八街の5人死傷事故で無関係の企業に“電凸”殺到…「デマを信じてしまうことは誰にでも起こりうる。でもそれを元に攻撃するのは違う」“ガラケー女”に間違われた女性が訴え
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 千葉県八街市で起きた、小学生5人が死傷した事故。逮捕されたトラック運転手が働く運送会社の社長は記者団を前に、「とてもとても重いことをしたという。言葉が浮かばない。大変なことをしたと思っている」と頭を下げた。

・【映像】“間違い電凸”被害当事者に当時の様子を聞く

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 一方、この運送会社とよく似た名前の企業が、「事故は弊社とは無関係だ」とホームページ上で説明しているにも関わらず、クレームや無言の電話など、いわゆる“電凸”の被害に遭い、業務に支障を来している。

 「同じようなことが何度も繰り返され、その度にニュースになっているのに、なお学習しない人が多いと感じている」。そう話すのは、一昨年に常磐道などで起きた“あおり運転・殴打事件”に関して、被害者を携帯で撮影していた“ガラケー女”に間違えられ、誹謗中傷の被害に遭ったさはらえりさんだ。

■「後で証拠にできるよう、スクリーンショットを取ることに専念した」

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 1万人ほどいたというInstagramのフォロワーの中に容疑者の男性がいたこと、そして女性と容姿が似ていたというだけで、ネット上で吊し上げに遭ったさはらさん。さらに経営していた会社にまで“電凸”が。地域の警察署に駆け込むも親身になって話を聞いてはくれず、「放っておけば大丈夫だ」と言われてしまったという。

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 「朝起きたら名前と写真がインターネット上に拡散していて、犯罪者扱いされた。“無関係だ”と会社のホームページで掲載したが、今度は“やっていないという証拠を出せ”と言われた。さらに本人が捕まった後も、引くに引けないということなのか、“彼女は違ったらしい。でも詐欺師であることには変わりない”とか、“架空の会社だ”など、よく分からないことを言ってくるアカウントもあった。

 ただ、そういう攻撃について、それ以上の反論というか、“売り言葉に買い言葉”みたいなことはしなかった。実際、“あなたもやったでしょ。やりあったでしょ”と警察に言われてしまうケースもあるようなので、仕返しをするということはせず、あえて静観することも必要だと思う。暴言を吐くためだけにアカウントを作り、言うだけ言うとアカウントを消すという人も非常に多かったので、後で証拠にできるよう、スクリーンショットを取ることに専念した」。

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 さはらさんはこれらの証拠を元に、うその情報を拡散させた愛知県豊田市の元市議を提訴。昨年8月、東京地裁は元市議に賠償命令を下している。

 「当初は“相手が市議だから訴えたのだろう。金目的だろう”というようなことも言われたが、多くの人が匿名アカウントで誹謗中傷する中で、彼については本名で利用していたのですぐに所在もわかり、最初に対応することになった。結構な時間を費やすことになったし、33万円という賠償額はどうなのか、という思いもあるが、判決が下されたというところに関しては大きな進歩だったかなと思うし、“簡単にリツイートしてはいけない”という認識が多くの人に広まるきっかけにはなったと思う。

 私のケースでは、2日間で10万人くらいの人たちが拡散させたと言われているが、個人を特定して裁判まで持っていくとなると、物理的に限界があるので、100人くらいに絞り込んだ。それでも匿名の100人の個人情報を特定していく作業は最近までかかっている。半数くらいは和解という形で解決したが、残りの人たちについては、これから対応していくことになる。ただ、多くの方が受けている誹謗中傷と違って、私の場合は完全なるデマだったので、感情と切り分けて対処することができたという面はあると思う」。

■柴田阿弥「自分だけは違うと思うのは危ういと思う」

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 今年3月には、こうした経験を元に『ネット社会と闘う ~ガラケー女と呼ばれて~』を上梓したさはらさん。誹謗中傷を行った人たちから届いた、数多く“謝罪メール”を読んだ印象を、次のように明かす。

 「誹謗中傷をする時に使っていた言葉はとても卑猥なものだったり、汚い、幼稚なものだったりしたが、謝罪メールの内容は、しっかりとした“ビジネス文書”になっていた。また、アカウントをたどっていくと、小さいお子さんがいるお父さんやお母さん、ということも非常に多かった。一見、幸せそうに見えていても実は違うところがあり、それを発散したり、相談できる人が少ないということではないか」。

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 その上で、「“デマを信じてしまって申し訳ありませんでした”という謝罪も多かったが、私はデマを信じることと誹謗中傷をすることは別物だと思う。デマを信じてしまうことは誰にでも起こるけれども、それを元に人を攻撃するのは違うし、踏みとどまって欲しい。怒りに駆られていたとしても、その情報はどこから出てきたものなのかを確認することが大事だ。そういうことを考えずにSNSを利用し、情報を拡散させることによって苦しむ人がいるという事実を、どうか多くの人に認識してほしい」と訴えた。

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さはらさんの話を受け、株式会社カルモニー代表の岩澤直美氏は「こういう問題について“歪んだ正義が”と報じられがちだが、不思議な表現だとも思う。人それぞれに他人とは違う自分なりの正義があるわけで、それを言葉や行動として出すときに、相手がどう受け取るか、という想像力がなければ、どんな正義もただの暴力になってしまうということだと思う」とコメント。

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 フリーアナウンサーの柴田は「“ネット上では歪んだ正義が生まれやすく、誹謗中傷も起きやすい”という構図は分かりやすいが、ネットは使わないから自分は大丈夫とか、自分だけは違うと思うのは危ういと思う。近所の人が石を投げたり、村八分みたいなことをしたりというのは、昔からあったこと。正義のためなら人間は恐ろしく残酷になれるし、過去のあらゆる戦争が正義の名の下に行われてきたのは、その最たるものだと思う。

 しかも最近では“何々すべき”“何々である”みたいに言い切っちゃう人が増えている気がする。でも知識が増えれば増えるほど、本当は“もしかして自分が言っていることって間違っているのかな”と立ち止まれるようになるはず。身近な人であっても、“べき”とか“違いない”という表現をされたら気をつけたほうがいいかなと思う。そして、誹謗中傷や電凸をする人は減ることはないと思うので、法整備やルールづくりの方へ議論を持っていくことも必要だと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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