メジャーリーグのオールスターゲームは、大谷翔平選手が史上初めて「1番・DH」兼先発投手の“二刀流”で出場し、打者としてはノーヒットに終わったものの、投げては1回をノーヒット無失点に抑えて勝利投手となり、メジャーの歴史にその名を刻んだ。
オールスターの中で最も大きな歓声があがったのが、大谷選手が登場した瞬間だったという。4月の開幕戦を取材し、オールスターも現地で見たANNアメリカ総局の中丸徹総局長が伝える(以下、中丸総局長)。
オールスターゲーム、大変盛り上がりました。(会場の)中からは試合後、多くの観客が興奮した状態で出てきて、ゲームを見ながらビールを飲んでいたという方もいらっしゃいましたけど、多くのファンが試合への興奮を口々に語っていました。
(取材中)かなり多くのファンの方から「俺が大谷のことを語れるからちょっとインタビューしろ」というオファーをありがたく頂戴しまして、それぐらい皆さんの中で、日本のメディアを見るだけで「オオタニ! オオタニ!」と。それは酔っているからではなくて、試合の前から「ショウヘイ!」と声をかけられました。
このオールスターという場で、大谷選手が全国区でスターとして認められた証だと思います。以前、田中将大選手がヤンキースに来た時のニューヨークでの取材や、イチロー選手、松井(秀喜)選手の取材をしたこともあるんですけど、アメリカ人のファンからの興奮度合いを考えると、私の肌感覚でも大谷選手が一番きているという感じがします。
一番大きな歓声があがったのが、登場シーン。「オオタニが登場した」ということで歓声があがったのを見ても、今年のオールスターの目玉は大谷選手で、「オオタニを見るためにここに来たんだ」というファンが多かったと思います。
4月の開幕戦も取材したんですが、その時よりも確実に大谷選手の名前がアメリカのファンの中に浸透しているなと。4月の段階では二刀流をやることはみんな知っていて、「本当にできるのか」「ケガなくやれるのか」と半信半疑なところがあったと思うんですが、6月7月のホームランの連発でアメリカ内の空気が大きくと変わったと思います。
メジャーリーグ機構も「オオタニを打ち出していこう!」ということで、急遽大谷選手にフィーチャーした動画を作成したり、今年のオールスターが近づくにしたがって、フォーカスが大谷選手に集まっていたように思います。
(大谷選手特別ルールへは)少なくとも否定的な意見はなかったと思います。大谷選手が規格外すぎて、こうしたパターンが想定されていなかったわけなんです。監督の方から今回はこういうことでこういうルールにしたという説明があって、それに関して何かマイナスの意見が出るというよりは、「それだけ大谷選手がすごいんだ」「規格外の選手なんだ」という受け止め。ファンの一般的な話を聞いていても「ベーブ・ルース2世だ」という言い方もありますし、今まで誰もやったことのないことをやっている、ホームランダービーを走っているという結果を出していることへのリスペクトが、アメリカ人の中で強いと感じています。
私が一番びっくりしたのは、ケン・グリフィー・ジュニアが大谷選手を大きなカメラで撮影していたこと。私45歳ですが、ケン・グリフィー・ジュニアと言えば我々世代がメジャーの象徴として憧れたような一級の選手が、大谷選手という新しいタイプのスターに注目して写真に収めていたと。現役の選手も注目して見ていましたけど、彼らの今までの流れにない選手なんです。野球のプロフェッショナルたちにとって、大谷選手に「どうしてこれができているのか」という純粋な興味があるということを強く感じました。
開幕から、日本でのフィーバーはこちらにも聞こえていましたけど、やはり若干のアメリカとの温度差はありました。野球ファンの中では二刀流が注目されていますし、エンゼルスファンの中ではすでにスターでしたけれど、関係ないチームに聞くと「名前は聞いたことある」「二刀流の選手だろう」という広がりだったと思うんです。それが、6月7月のホームランで「結果を出しているすごいやつがいる」と。
アメリカメディアの中継だったりメジャーリーグ機構が大谷選手をフィーチャーしたりということの舞台として、エンゼルスの中で起きていたことが、オールスターで一気にアメリカの全国区になったということが、まさに“儀式”と言ってもいいかもしれませんけれども、それが今日だったんだろうと受けて止めています。
(ABEMA NEWSより)