優勝候補が堂々の予選首位通過だ。プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」予選Eリーグ第3試合、チーム渡辺とエントリーチームの対戦が7月17日に放送され、チーム渡辺がスコア5-1で勝利した。これで予選は2試合全勝、得失点差も+7と文句なし。昨年の準優勝から1つ上を狙う3人が、戦うごとに仕上がってきた。
戦いながら強くなる。“監督兼選手”渡辺名人の采配を軸に、チームの成熟度が一局ごとに増してきた。この試合のトップバッターを務めたのは戸辺誠七段(34)。第1試合では、2勝1敗と勝ち越したものの、本大会初出場の緊張感からか自他ともに満足いく内容にはならず、強烈な愛あるダメ出しを食らうことにもなっていた。だが相手チームのリーダー小林裕士七段(44)を相手に、先手番から得意の中飛車で挑むと、持ち味である「戸辺攻め」が炸裂。相手が少しペースを落としたところを見逃さず、果敢に攻めての勝利に渡辺名人も、ついに「1戦ごとに内容がよくなった」と褒めた。
若きエース近藤誠也七段(24)も、さらに切れ味が増してきた。第2局では、藤森哲也五段(34)と対戦。相手の四間飛車穴熊に対し居飛車穴熊で応戦すると、堅い陣形同士のたたき合いになるはずが、速攻で藤森陣を破壊。まさに完封勝利で退けた。第5局こそ同世代の梶浦宏孝七段(26)に敗れたものの、予選通じて3勝1敗の好成績は、本戦での活躍を大いに期待させるものだ。
後輩2人の奮闘で、リーダーも気合が入った。第3局、第6局と、竜王戦での活躍が目覚ましい梶浦七段と対戦すると、どちらも白熱の名勝負に。次世代エース候補の挑戦を真正面から受け止めての連勝。“現役最強”と呼ばれる男が、王者の威厳で退けた。
1人最大3局までしか指せないこの大会。1人がいくら絶好調でも、頂点までには届かない。渡辺名人は「本戦からはまた厳しくなりますけど、上位進出を目指して頑張っていきたいと思います」と、優勝してのビールかけを想像しながら、次のステージに向けて狙いを定めた。棋力、勢い、チームワーク。3つの要素が揃ったこのチーム、早々に姿を消す様子が想像しにくくなってきた。
◆第4回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名漏れした棋士がトーナメントを実施、上位3人が15チーム目を結成した。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)