上映され、好評を博した。

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 そして2021年7月2日には、鈴木氏が描き下ろした完全新作オリジナルストーリーを基にした劇場版第2作『劇場版 七つの大罪 光に呪われし者たち』が公開となる。その封切りに先駆けて、メリオダスの声を演じる人気声優・梶裕貴(かじ ゆうき)に直撃インタビューを敢行した。

 梶が『七つの大罪』の最後の物語と銘打たれた劇場版のシナリオを読んで抱いた感想は? 要注目のシーンは? また、7年間に渡る長い付き合いとなった、メリオダスに向ける思いとは――? ファンが気になるポイントをじっくりと語っている。

メリオダスのカッコよさには憧れを抱いている

――本作は原作者・鈴木央先生描き下ろしのストーリーということで、梶さんもシナリオを読んで初めてその内容に触れたと思いますが、どんな感想をお持ちになりましたか?

梶裕貴(以下、梶):まず、原作が完結してTVアニメも最終章が放送中という、終わってしまうことへの寂しさが募っている中で、また新たに劇場版を制作していただけるということを聞いたときはすごく嬉しかったです。そして内容に関しては、今回も央先生の描き下ろしで、しかも原作を読んで気になっていた部分……名前とビジュアルしか出ていなかった最高神をはじめ、ダリアとダブズといった、「この伏線は、いつ回収されるんだろう?」と気になっていたドラマが見事に詰まっていて驚きました! 

 元からこうなることが決まっていたかのように上手く補完されていて、これは僕も含め、原作ファンの皆さんも間違いなくスッキリしていただける内容なんじゃないのかな、と感じました。

――TVアニメがスタートした2014年から、梶さんはメリオダスとは7年に渡る長い付き合いとなりましたが、メリオダスにはどういう思いを向けていらっしゃいますか?

梶:イベントなどがある度に「物語の最後まで、そのキャラクターを演じきることが声優としての目標です」というお話はしていたので、それが現実になって本当に嬉しいです。でも同時に、やはり幕を閉じるということへの寂しさもとても大きいですね。これだけの長い期間をキャラクターと共に歩むという経験自体が初めてだったので、その感慨深さもひとしおです。

 声優にとって、関わらせていただいた作品や役が名刺代わりになるという側面もあると思いますが、まさに『七つの大罪』そしてメリオダスは、自分にとっての代名詞に当たると思います。メリオダスから僕の声を認識してくださった方々もたくさんいらっしゃると思いますので、そういった意味でも、彼との出会いは、僕の人生に大きな希望を与えてくれました。

――そんなメリオダスが、梶さんにとってどういう存在かを一言で言い表すとするなら?

梶:強いて言えば「相棒」ですかね。ただ、対等というよりも、僕が彼に憧れている要素がかなり強いですが。「こういうヤツって、やっぱりカッコいいよな!」と思わせてくれる存在なんですよね、メリオダス って。もちろん彼も、彼にしかない悩みや悲しみを抱えているわけですけれど、周りからしたら基本的にはそれは読み取れない(器用に隠している)部分。いつも余裕があるように見えるんですよね。

 でも、だからこそ近い仲間からすると、そういう弱い面も含めて思わず支えてやりたくなる男なんです。カリスマ性あるなー! と(笑)。7年間ずっと、同じ歩幅で一緒に歩んできたメリオダスは……やはり僕にとって、相棒という表現が一番しっくりくる気がします。

――では、その相棒のメリオダスに、最後の収録を終えた今、どんな言葉を送ってあげたいですか?

梶:「思う存分、エリザベスとイチャイチャしてね!」ですかね。そのために3000年もの長い旅を続けてきたわけですから。もう十分頑張ったと思うので、これからは大好きな人と、ただただ幸せな時間を過ごしてほしいなと思います。それに尽きますね。

「書いてしまった以上、梶さんにやってもらうしか」

――では次に、劇場版で大切に演じたシーンや、演じがいがあったシーンなど、ファンに注目してほしいシーンがありましたら教えてください。

梶:アフレコが始まるときに「これはメリオダスとエリザベスの愛の物語です」というお言葉をスタッフさんからいただいていたので、物語の最後、幸せな結末という形で幕を閉じたその後の2人……ゴールの先の一番幸せな部分を観られたのが、何より嬉しかったですね。それは、決して恋愛面だけではなく、家族愛だったり兄弟愛にも当てはまることだと思います。特に、メリオダスとその弟・ゼルドリスとの関係性。ようやくわだかまりがとけた彼ら2人の“兄弟らしい”やり取りが見られたのがすごく嬉しかったです。

――今お話があったゼルドリスですが、梶さんは本作でメリオダス、ゼルドリスの2役を演じていらっしゃいますよね?

梶:はい。でも、最初は1人2役をやることになるとは全く思っていませんでした。なにしろメリオダスのオーディションを受けたときには、まだゼルドリスというキャラクターは存在すらしていませんでしたから(笑)。そもそも、どこまでアニメをやれるのかもわからないという段階だったので「誰が演じるのか」なんていうのは、まだまだ先の話でした。

 でも、いざゼルドリスが原作に登場すると、メリオダスと声が似ていることを示唆するようなセリフもあって。後からお聞きした話によると、央先生のなかでは「これを書いてしまった以上、梶さんにやってもらうしかない」という意識はあったそうです(笑)。嬉しさ半分、驚き半分という感じでしたね。

――その1人2役を演じる上で、一番大切にしていたことや意識していたことは何ですか?

梶:どう演じ分けるかについては、ゼルドリス役も担当することが決まってからいろいろと考えました。そして初登場した回のアフレコで、実際に2パターン提案してみたんです。

 ひとつは“メリオダスと声質は近いけれど、オーラ・纏っている雰囲気が違う”というようなイメージのもの。もうひとつは“声質からしてガラリと変える”というものでした。そこに、スタッフさんからの「ゼルドリスは〈十戒〉の中心人物で、メリオダスたちからすれば悪という立ち位置。なので、敵であるという印象を強く持たせたい」という演出を加味し、結果的に、後者に当てはまるプランに落ち着きました。

 自分としては、あそこまで声を太く・低く作るというイメージはなかったので、馴染むまで多少の違和感はありましたね。でも、とりわけ悩むということもなく、ゼルドリスというキャラクターは自分の中で自然と確立していきました。

 声質自体が違うのもあって、演じ分けるという部分での苦労はそこまで感じなかったです。技術面ではなく、息継ぎなどの物理的な難しさはありましたが、“ひとりひとりの棲み分け”という意味では、うまいこと落ち着いてくれたなという印象です。

 とはいえ今回の劇場版は、この二人の会話とタッグバトルが肝。ひとつの作品で、ここまで自分のキャラクター同士が会話する機会は今までなかったですし、予想もしていなかったので、台本をいただいた時は衝撃でした(笑)。

不完全なものこそ人間らしいし、だからこそ惹かれるんだな、と

――TVアニメがスタートした2014年から7年になりますが、声優としてこの7年間の活動の中で変化したことはありますか?

梶:7年前の自分が具体的にどうだったか、というのをなかなか思い出せないのですが……それはきっと日々、1日単位で変化しているからだと思います。心を扱う仕事なので“役者”としての変化というのは“人間”としての変化だと思うんです。なので僕だけではなく、誰しもが絶えず変化しているんじゃないかなと。

 極端に言えば、休みの日であっても、生きているだけでいろいろな人と出会って、見て、聞いて、考えるわけで。何年か経って、前と同じような場所に戻っていることもあるかもしれません。でも、それは似た景色なだけで、まったく同じではないんでしょうし……そもそも、変化というものを、良いか悪いかなんて誰にも決められることではないし……。

――え、戻っていますか?

梶:感覚ですけどね(笑)。こういうお話をさせていただく機会がある度に、誰にも迷惑はかけたくないし、自分自身も無責任なことは言いたくないので、ちゃんと考えてしゃべっているつもりですけど……日々いろいろなことが身の回りで起こり続けるわけですから、1カ月後には真逆(に聞こえるよう)なことを言っている可能性もあるとは思います。

 でも、その回り道があったからこそ、その思考に辿り着いているわけで、決して無駄ではないはず。同じ答えだとしても、時間や経験によって深みが増していると信じたいですし、1つ1つの物事についてちゃんと考えて、向き合って選んできているつもりなので、その変化が合っていようと間違っていようと、自分とはしては後悔したくはないなと。

 広い意味で言えば、良くも悪くも、自分は自分でしかないということ。だからこそ得られたものや出会えたものもありますし、同時に、失ってしまったものもあるかと思います。でも何より、それを肯定できるような自分でありたいですね。

――後悔しないという部分は、劇場版のメリオダスと重なるところでもありますね。そういう後悔しないという考え方は、何かきっかけがあってそうなったのでしょうか?

梶:どうなんでしょう? 多くの作品・役に触れて、自分以外の考え方を共有したから、とか、様々な人たちと出会って会話をする中で気付いたから、とか……きっかけはいろいろあると思います。先ほどお話したように、もちろん後悔したくないとは思っていますが……それでも、やっぱり後悔してしまうのが人間ですよね(笑)。不完全な生き物ですから。ただ「悔いのない選択をした自分でありたい」と願うのは悪いことではないし、多分メリオダスだってそうなんじゃないかな、と。

 誰しも最初からベストだけを選べるわけがないですし、自分ではどうすることもできないことだって多々あります。だからこそ「後悔してたまるか」というメンタリティが大事で、だからこそ、それに挑み続けているメリオダスはかっこよく見えるんだと思います。

 同時に、物語中盤以降、仲間たちに本音を話すようになって、叫んだり涙したり、そういった弱さが垣間見えることで、より彼のことを好きになった部分もありますね。不完全なものこそ人間らしいし、だからこそ惹かれるんだな、と。

――梶さん自身も、そういった逆境を経て大きくなったと。

梶:そうかもしれませんね。これからの自分がどうなるのかなんてわかりませんけど、何事にも責任感を持って、ちゃんと選んで、ちゃんと決めていきたいです。その先で「そういう生き方をしてきて良かった」と思えたら幸せですよね。

――そのような生き方を経た上でたどり着きたい、理想の声優像というものはありますか?

梶:それも日々変化しているような気がします。だからこそ悩むし葛藤もしますし、自分の理想だけでは成り立たないところもあります。でも、これまでもこれからもずっと変わらないのは、その役を担当するからには、この世の誰よりもその役の人間らしさ……いや、人間じゃない場合もありますね(笑)、キャラクターの魅力を引き出してあげることができる声優でいたい、という想いですかね。

 そこには、もちろん監督をはじめとするスタッフさんが求める理想形があるわけですけど、その要望に応えつつ、その役を声と芝居で代弁するというのが、自分にとってのずっと変わらない理想の声優像かなと思います。

夢を与えることに関われる喜び

――『七つの大罪』という作品は、梶さんにどんな変化を与えてくれたのでしょうか?

梶:この作品でメリオダス役に決まってアフレコが始まる前にも、主人公というポジションを経験させていただいたことはありましたけれど、それは“等身大の少年や青年がいろいろな出会いを通して、悩みながら成長していく”という役柄が多かった気がします。

 一方、『七つの大罪』のメリオダスに関しては、最初から完成されている存在。しかも、最強の集団である〈七つの大罪〉の団長で、本音が読み取れないミステリアスな性質。飄々としているかと思えば、シリアスな面も持っています。なので、まず演じる上で、これまでの引き出しでは通用しない難しさを感じてはいました。

 加えて〈七つの大罪〉のほかのメンバーを演じる役者さんは皆、基本的に自分より年齢もキャリアも上の方ばかり。そんな中で中心的なキャラクターを演じ、現場的にも座長として引っ張っていかなくてはいけないという立ち位置にもプレッシャーを感じる部分はありましたね。とはいえ、実際にはじまってみれば、そんなものは杞憂に過ぎず。自分でどうにかするというよりも、周りの皆さんが楽しみながら一緒に盛り上げてくださって。本当に感謝しかありません。

 最近で言えば、コロナ禍におけるイレギュラーなアフレコ環境で、どのように現場のモチベーションを保たせ続けるか、というのが最大のハードルでした。いろいろと試行錯誤しながらの7年間は、僕に沢山の刺激を与えてくれたように思います。

――『七つの大罪』に出演し続け、そこで得た刺激は、梶さんにさらなる自信を与えてくれたと。

梶:続けること自体が、いかなる場合においても絶対的に進化をもたらすかと言われれば、そうではないように思います。人間として心がブレてしまう瞬間だってありますし、喉のコンディションだって、いろいろな役をやればやるほど調整が難しくなっていきますからね。

 その中で、いかに自分のベストを発揮するか。何事にも全力で挑戦するのは大切なことですが、ひとつの作品にすべてを出し切ってしまい、別の現場に穴をあけてしまうなんていうことは許されないんです。それが“続ける”ということの難しさかな、と。だからこそ、どんなに不恰好であれ、この仕事を続けてこられたことは、自分の人生にとって、とても大きな意味を持つと思います。

――それでは最後に、劇場版を心待ちにするファンへのメッセージをお願いいたします。

梶:『七つの大罪』ファンの皆さん! 原作本編の物語が幕を閉じ、とても寂しい思いをしていたところに“劇場版製作決定”というニュース、本当に救われましたよね! 僕もその1人です!(笑)

 本作はまさに、夢を与えてくれる作品。以前、子どもたちが「将来、メリオダスになりたい!」と言ってくれているのを耳にして、涙が出るほど嬉しい気持ちになったことを覚えています。まさに声優冥利に尽きる仕事です。自分が小さい頃に抱いていた憧れと同じように、今の子どもたちの中にも確実にキャラクターたちは存在していて、文字通り“夢を与えること”、その一部に関わらせていただいていることに大きな喜びを感じます。これからも、しっかりとその責任の重さを感じながら、マイクに向かっていきたいと思います。

 メリオダスとして、映画館のスクリーン越しに、また皆さんとお会いできる日をすごく楽しみにしています。感想お待ちしていますね! 公開まで、今しばらくお待ちください!

――本日はありがとうございました!

『劇場版 七つの大罪 光に呪われし者たち』概要

「メリオダスは相棒」声優・梶裕貴が語る、『七つの大罪』への想いとは
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7月2日(金)全国公開

原作:鈴木 央『七つの大罪』(講談社「週刊少年マガジン」)

監督:浜名孝行

脚本:池田臨太郎

アニメーションキャラクター設定:西野理惠(作画組)

美術監督:空閑由美子

色彩設計:桂木今里

撮影監督:近藤慎与

3D監督:大嶋慎介

編集:小野寺桂子

音響監督:若林和弘

音楽:KOHTA YAMAMOTO / 澤野弘之

主題歌:岡野昭仁「その先の光へ」(SMEレコーズ)

【CAST】

梶 裕貴

雨宮 天

久野美咲

悠木 碧

鈴木達央

福山 潤

髙木裕平

坂本真綾

杉田智和

中村悠一

神尾晋一郎

川島 明(麒麟)

井上裕介(NON STYLE)

倉科カナ

制作:スタジオディーン

製作:「劇場版 七つの大罪 光に呪われし者たち」製作委員会

配給:東映

公式サイト:www.7-taizai.net

公式Twitter:@7_taizai

(C)鈴木央・講談社/2021「劇場版 七つの大罪 光に呪われし者たち」製作委員会

テキスト/山村龍

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