将棋の藤井聡太棋聖(王位、18)が7月3日、ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第3局で渡辺明名人(棋王、王将、37)に勝利、3勝0敗のストレートで初防衛を果たした。18歳11カ月での防衛、タイトル3期での九段昇段はいずれも最年少。対局後の記者会見では「一人前になったという意識はないです」と、今後もさらに成長を目指す真摯な姿勢を見せた。インタビューの主な内容は以下のとおり。
【動画】ヒューリック杯棋聖戦 五番勝負 第三局 藤井聡太棋聖 対 渡辺明名人
――「防衛して一人前」という言葉がある中、防衛した感想をお願いします。
今期棋聖戦は、渡辺名人を挑戦者に迎えることになって、自分にとって試練と言える五番勝負だと思っていたので、その中で防衛という結果を出せたことはうれしく思っています。
――王位戦、叡王戦で豊島将之竜王との戦いが続きます。意気込みを。
この後王位戦、叡王戦とありますので、シリーズを盛り上げられるよう、全力を尽くしたいと思います。
――渡辺名人を相手に迎えて去年は3勝1敗、今年は3勝0敗というストレートという結果については。
第1局から第3局までどれも苦しい部分があったと思うので、3連勝は実力以上の結果が出たと受け止めています。
――王位戦七番勝負の第1局で豊島竜王に敗れました。そこからどう気持ちを切り替えましたか。
直前の王位戦の第1局では早い時間での終局になってしまって、申し訳ないと思うところはあったんですけど、その分今日は最後まで、楽しんでいただける熱戦にできればと思っていました。
――昨年、棋聖を取ってタイトル保持者になって1年。変わった点、成長した点はありますか。
タイトルホルダーになったことで、トップ棋士の方と対戦する機会が格段に増えました。成長というよりも、新たな課題が見つかることの方が多いと思います。それも成長につなげていければという風に思っています。
――今日で九段に昇段しました。三段から四段に上がる時を振り返って、九段のイメージは。だいたいどれくらいかかるかなど、予想はしていましたか。
九段というと、大変実績のある方ばかりという印象でしたので、自分もそこに加わることができたのはうれしく思っています。九段の方ですと、息長く活躍されている方がとても多いと思うので、自分もそれを見習っていきたいと思います。特にプロ棋士になってから段位、昇段の規定がいろいろあるので、具体的な(昇段時期の)イメージはなかったです。
――王位戦で豊島竜王に敗れたショックはあったんでしょうか。解消した方法は。
王位戦の第1局では、こちらが持ち時間を残して負けてしまって、その結果以上に熱戦にできなかったことに、見ていていただいているファンの方に申し訳なかったです。結果はともかく、早い時間に終わってしまうことがないように、考え抜こうと今日は思っていました。影響自体はないとは言えないと思いますが、自分としては、今日はいい状態で臨めたと思います。
――具体的な今後の目標、将来的なビジョンはありますか。
タイトル数だとか、具体的な数字は自分は意識していなくて、それよりも対局の内容をよくしてきたいというのが変わらず思っていることです。
――段位や記録にあまり興味を示されないのはなぜですか。
結果ばかりを求めていると、それが出ない時にモチベーションを維持するのが難しくなってしまうとも思っています。結果よりも内容を重視して、一局指すごとに改善できるところを新たに見つけるのをモチベーションとしてやっていきたいと思います。
これまで公式戦で200局以上あったと思うんですが、完璧に指せたのは一局もないですし、自分が強くなることで今まで見たことのない局面と出会えるかなと思っているので、強くなることで今までと違った景色を見ることができたらなと思っています。
――ファンや地元の方への意識の変化はありますか。
タイトル戦に出るようになってから、いろいろな方のおかげで将棋を指すことができるんだという意識がより強くなったと思います。
――3連勝できた勝因はどこにありますか。
難しいですけど、第2局、第3局ではこちらの持ち時間が少なくなって、差がつく場面あったんですけど、そういう状況でも粘り強く指すことができたと思っています。
――第1局、第2局は相掛かりでした。戦法の幅を広げる意識はありますか。
1年ほど前までは、先手の角換わりの割合がかなり高かったんですけど、角換わりはかなり研究の比重が高い点もありますし、いろいろな戦型を指した方がおもしろいのかなと思っています。
――「防衛して一人前」というコメントについて、改めてどう思っていますか。
今回防衛戦で結果を出すことができたんですが、それで一人前になったかというと、そういう意識はないです。五番勝負で、課題、改善できるポイントがいろいろあったので、防衛してホッとしているところはあるんですが、それに満足することなく、やっていきたいと思っています。
――今回、社会人としてのタイトル戦でした。
今年から将棋に専念する形になって、時間がより多く取れるようになったので、取り組めていることは多いのかなと思っています。
――渡辺名人に通算8勝1敗になりました。豊島竜王には1勝7敗という、星が偏っていることについて、どのようにとらえていますか。
自分でもどう解釈するのか難しいと思っているんですけど。あまり対局に臨む上で、過去の結果は関係ないことかなと。豊島竜王には現状、かなり負け越してしまっていますけど、負けてしまった将棋からもしっかり学んで、今後対抗できるようにやっていけたらと思います。
――今、思い描く理想の棋士像はありますか。
明確なゴールがあるわけではないです。できる限り強くなるというのが、現状の目標です。
――四段昇段から九段まで、この4年間はどんなものでしたか。
四段になってから、羽生(善治)先生はじめトップ棋士の方と対戦させていただいたりしました。プロ棋士になる前は、そういった機会は本当になったので、その中で自分自身成長できた4年間だったのかなと思います。6日に次の対局があるので、あまり喜びすぎてもいけないのかなと思っているので。やっぱり対局が続くので、落ち着いてから考えたいと思います。
(ABEMA/将棋チャンネルより)