イメージしただけでドローンやロボットの腕を操作!?リハビリへの応用も 研究が進む「BMI」の世界
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 微弱な電気信号である脳波や、脳の活動により生まれる血流の変化などを検知して解析、その情報を利用し機械を動かしたりする技術「ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)」。

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 米アリゾナ州立大学では、ドローンが動くイメージの脳波を読み取り、3機を同時にコントロールする研究が行われている。同大機械・航空宇宙工学のパナジオティス・アルテミアディス准教授は「数十台、数百台が協働できることを目指す」と語る。また、米Facebookが今年3月からスタートさせたのが、神経信号を読み取るリストバンドの開発だ。これにより何を持たない状態でもゲームを楽しむことができる。

■“3本目の腕”を動かす実験が

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 こうした動きは日本でも。大阪大学の西尾修一特任教授は、BMIによって“3本目の腕を動かす”研究を行っている。「何か考えたりする時には脳の細胞が活動し、電気信号が通る。それが漏れ出ているところをセンサーなどでキャッチする。“右腕を動かしたい”と意図、あるいは右腕を動かすイメージ、これを動作に変換してあげるという形だ」。

 椅子から伸びた腕がペットボトルを掴み、キーボード入力をしている女性に水を飲ませるという、驚きの実験映像もある。「例えば“飲みたいな”という時には、いちいち“じゃあちょっと右腕を動かして”とは考えないと思う。あるのは、“そこのペットボトルを取って飲みたい”という欲求だろう。それを分解した、“じゃあペットボトルに近い右腕を出して取って、口元に近づけて飲もうかな”という解釈をロボットが代わりにやってくれるということだ。こうした技術を上手く使えば、ある仕事をしながら別の仕事をするという、マルチタスクの性能が上がる」。

■脳に対する“書き込み”の可能性も

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 映像を見た脳科学者の茂木健一郎氏は「存在しないはずの腕を脳の活動で動かせるというのは画期的だ。“千手観音”も原理的には可能になるのではないか」と感嘆。西尾氏は「腕を10本とか使ってやるようなこともできると思う」と話した。

 研究はすでに大学の外でも。日産自動車では脳波のデータをもとにハンドル操作のタイミングやドライバーの持つ違和感を把握、自動運転などに応用する研究を続けている。また、飲食チェーン大手のサイゼリヤでは試食アンケートの代わりに脳波の反応を数値化し、メニュー開発に活用している。

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 他方、BMIにはこうした“読み取り”だけでなく、“書き込み”の研究も存在する。「書き込みのためには信号に変えてやることが必要で、現時点では電磁石などのコイルを用いて強制的に電流を流すくらいのことしかできないため、かなり大まかなことしかできない。もう一つのやり方として、“今こう考えたからこういうふうに変わったんだ”と脳に学習させ、脳の活動自体を変えていくこと。間接的にではあるが、そのようにして変えていくことはできていくんじゃないか」(西尾氏)。

■脳卒中の後遺症のリハビリに期待

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 こうしたBMIの技術を、脳卒中で脳に損傷のある人々の歩行障害のリハビリに役立てようとしているのが、川崎医科大学付属病院脳神経内科の三原雅史教授だ。座った状態で自分が歩く姿をうまくイメージできると脳から出る血流量が増えるといい、実際の歩行訓練でその感覚を思い描いたまま行うと、効果的な回復が見込めるのだという。

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 「脳卒中の方というのは残念ながら本来使われるはずの脳の回路が壊れてしまっている。しかし高速道路の代わりに下の道を通るように、普段は使っていない経路を強化することによって機能を回復することができる。歩行についても全くの元通りということは難しいが、“これくらい回復すれば効果がある”とみなされる基準をクリアした方が、普通のリハビリだと20%弱くらいのところ、BMIでは53%くらいということで、ある程度の効果があるのではと考えている。

 これを実際に臨床の現場で使えるようにするための治験を行っていて、数年後にはなんとか世の中に出したい。例えば脳卒中であれば手の麻痺など、手を動かす領域をフォーカスして鍛えることもできるし、うつなどの精神疾患も脳の回路の異常であるということが言われているので、同様の技術を使って治療に活かす研究も進められている」。

■脳に埋め込むタイプの研究も

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 一方、「テスラ」や「スペースX」の創業者として知られるイーロン・マスク氏が設立した「ニューラリンク」では、頭にワイヤレスチップを直接埋め込む研究に莫大な資金を投入。「この埋め込み型のデバイスによって、ほとんどの人が人生の中で経験する脳の異常、つまりうつ病や睡眠障害などの神経症、認知症や脳の損傷といった多くの症状を全て解決できる」と話している。

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 京都大学大学院の山本康正特任准教授は「アメリカは資金(投資額)と制度(認可)の2つの点で日本よりも進んでいる。例えばFacebookの収益のほとんどは広告だが、横目でチラッと見ただけなのか、それとも面白いと思って食い入るように見つめたのかで、全く価値が異なる。脳波の測定によって、よりクリック率の高い広告を出せるようになるのなら、数百億を注ぎ込むだけの価値もあるだろう。

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 また、埋め込み型の研究についても、パーキンソン病などの病気の構造の解明のためということで研究を進めることができている。リスクについても医学の発達によって解決できると思うし、僕はやりたい。毎年ラスベガスで開催されているテクノロジーの見本市『CES』ではすでに非侵襲型だがBMIのヘッドセットが出てきていて、麻痺のある方などの生活の質の向上が期待されている。さらに言えば、脳波を提供することによって健康診断が常時できるようになると病気のリスクが軽減され、医療費の抑制、保険料の値下げという可能性も出てくる」。

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 茂木氏が「そうした部分の細かなノウハウがビジネスに繋がるのだろうし、将来的には軍事分野や動物への応用も出てくるのではないか」と指摘すると、山本氏は「脳で通じ合った方が言葉や絵、文字にして伝えるよりもコミュニケーションが早くなるし、爆音の中でも会話抜きにコミュニケーションができるというのは非常に有効だ。また、動物が鳴き声を出すときの脳波を読み込んで、どういうことを言おうとしているかを解析できるようになったとしたら、より深いコミュニケーションもできるようになる」と期待を込めた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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