「給与の振込についても銀行口座の名義変更手続きが必要だったし、仕事では牧野の姓を使い続けていても、自宅は夫の氏になっているので、私宛に送られてくるサンプルが届かない。仕事にプライベートが入り込んでしまうというモヤモヤを今も感じている」。
ファッション雑誌のモデルをしながら3人の子どもを育てる牧野紗弥も、23日に最高裁の大法廷が示した夫婦別姓を認めないのは“合憲”とする判断に「残念」と話す女性の一人だ。
「小さな時から祖母に“牧野の姓を残して欲しい”と言われて育ったので、私にとって新しい氏を通称使用することは、アイデンティティにぽっかり穴が開いてしまう感じがあった。また、夫の姓に変えたことで、勝手に“所有されている”というようなイメージを抱き、社会復帰してからも夫のスケジュールを優先しないといけない、という風に思い込むようになっていた。いかに自分がジェンダーバイアスに囚われていたかに気付き、それが元で答えのない夫婦ゲンカを繰り返した時期もあった。
話し合いの結果、夫に全ての家事を2週間やってもらったところ、ようやくお互いにジェンダーの価値観のすり合わせができた。ジェンダーへの意識が高まり、夫婦別姓が『ジェンダーの対等とはなんだろう』と考えるきっかけになると思った。しかし残念ながら、今はその選択肢は選べない。実は結婚する時に“名前を変えたくありません”という話をしたこともあったが、いずれもう一回話ができればと気持ちを収めた。しかし当時は事実婚に戻すためには離婚という形を取らなければならないことも知らなかったし、手続きがどれだけ大変かということにも思いが至らなかった」。
■「一度結婚した場合、離婚して事実婚にするしか方法がない」
夫婦別姓を望み、なんとか“生まれながらの姓”を取り戻したいと考えていた牧野だが、現行制度では実現が難しいため、「離婚をするしかない」と結論付けた。ところが現行制度では、相続や子どもの親権などの問題も立ちはだかる。
「すごく悩んだが、姓によって結ばれているのが家族ではなく、個人がバンドで結ばれているのが家族だ、というところに夫婦で思い至った。先の話なので想像がつかないところがあるが、本来なら妻が持つ相続の権利を事実婚では持てない。また、事実婚では父母どちらかの単独親権になってしまうし、姓の問題もある。どれだけ共同親権に近づけられるかの調整をまさに行っているところだが、子どもたちも今はまだ理解できない部分もあると思うし、弁護士さんの提案で、意見が反映されるようになる15歳に達したと時にもう一度話し合うことを考えている。
実は自分の両親、そして夫の両親にも理解は得られていないが、別に両親の人生を生きるわけではない。私らしく生きるため、私たち家族が私たち家族らしく生きるため、自分の道は自分で選択する母親の姿を見せるためにも、進めていきたい。どこかで“やーめた”と言ってしまうこともできるだろうが、今は家族みんなが“できるところまでやってみよう”という気持ちだ」。
■和田彩花「女性の社会進出が進めば進むほど、仕事上のアイデンティティも確立されていく」
牧野の話を受け、パックンは「日本政府によれば、夫婦同姓を義務付けている国は日本の他にはないらしい。僕は夫婦別姓が当たり前の国で育ったので、今も認められていないのが不思議だ。反対派の意見も聞くようにしているが、牧野さんのお話からヒントが得られたと思ったのは、ご自身も元々の名字をすごく大切にしてきたし、名字そのものの大切さを認めているということ」とコメント。
アイドル・女優の和田彩花は「やはり別姓を考えるのは女性の方が多いような気がする。結婚後の家庭生活の中では役割やジェンダー格差の話が出てくると思うし、女性の社会進出が進めば進むほど、自分の中で公の人間、仕事をする人間としてのアイデンティティも確立されていく。そういう現状と制度が合っていないことが浮き彫りになっていると思う。やはり別姓を選択できる手段が実現できれば」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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