2019年1月、25年間連れ添った妻と連名で離婚を公表したアマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏。ベゾス氏は婚前契約(プリナップ)を交わしておらず、離婚した際の慰謝料は、約4兆円に上ったとみられている。このような事態を防ぐために、海外では婚前契約の締結が主流になっている。セレブの話かと思いきや、実は日本でも徐々に婚前契約を交わす人々が増えている。
【映像】「より愛が深まった」“婚前契約”を経験した夫婦がテンプレートを公開(13分ごろ~)
そもそも婚前契約とは財産や仕事、家事育児の分担など、夫婦生活のルールを結婚前に話し合って契約書としてまとめること。他にも、事実婚契約やパートナーシップ契約など、さまざまなパートナー間の契約形態がある。
はたして、日本でもパートナーとの間に契約書は必要なのか。ニュース番組『ABEMA Prime』では、婚前契約を結んだ海保さんご夫婦に話を聞いた。
海保さん夫婦(夫・けんたろー氏、妻・さよ氏)が、婚前契約を結んだきっかけはどこにあったのだろうか。夫のけんたろー氏は「入籍の時期や結婚式場の話をしているときに『ちなみに離婚した場合の話だけど……』と勇気を出して話した」という。
「彼女が感情ではなく、理性的に話し合いに乗ってくれた。事前に取り決めておくことで、2人にとっての幸せを考えて、話し合いに応じてくれた。それが僕の中でより『やっぱりこの人が自分と結婚する人だな』と思えたことでもある」
万が一について、冷静に話し合うことで、より愛が深まった海保さん夫婦。妻のさよ氏は「些細なけんかを少しでも減らせるように、事前に価値観のすり合わせが大事だと思った」と明かす。
「みんなふわっと結婚しちゃうと思うが、結婚後の生活をしっかり話し合って、それで『やっぱりこの人だ』と思える人を選んだほうがいいと思う」
共に仕事をしている海保さん夫妻の婚前契約書には、財産分与や家事の分担、そして不貞行為や離婚に至った際の取り決めまで記載されている。内容は毎年結婚記念日に見直しを行い、微調整を行っている。
全体的にどのように内容を決めていったのだろうか。けんたろー氏は「流れとしては、最初に僕が『こういう契約を結びたいんだけど』と彼女に持ちかけて、その中で彼女からも『じゃあこういうのも入れたい』と要望をもらって話し合った」とコメント。どちらかが不貞行為を行った際は、罰金などの取り決めも入っているという。
海保さん夫妻の話を聞いていたネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は「それは罰金を払えば不貞行為をしていいってことなのでは?」と疑問を投げかける。
けんたろー氏は「そうではない。何年懲役刑を受けたら殺人をしていいかといった話と同じで、そういうことではない」と回答。さよ氏も「お互いの抑止力のために決めた」と答えた。
自身の婚前契約書を元に、ネット上にテンプレートを公開している海保夫妻。公開した経緯についてけんたろー氏は「婚前契約がうまくいったので、他の夫婦にも使ってもらいたいと思った。うまくワークするか分からなかったので、結婚して3年が経ってうまくいったので、ブログに公開した」と説明。テンプレートの内容で、埋まらない欄は飛ばしていいという。
婚前契約は何がメリットなのだろうか。婚活コンサルタントで行政書士の石山純恵氏は「契約は口頭でもメールでも成り立つが、それだと忘れてしまう」と話す。
「内容は基本的にクライアント様、ご夫婦になる二人にヒアリングして決めていきます。決めておきたいことはどのカップルも似通っているので、テンプレートもありますが、やはりカスタマイズして作成する部分はあります。口頭やメールとは違い、書面で交わすことで、お互い忘れるといったことがないですし、結婚の覚悟が決まるといった声もあります。契約書として締結しておくことで、夫婦円満の“お守り”といった意味でもお勧めしています」
一方、デメリットとしてはどのようなことが考えられるのだろうか。石山氏は「お互いで細かく取り決めることに『ちょっとめんどくさい』と感じる、あとは『結婚前から離婚や不貞行為について話すこと自体がそもそも難しい』といった声はある」と語る。
「ただ、私はそこが大事な部分ではないと思う。海保さんご夫妻のように結婚前から自制的にお話をして、人柄を確認するのは、夫婦円満に生活していくために大切なこと。デメリットを感じる方ももちろんいらっしゃると思うが、私はメリットのほうが大きいのではないかと思う。よく『結婚後の契約はできないのか?』と聞かれるが、民法の754条に夫婦間で行った契約は、婚姻中であればいつでも夫婦の一方から取り消せるという“契約取消権”がある。なので、結婚前に締結しておくことが必要」
まだ日本ではあまり馴染みのない婚前契約。トラブルなどで揉めた場合だけではなく、円満な夫婦生活を送るために役立つこともあるようだ。
(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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