「母子手帳」論争、SNSで賛否の声…臨床心理士「名称よりも内容に選択肢やバリエーションを」
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 今月13日、Twitterで「親子手帳」がトレンド入りし、話題を集めた。きっかけは、さいたま市議が行った“ある提案”だ。

【映像】父親の育児参加意欲が下がる?「母子手帳」名称変更案に「言葉狩りだ」の声

 さいたま市議の三神たかし議員は、家族の形が多様化している実態や「子育ては母親のみが行うものではない」とした上で、保健福祉委員会に「母子手帳」の名称を「親子手帳」に変更する提案を行った。答弁を経て、三神氏は自身のTwitterで、実現に向けて具体的な検討が行われると報告している。また、「母子手帳・親子手帳」の併記なども考えられるという。

「母子手帳」論争、SNSで賛否の声…臨床心理士「名称よりも内容に選択肢やバリエーションを」

 三神氏の提案に、SNS上では「母子って言葉に違和感あるし、片親家庭のために『親子』の方が良い」「モノの名前の持つ力は確かにある。世の中を変えるために『親子手帳』にすべき」といった賛成の声がある一方、「親子手帳と名前を変えたくらいで、父親が今までよりも主体的に育児に関わるようになるとは思えない」「男は母体になれないのだから『母子手帳』でよくないか? 言葉狩りだと思う」「妊娠中の体重と腹囲の記録は、夫に見られたくない」といった反対の声も相次いで寄せられ、物議を醸している。

 そもそも母子手帳は、母子保健法16条において、妊婦や乳幼児に対する健康診査および保健指導の記録を行うことが規定されている。妊婦の基本情報(身長体重・年齢・病気の有無など)、妊娠中と出産後の経過記録、乳幼児期の健康診査の記録、予防接種の記録などを記入するものだ。

「母子手帳」論争、SNSで賛否の声…臨床心理士「名称よりも内容に選択肢やバリエーションを」

 母子保健法の中で母子手帳は「母子健康手帳」と呼ばれていて、名称の変更については、2011年に行われた厚生労働省の検討会でも議題に挙がった。父親の育児参加を促すために「名称変更が有効」といった意見に「妊産婦及び乳幼児の健康保持の重要性の観点などから変更しないことが適当と考える」と一定の指針と結論が示されているのだ。

 しかし、規定があるわけではないため、自治体によっては「親子手帳」や「親子健康手帳(母子手帳)」と併記するなど、さまざまな表記がみられる。

 ちなみに三神議員が名称変更を提案したさいたま市は子育てに関する知識が書かれ、経過の記録もできる「父子手帳」がある。さらに、子育てを手伝う祖父母に向けた「祖父母手帳」まで用意されている。

 それでも名称変更の必要性を唱える三神議員は、父親の中にある“潜在的な意識”について、自身のTwitterで「お母さんと子どもをつなぐ手帳、という考え方は大切だし忘れてはならないと思います。ただそれを逆手にとって『だから妊娠出産は母親の仕事、父親は関係ない』といった考えが潜在的に残っていることが気になっています」とコメント。その上で「妊娠中の、母子の健康管理や、ホルモンバランスが崩れて苦しむお母さんのケア、なるべくストレスのない家庭環境にするための努力などは、父親も取り組むものです。私は、育児のみならず、妊娠・出産も親子が当事者なのだと考えています」とつづっている。

 このニュースに『ABEMAヒルズ』に出演した明星大学心理学部准教授で臨床心理士の藤井靖氏は「育児に積極的な男性がやる気を削がれてしまうのであれば、変えてもいいと思う」と見解を語る。

「女性は妊娠後、ホルモンバランスが変わって、身体的・生理的にも母親になっていくと同時に、心理面も変化していく。しかし、男性は父親になったことを頭で理解するしかない。子どもが生まれて、しばらく経ってから“父親”の自覚が芽生えてくるため、母親と比べると父親は親としての成長発達が一般的には遅いといわれている」(藤井靖氏・以下同)

「このことは“リスク”として考えると、いわゆる産後クライシス(出産後の夫婦関係の悪化)や虐待、さらには妊娠中や産後に母親の注意や目が子供に集中してしまって、父親の気持ちが家庭外に向いてしまう、ということも家庭によってはある。そういう意味では、父親の親としての成長や自覚を促すために、さまざまなアイデアを検討するのは、一つの考え方」

「母子手帳」論争、SNSで賛否の声…臨床心理士「名称よりも内容に選択肢やバリエーションを」

 また、自身が臨床心理士として、子どもの情緒や心身の発達をみる乳幼児健診に参画する際も、付き添いとして「母親だけが来るケースがほとんど」と説明。健診は産後の女性における心身の経過をフォローする意味合いも大きいものの、「父子手帳」「子ども手帳」といった名称で、父親の親としての発達や参画を促すのも方法の1つだとした。

 その上で、内容に関しては「母子手帳と同じ内容が父子手帳に書かれているだけでは意味がない可能性がある」と言及。「父親の場合は、手帳を通して、子供の観察や記録などのある種の制約感が課されると、逆に子育てに対して心理的に後ろ向きになりえるという研究知見もある。その意味では、子どもと遊ぶことの楽しさや、どうすれば子どもの成長に父親が寄与できるかを知ることができる内容や啓発も大切だ。今後、家庭に合わせて手帳の内容に選択肢が生まれたり、バリエーションが増えるといい」と述べた。

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

【映像】母子手帳→親子手帳に名称変更は必要か
【映像】母子手帳→親子手帳に名称変更は必要か