8日、酒類の提供を続ける飲食店に対して「金融機関への働きかけを要請する」と発言した西村康稔経済再生担当大臣。しかし、一夜明けた9日午前、西村大臣の発言について、菅総理は「私は西村大臣がどのような発言されたか承知していない。西村大臣はそうした趣旨の発言は絶対にしないと私は思っている」とコメント。
【映像】4度目の“緊急事態宣言” 12日から適用、映画館の営業時間やイベント開催に関する規定(9分ごろ~)
その後、西村大臣が会見で「金融機関は多くの事業者と接点があり、日頃からコミュニケーションをとる一環として、感染防止を働きかけてもらいたいという趣旨だった」と前日の発言を釈明。同日午後4時半過ぎには加藤官房長官も総理官邸で「個別の金融機関への働きかけは行わない」と述べるなど、混乱が続いている。
金融機関への要請は撤回されたが、なぜ政府はそこまで酒類の提供禁止にこだわるのだろうか。ニュース番組『ABEMA Prime』では、国民民主党代表で衆議院議員の玉木雄一郎氏とともに考えた。
西村大臣の一連の発言を受け、自身のTwitterに「金融機関への働きかけに法的根拠がないことを西村大臣自らが認めている。こんな曖昧な根拠で営業の自由を阻害してはならない」と怒りをつづった玉木氏。番組では「担当大臣がパネルまで作って説明したことを内閣総理大臣が知らず『そんなことは西村さんは絶対に言わない』と言った。挙げ句の果てに、官房長官が否定した。この内閣は一体どうなっているのか」と投げかけた。
「西村大臣の発言は、要は『うまく脅しておいて』ということだろう。私も金融行政をやっていたが、いわゆる金融機関はお金を貸している立場。優越的地位と言って、やはり貸している側がどうしても強くなる。貸している立場からセット販売で『融資するからこれも買え』といった指示は禁止されている。同じように金融機関が持っている優越的地位を逆に政府が利用して、言うことを聞かせようとした。極めて筋が悪いやり方だ」
さらに政府は、酒の販売業者に対して「酒の提供をやめない飲食店には取引停止をしてほしい」と求めている。すでに国税庁酒税課からお酒を売る業者の業界団体に対する“依頼”という形の文書が7月8日付で配られている。これに玉木氏は「ふざけているのか」と疑問を呈する。
「当然、売り上げが減った場合は、国が月次支援金などを用意しているので『積極的に活用してください』と小さい文字で書いてある。しかし、月次支援金は月に最大で20万円だ。だからたくさんお酒を卸していて、今回の件で普段の売り上げが吹っ飛んでも『月に20万円の支援金があるから、これで自粛してくださいね』と言っている。ふざけているのかなと感じてしまう」
番組中、酒卸業者・明治屋の沓名隆社長が「(注文を)お断りすれば、絶対、二度と注文は来ない」と答えたインタビューが紹介されると、新宿歌舞伎町のゲイバー・CRAZE店員のカマたく氏は「うちも明治屋さんからお酒を卸してもらっている」と告白。
「うちのバーは(国の方針を)フルシカトして営業する。そうせざるを得ない状況に追い込んだのは国側だ。実際、協力金を申請したが1回ももらっていないお店がたくさんある。私が知っている中でも、協力金を申請した10店舗中9店舗が、1月から何ももらっていない。これが私の周りで起きている事実だ。それで『協力しろ』『営業するな』『酒をやめろ』『時間を短縮しろ』って、意味がわからない」
4月12日以降の協力金に関して、東京都は現在申請受付中の段階で、店舗には約3カ月分の協力金がまだ支払われていない状況だ。
日本の現状に、フランスに移住したネット掲示板『2ちゃんねる』創設者・ひろゆき氏は「フランスの場合、従業員の給料がほぼ100%出る状態だった。新型コロナの感染者が少なくなって『そろそろお店を開けよう』となったとき、従業員が『働かないで給料が出るなら働きたくない』と言って開けられなかったぐらいだ」と話す。
今回の緊急事態宣言で、政府は酒の提供停止で飲食店の協力を得るため、対処方針に「協力金の先渡しが可能となる仕組みの導入」を盛り込むとし、誓約書の提出を条件に「協力金を先渡しする」と発表している。金額は事業者の規模に合わせて、1日4万円からの支給だ。これに玉木氏は「誓約書を書いてって、いつの話だ」と呆れ。
「緊急事態宣言は12日から発令される。本当の先渡しは『これがあるから月曜から酒類の提供はやめてくれ』と、土日に店舗に払うものだ。先渡しよりも、遅れている今までの協力金を払ってほしい店舗のほうが多いだろう」
(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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