“アルコールインターロック”で飲酒運転を本気でゼロに…「究極“車を動かなくする”のが技術メーカーの姿」 臨床心理士が問題視する“ビンジドリンカー”
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 千葉県八街市で児童5人が死傷した交通事故で、逮捕された運転手の男が「会社に帰る途中に酒を飲んだ」と供述していることがわかった。様々な対策が取られてもなくならない飲酒運転。根本から防止するため、ある装置に注目が集まっている。

【映像】飲んだらエンジンがかからない“アルコールインターロック”

 「アルコール数値が検出されました」

 そう警告を発するこの装置は、「アルコールインターロック」と呼ばれる、飲酒運転を防止するための自動車搭載型のアルコール検知機。使用方法は、専用の機械を車に取り付け、運転前に呼気中に含まれるアルコール濃度を測定。アルコールが含まれていないと機械が判断しないと、エンジンをかけることができないという仕組みになっている。

“アルコールインターロック”で飲酒運転を本気でゼロに…「究極“車を動かなくする”のが技術メーカーの姿」 臨床心理士が問題視する“ビンジドリンカー”

 計測時には、前方に取り付けられたカメラで計測者の顔を測定。身代わりなどの不正ができないようになっている。また、計測時のデータは保存され、一目でドライバーごとの結果がわかるようにも。

 飲酒運転の当事者にならないためにも、“いかなる場合であっても酒気を帯びた状態であればエンジンがかからない”という思いが込められたこの装置。開発した企業、東海電子の杉本哲也社長に話を聞いた。

 「企業向けにいろいろ飲酒運転防止装置をやっている中で、法人で起こる事故を防ぐというのと、我々自身もドライバーなので気をつけなければいけない。“本当にゼロにする”というところを途中から本気になってやり始めまして、その中で究極“車を動かなくする”というのが技術メーカーとしての姿だと思ってますので」(杉本社長、以下同)

“アルコールインターロック”で飲酒運転を本気でゼロに…「究極“車を動かなくする”のが技術メーカーの姿」 臨床心理士が問題視する“ビンジドリンカー”

 海外では北米を中心に20年以上前から普及し、飲酒運転の違反者に対して法令で装着を義務付けることが一般的だというアルコールインターロック装置。装置の取り付けも、カーナビなどの車載器の取り付けを行うサービス会社であれば2~3時間程度でできるという。最近では、企業のみならず一般客からの問い合わせも増加したと話す。

 「ここ1年2年くらい、本当にぽつりぽつりなんですけど。これはアルコール問題、依存症の問題で、やっぱり個人の方というのはお父さんお母さんが目の前で飲酒運転するんですよね。今回に似たイメージで、『人を殺してしまうんじゃないか』ということでいろいろ調べて、アルコールインターロックにたどり着くんです。今までは難しいかなということでお断りしていたことがあったんですけど、機械でとりあえず明日明後日の事故を防ぐのが役割かなと」

 日本で2009年から製造・販売され、現在国内で2700台程ほどが導入されているというこの装置。装置の開発以外にも、飲酒運転撲滅のための働きかけを行っているという杉本社長は、飲酒運転の問題に対する世界との差を痛感していると言う。

“アルコールインターロック”で飲酒運転を本気でゼロに…「究極“車を動かなくする”のが技術メーカーの姿」 臨床心理士が問題視する“ビンジドリンカー”

 「飲酒、アルコール依存症とか、人への対処・ケアに寄りすぎていると考えています。欧米では人のケアもやるんですけど、一方で車両、その人(の車)に強制的につけるというハイブリッドで、両輪でやるというのが常識なんです。それと比べると、片輪なんじゃないかなと。最近、台湾なんかはアジアで初のアルコールインターロックの強制装着(の法令)が成立しまして、それと比べるとどうなんでしょうかねというところです」

 飲酒による痛ましい事故をゼロにするために、今後もこの装置を普及させていきたいと言う。

 「今は検知器もいろいろなものがありまして、スマホタイプとか流行りであるんですけど、そういった中で『これが一番強力です』ということを誠意をもってお伝えして、その考え方に賛同していただけるお客さんを地道に増やしていくという活動になっております。我々ができることは、地道に『この機械がベストです』というお客様を増やしていくことがアピール、いつか採用していただけるんじゃないかなと思っているところです」

“アルコールインターロック”で飲酒運転を本気でゼロに…「究極“車を動かなくする”のが技術メーカーの姿」 臨床心理士が問題視する“ビンジドリンカー”

 事業用自動車の飲酒運転防止策としては、業務開始前の点呼でアルコール検知器を使用して確認することが、2011年に定められている。しかし、今回事故を起こしたトラックは自家用車扱い(白ナンバー)のため対象外だった。また、国交省によれば、点呼・検査後の飲酒事例も確認されているという。

 なくならない飲酒運転について、明星大学心理学部准教授で臨床心理士の藤井靖氏は、程度の差はあれど日常的に酒で失敗する人が非常に多くいることを指摘し、「日本は酒好きに対して甘すぎると感じる」と指摘する。

“アルコールインターロック”で飲酒運転を本気でゼロに…「究極“車を動かなくする”のが技術メーカーの姿」 臨床心理士が問題視する“ビンジドリンカー”

 「お酒を飲んで記憶をなくしたとか、帰れなくなったというような酒に起因した失敗が、あたかも武勇伝かのように語られて、それがあまり問題視されない。あるいは“大量の酒が飲める人が偉い”と考える人も一部にはいる。アルコール依存症と判断される人はおおよそ100万人ぐらいいて、その中の5万人ぐらいが治療を受けているという推計がある。一方で世間一般に思われている依存症の方は、常にお酒くさくて顔が赤い、フラフラして仕事もしないというイメージがあるかもしれないが、そういう人は本当に少ない。DSM-V診断基準で言うと、アルコール使用障害はより幅広い対象群に当てはまる状態像。問題意識を持つべき範囲は、もう少し広げて考えていく必要があって、その数は数百万人にも上る」

 短時間で大量の飲酒をする、いわゆる“無茶飲み”をする「ビンジドリンカー」は、アルコール関連問題の中で軽症に分類されているが、DSM-Vではアルコール使用障害に含まれる。

“アルコールインターロック”で飲酒運転を本気でゼロに…「究極“車を動かなくする”のが技術メーカーの姿」 臨床心理士が問題視する“ビンジドリンカー”

 「今回の容疑者も、よく行くスナックで2時間ぐらいペース早く飲んでつぶれたりとか、母親からの話で出ていた濃いお酒を水割りで2杯ぐらい飲んで寝ちゃうっていうのは、本人のキャパシティからしたら短い時間で大量に飲んでいるということだと思う。これはビンジドリンカーにあたるのではないかと推測される。事件を起こした日も、常習的な飲酒の一部だと考えるのが自然。本人の自覚の無さももちろん非常に問題だが、周りもそれを受容しすぎている気がする。

 今回、報道に対して『60歳の大の大人が起こした事故なんだから父母にインタビューする必要ないんじゃないか』『会社の責任ではなく個人の問題ではないか』という視点もあるかもしれない。しかし、私はやっぱり周りがもうちょっと厳しく、毎日車に乗る仕事をしているにも関わらずお酒を飲んで業務中も疑いがあるとなればちゃんと追及したり、常連のスナックのお店の方も容疑者が何の仕事をしているかはわかっていたと思うので、周りが許容しないということもあっていいのではないか。もし気づいていたのに『あの人はお酒が好きだから』と見てみぬふりをしていたのだとしたら、そこには一定の責任が伴う。例えば仮に、仕事ぶりがベテランで、“真面目で信頼がある”人だとしても、それは別の問題」

 一方で、人の意識改革だけでは限界があるとも指摘。「いくら装置や設備を設置しても、本当に飲みたい人は抜け穴を必死に探す」とした上で、何重にも網を張る必要性を訴えた。

 「東海電子の杉本社長がおっしゃっていたように両輪で、本人や周りの人の意識と、人が行動を起こさない仕組みを整備するのはどちらも大事なこと。例えば今後、運転を仕事にしている人は免許証を登録して、コンビニなどで昼間にお酒を買っていると運転できないような仕組みにするとか。法整備も含めて、アルコールインターロックのような道具も使って多面的に対策を考えていけたらいいのではないか。不適切な飲酒は他人の命の問題に容易につながりうることを再認識すべき」

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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