忍者と呼ばれた男が、いよいよ超早指し戦に対応し始めた。プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」予選Dリーグ第3試合、チーム永瀬とチーム広瀬の対戦が6月26日に放送され、チーム永瀬の屋敷伸之九段(49)が第1局から3局連続して登場。2勝1敗と勝ち越し、チームの勝利に貢献した。第1試合では1勝1敗の五分ながら、まだ手探り状態だったが、第2試合では持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールを把握。リーダー永瀬拓矢王座(28)からも「素晴らしい!」と絶賛された。
屋敷九段といえば、藤井聡太王位・棋聖(18)に更新されるまで最年少のタイトル獲得記録を保持するなど、10代のころから活躍してきた棋士。若手時代から変幻自在な指し回しで忍者とも呼ばれもした。大盤解説などでは早見えかつ的確なコメントでも知られ、今なお一線級で活躍する棋士だ。
プロの中でも、まだまだ経験者が少ないフィッシャールール。大会初参加の屋敷九段も、コツを掴むまで少々時間はかかったが、戦うごとに対応するあたりがやはり実力者だ。第1局、北浜健介八段(45)に序盤から押されっぱなしの展開にはなったが、終盤際どく切り返すと、142手の熱戦の末に勝利。この戦いぶりに永瀬王座は「素晴らしい!」と称えると、すぐさま第2局の連投を決めた。
続く第2局は名人経験者・丸山忠久九段(50)。十八番である後手番からの一手損角換わりは、公式戦で何度も体験していただけに、両者ともに初手から指し手が早く、いつしか持ち時間は両者6分超え。じっくり時間を蓄えてからの戦いは、先にペースを握られはしたものの、中盤からの反撃がヒット。逆転で連勝を飾ると、永瀬王座は「やっぱり、だいぶ慣れてきましたね。キレッキレ。いやあ、素晴らしい!」と前局以上に絶賛した。
第3局こそ相手のリーダー広瀬章人八段(34)に敗れたものの、序盤から中盤にかけての時間配分もばっちり。収穫もある一局として、怒涛の3連投を2勝1敗で終えた。この戦いぶりにはファンからも「まさかの連投w」「屋敷先生強い!」と、経験あるベテランの底力と対応力を称える声が多く寄せられた。
試合後、屋敷九段本人からも「フィッシャーの経験がなかったので(3連投は)ちょうどよかった。本戦も大変な戦いになると思いますが、調整して力を出せるようにしたい」と力強かった。
リーグ1位で予選通過を決めたチーム永瀬には、連覇がかかっている。前年の絶対的エース、藤井聡太王位・棋聖(18)に代わり、このチームに入った屋敷九段。超早指しの経験値がさらに高まれば、若き天才に匹敵する力がみなぎってくる。
◆第4回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名漏れした棋士がトーナメントを実施、上位3人が15チーム目を結成した。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)