“生活保護を受けながらの大学進学はできない…”制度のカベにぶつかり、自活する「世帯分離」を選んだ19歳
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 コロナ禍で相次ぐ収入減少や失業。政府は先月末、困窮世帯に向けに最大30万円の給付を発表するなど、様々な支援策を打ち出してきており、菅総理も国会答弁で「最終的には生活保護という(仕組みがある)」とも述べているとおり、厚労省によれば、2020年度の生活保護申請数は前年度比で11年ぶりの増加を見せている。

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“生活保護を受けながらの大学進学はできない…”制度のカベにぶつかり、自活する「世帯分離」を選んだ19歳
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 そんな中、「生活保護世帯が大学進学するには世帯抜けないとダメなの、この世のバグなんよな」というツイートが話題を呼んでいる。大学2年生の儚さん(19)による、大学に進学する場合、生活保護の対象からは外されてしまう現行制度の問題点を訴えたものだ。

 「生活保護世帯の子どもは高校を卒業して働くのが前提のような仕組みになっているので、大学等進学率は30%。大学進学率が50%超、専門学校も含めれば70%の人が高校卒業後に進学する時代にはそぐわないなと思う。最近ではLGBTの問題などが議論されているが、それも声を上げた人たちがいるから変化しているのであって、世帯分離に関しても変わっていくべきだ」

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 儚さん自身、大学進学に合わせて生活保護を受給している家族の世帯を離れ、自分で生活費を賄う「世帯分離」という方法を選んだ一人だ。

 「もちろん食費・光熱費、国民健康保険料、携帯代を払ったりしないといけないのはめっちゃ大変だ。でも、私の分の生活保護費が減ったことで、親はもっと大変だと思う。仕送りしたい気持ちもあるが、できるわけなくて。それでも私の中には、まずは貧困から抜け出したいという思いがある。親の経済的な理由によって子どもの学習や体験の機会が奪われることは不安定な就業に繋がるし、さらにその子どもも貧困の連鎖に陥ると思う。学歴があれば必ず貧困から抜け出せるとは思わないが、資格を得たり、知らない世界を知ったりする必要はあると思う」。

■高校進学が認められたのさえ、つい最近の出来事だ

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 儚さんのような選択ができず、大学進学を諦めて高校卒業後に就職した人にも話を聞いた。

 山田さん(仮名、19)は「高卒だから大卒の人よりも不利に働いてしまって、結婚するとかなって子どもが望むような教育を与えることができなかったりするのが怖いなって思うし」、Renaさん(仮名、21)も「なんで親の収入によって子どもの教育を受ける機会が左右されなきゃいけないんだろうっていうのはすごく疑問にずっと思っていて、それは平等にあるべきなんじゃないかと思っている」と話す。

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 NPO法人「カタリバ」ディレクターの加賀大資氏は「親の学歴や収入の影響というのは幼少期から始まっているが、それが積み重なったものが大学進学のところにも出てきて、不利を被っているということだと思う。一方で、当事者の方々が“自分の環境はどうしようもない。仕方ないんだ”と、その困難さを当たり前のものであるかのように受け入れてしまっているところも、この問題の難しさの要因だと思う。もちろん、進学すれば必ず貧困から抜け出せたり、ハッピーになれたりすることが約束された社会ではない。それでも、学びたい、進学したいと思っている子どもの希望が叶えられれる社会であってほしい」とコメント。

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 ソーシャルワーカーの経験も持つ立憲民主党の池田真紀衆院議員は「最高裁判決と、そして国の世論の高まりによって高校の就学費(就学支援金)が創設されたのは平成17年のことなので、高校進学が認められたのさえ、つい最近の出来事だということだ。最高裁判決時には90%以上になっていたということもあるし、生活保護の目的は健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立の助長でもある。この10年間、子どもの生活はずいぶんと後退しているので、一歩前に進めていかなければいけないと思っている。

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 私たちも2018年、世帯分離しなくていいようにする議員立法を提出させていただいたが、野党ということもあり実現には至っていない。やはりこれは高等教育の無償化などとともに、政治決断でできることだと思う」と訴えた。

■パックン「誰もが中流階級となって生活できるようにしなければ」

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 BlackDiamondリーダーのあおちゃんぺは「大学は義務教育ではないし、遊んで留年している学生たちもいる。それよりも働けばいいのではないかという意見もあると思う」と指摘、テレビ朝日平石直之アナウンサーは「生活保護世帯でなくても、家庭の事情で大学に行かないという選択をした人もいるはずだし、そもそも大学進学が“最低限度”に当たるのか、という意見もあると思う」とコメント。

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 ジャーナリストの堀潤氏は「厚生労働省の令和2年賃金構造基本統計調査によれば、高卒者の平均年収は425万円あまり、大卒者は585万円あまり、大学院修了者は766万円あまりということなので、大学を卒業すると年収が37.6%、大学院まで修了するとさらに30.8%アップという賃金構造になっていて、学歴によって得られる年収が変わってくるのが現実だ。また、そもそも大学に限らず、勉強したいと思う子どもたちに対しては国が全て保障するんだというメッセージを出してもいいと思う」と指摘。

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 母子家庭に育ち、貧困の中からハーバード大に進学したパックンは「この問題について深く考えていて、2月に出版した本にも書いている。個人の才能を無駄にせず、できるだけ伸ばしてあげて社会に貢献してもらった方が社会のためにもなる。だから生活保護を受けながら学費も出してもらえるという解決策が出てくれば、僕は大賛成だ。

 ただ、それ以前に高等教育は全て無償化すべきだと思っているし、しっかり勉強して、4年後には入学した時よりも知識やスキルが身についていて、稼げるだけではなくて生産力を持った人が育つように大学も変えなければならないと思う。そして高卒、あるいはエッセンシャルワーカーについても最低賃金を引き上げ、誰もが中流階級となって生活できるようにしなければならない」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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