“小1プロブレム”への処方箋? 文部科学省が5歳の園児に新たな教育プログラム、狙いと効果は?
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 入学したばかりの子どもたちが授業中に立ち歩くなどの学習態度の問題や、学力にばらつきがある問題を指す“小1プロブレム”。これに対し、文部科学省が2022年度から新たな教育プログラムのモデル事業をスタートし、その後、全国普及を図る方針であることを読売新聞が報じ、話題となっている。

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“小1プロブレム”への処方箋? 文部科学省が5歳の園児に新たな教育プログラム、狙いと効果は?

 萩生田文部科学大臣は5月、「5歳の1年間は小学校に上がる前段階として、同じ学びをしていただくことがこれからの義務教育に必要じゃないか。具体的には言葉の力、情報を活用する力、探究心といった、生活学習基盤をすべての5歳児に保障する幼保小の架け橋プログラムの開発推進だ」とコメントしていた。ただ、Twitter上には「児童より受け入れ側の小学校が変わるべき」「“小1プロブレム”が“5歳プロブレム”に変わるだけ」といった疑問の声も少なくない。

“小1プロブレム”への処方箋? 文部科学省が5歳の園児に新たな教育プログラム、狙いと効果は?

 国学院大学の吉永安里准教授は「昔から幼児教育と小学校教育の違いはあったが、その違いをうまく乗り越えていくことが難しいという子どもたちが出てきた。“小1プロブレム”も1990年代から社会問題になっているもので、高学年で起きるような学級崩壊とは違い、大人への“甘え”や友達に対する“依存”のようなことで出てくる落ち着きのない状態だ。

 背景には地域社会の少子化や公園の減少に伴う外遊び経験の乏しさ、兄弟姉妹が少ない中で育った親御さんたちの育児経験の乏しさなどが考えられる。ただ、全てのクラスで“小1プロブレム”のようなことが起きているわけではなく、学校や地域によっても違いはある。また、幼稚園出身か保育園出身かの違いよりも、それぞれの子どもの個性の方が違いとして見えてくることが多い」と説明。

“小1プロブレム”への処方箋? 文部科学省が5歳の園児に新たな教育プログラム、狙いと効果は?

 その上で、今回の報道について「幼稚園は文部科学省の所管の学校教育施設、保育園は厚生労働省の所管の児童福祉施設という違いはあるが、3歳以上についは足並みを揃えて指導をしてきたし、幼保合わせて就園率が94%くらいに達した平成元年には小学校の教科に生活科ができた。この生活科を核にして、幼児教育で培った資質・能力を円滑につなげ、さらに伸ばしていこうということになった。今回の話も、そうした流れの中で出てきている動きではないだろうか。

 小学校には学習指導要領があるが、幼稚園には教育要領、保育所には保育指針、認定こども園にも幼保連携型認定こども園教育・保育要領というのがあり、自発的な遊びを通して、総合的に資質能力を伸ばしていくということになっている。ただ、それは計算やひらがなをやるということではない。今回の共通プログラムについても“粘り強さ”とか“コミュニケーション能力”とか、いわゆる社会情動的スキル、非認知能力を、遊びを通してバランスよく育んでいくということが大切にされている。

“小1プロブレム”への処方箋? 文部科学省が5歳の園児に新たな教育プログラム、狙いと効果は?

 すでに幼小の接続をスムーズにしようと“前倒しの指導”としている園もあるが、椅子に座らせて先生の言う通りにドリルをさせることがかえって意欲減退に繋がってしまうという問題もある。あるいは待機児童を減らすためにたくさんの保育所を作ってしまった結果、質の保障が進んでいないという問題もある。そうした中で、平成29年の要領改定では、“幼児期の終わりまでに育ってほしい姿”を打ち出した。それを踏まえ、どこの園でも質の高い保育ができるようプログラムを作り、小学校へつないでいきましょうということだろう。

 実は小学校の側も、令和2年度からは小学校1年生でスタートカリキュラムというものが始まり、ひとりひとりの興味関心に応じた学習指導や主体的・探究的な学びを大切にしていく方向へ舵を切っている」との見方を示した。

“小1プロブレム”への処方箋? 文部科学省が5歳の園児に新たな教育プログラム、狙いと効果は?

 慶應義塾大学特別招聘教授やN高理事も務めるKADOKAWA社長の夏野剛氏は「中学生の生徒数が減っているのに不登校の生徒数が増えているのは、日本の教育がとにかく一律だからではないか。例えばフィギュアスケートで国際大会に出ている子でも、体育の授業を受けなければならない。少なくとも幼稚園のような段階は個性の方が大事だと思うし、そこにまで一律さを押し付けていこうというのはどうなのか。

“小1プロブレム”への処方箋? 文部科学省が5歳の園児に新たな教育プログラム、狙いと効果は?

うちの娘たちが通っていた幼稚園の先生は、3歳から5歳まで英語を学んだからといって、そんなのすっかり忘れちゃうから関係ありませんという主義だった。自由に自分で考えてやりなさいという方針で、習いごとも禁止だった。そういう中で育って海外で活躍している人もいるので、やっぱり国が義務教育の前の段階にまで口を出すのはどうなのかなと思う」とコメント。

“小1プロブレム”への処方箋? 文部科学省が5歳の園児に新たな教育プログラム、狙いと効果は?

 お笑いタレントのパックンは「日本の教育制度は本当に立派だし、だからこそQアノンみたいなものが流行らないし、トランプみたいな人も登場しない。僕の子どもたちは公立のこども園へ行った。最高の思いをしたし、いい教育を受けたと思う。ただ、今の世の中が何を求めているかといえば、個性を伸ばすこと、ダイバーシティを重視しようということだと思う。そこで紋切り型の何かをやるというのは、違うと思う。それからカミングアウトすると、僕は幼稚園で留年している。仮にそのまま卒業していたら、間違いなく“小1プロブレム”を起こす問題児になってしまったと思う。でも1年遅れたことで、少しは成長し、落ち着いて入学することができた。そして今ここにいる」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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