動画配信サービスなどでの“倍速視聴”が浸透する中、映画のあらすじをまとめた「ファスト映画」が人気を集めている。
主にYouTubeに投稿されている「ファスト動画」は、“ネタバレ”を含む内容紹介や解説を10分程度にまとめたものだが、動画によっては本編の映像などを無断で使用しているものや再生数が数百万回に達しているものもあることから、事態を重く見た業界団体であるCODAは法的措置に乗り出した。
CODAによれば、この問題を20日にNHKが報じてからは悪質なアカウントの大半が動画を削除、チャンネル閉鎖をしているというが、現在までの被害額はおよそ950億円余りに上ると推計している。
「実際に本編を見たり、劇場へ足を運んだりするきっかけにもなる」という評価もある「ファスト映画」だが、知的財産に詳しい中島博之弁護士は「YouTube上であればストリーミング再生であってダウンロードには当たらず、違法だということ認識した上で見たとしても、それを取締まる法律はない」とした上で、次のように話す。
「例えば自分の意見が“主”で引用元の著作物についてはおまけ程度の“従”になっていることや報道・批評の目的の範囲内であることなど、著作権法32条では適法となる行為の要件を示しているし、“要約”について単なるキャッチコピーや2、3行程度であれば著作権を侵害しないと文化庁が定義している。
一方、勝手に編集した映画の映像を流し、“面白かった”などと最後に10秒くらいで感想を語っているファスト動画については、とても主従に分かれている、あるいは報道・批評の目的の範囲であるとは言い難い。しかも多くは広告収益を得るために行われていて、中にナレーションや編集担当を雇って組織的にやっているところもある。
例えば『シン・エヴァンゲリオン』のように、映画会社がこれまでの総集編のような動画を公式に公開しているように、権利者側が宣伝について考えることはいいことだ。しかし映画の映像を無断で、しかもほぼ最後まで内容がわかるように転載していることについては複製権侵害、編集行為については翻案権侵害、さらに著作物を違法にアップロードしていることについては公衆送信権侵害に問われる可能性がある」。
ジャーナリストの堀潤氏は「クールジャパンの投資対象になるまでに成長した企業『Tokyo Otaku Mode』の場合、元々はアニメファンたちがFacebookグループ上に自分が好きなアニメ作品の絵を投稿していたのが始まりだ。そこに世界中の人たちがアクセスするようになった結果、メーカー側が“Tokyo Otaku Modeにオフィシャルで出したい”ということになり、今ではグローバルで展開する、日本のポップカルチャーのサイトに成長した。
ファスト映画をやっているクリエイターたちが本当にいいものを作って、世界中の人たちに支持されれば、それこそタッグを組む映画会社が出きて、という展開もあり得るかもしれない。しかし違法でもなんでもいいからとりあえず収益のためにビュー数とチャンネル登録者数を稼ごう、それを転売して次は別のことをやろうというのは短期的で姑息だ。100歩譲って、彼らが将来、自分でも作品を作る側に回っていくことを目指しているのであれば違う印象もあるが、ただ映画の映像を使い捨てて終わりということなら、やがて彼らも使い捨てられることになってしまうと思う。
また、そうやってカジュアルに消費されることもあると作る側が織り込んで作ってしまっている部分もあるのではないか。やはり本当にいいものなので映画館で観たいなと思わせるだけのものを作れているか、ということも同時に問われているのかもしれない」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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