本格的な夏の訪れを前に、痴漢被害の増加が懸念されている。警視庁によると、気温が上がり、薄着になる夏場は特に痴漢の被害が増えるという。そんな中、被害を未然に防ぐ“あるサービス”が開発された。
【映像】「痴漢かも」周りの乗客にLINEの通知が送られる様子 ※サンプル(1分ごろ~)
LINE公式アカウント「痴漢かも:電車内<不自然な接触>情報共有」は、痴漢被害を防ぐサービスだ。ユーザーはアカウントを友達登録し、トーク内で文字などを送信。その後、自身の位置情報を共有することで、他のユーザーに「不自然な接触が起きている」と通知が送られる。情報を受け取った周りの乗客が小さなアクションを起こすことで、被害者が声を上げずに、痴漢を未然に防ぐことができるツールだ。
ニュース番組『ABEMAヒルズ』では、このツールを共同で開発した2つの企業を取材。開発の原点は、被害に遭った人たちの切実な声だった。
「調べると東京では、路上より電車内で痴漢に遭う確率が高い。なのに、ほとんど情報が出てこない。弊社の女性スタッフや痴漢被害に遭った人にもお話を聞いて。多くの人が『痴漢かどうかわからないから通報できない』と言っていた。アクションがとれないのは、そういった面が大きいのかなと思った」(以下、日本不審者情報センター合同会社代表・佐藤裕一さん)
被害に遭った多くの人が声を上げられない被害の現状。佐藤さんはこのツールによって「声を上げるハードルが少しでも下がってほしい」と話す。
「警察のアプリ(※防犯ベルの音が周囲に響く)は確かにありますが、使う人が目立つ状況になってしまうと思った。心理的なプレッシャーが大きくて、使用がなかなか難しいのではないか。私たちのサービスでは『沈黙と潜伏』と言っていて、とにかく周りにはわからないように、身を隠しながら、心理的プレッシャーを軽減して被害を訴えやすくしたい」
さらにサービスの普及によって、佐藤さんは「冤罪の防止にもつながる」と期待を明かす。
「私たちのシステムは、犯罪になる前にどうにか止めようという目的があります。犯罪を未然に防げれば、当然冤罪も生まれません。そう考えています」
痴漢の一歩手前である「不自然な接触」を基準とすることで、犯行の動機と考えられている「心理的死角」を減らす効果が期待できるという。また、死角が減ることで犯罪自体も減少し、それが結果として冤罪を減らすことにもつながる。
また、サービスの開発に携わったVitalica株式会社の桜井大祐さんは現在の課題として「精度の向上」を挙げる。
「サービスには男性と女性、両方の意見を反映させています。声なき声を上げるための“何か”をどうするか。それにフォーカスして開発を進めてきました。現時点でリアルタイムに“この車両”と特定するのは、非常に難しい。今後の課題として、できる限り精度の高い列車の運行を捕捉していく必要がある」(以下、Vitalica株式会社代表取締役社長・桜井大祐さん)
不自然な接触を周囲に知らせながら、当事者のプライバシーを守るためにはバランスも必要だ。よって、サービスでは最低限の「位置情報の取得」の機能のみにとどめた。現在は誰もが無言の声を上げられるように、100万人のダウンロードを目指しているという。
(ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)
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