読み書きできることが前提の社会で「発達性ディスレクシア」の当事者が抱える苦悩

 誰もが読み書きできることを前提に成り立っている社会。しかし、それに困難を抱える「発達性ディスレクシア(読み書き障害)」に悩む人が日本には約8%いるとされている。「学習障害」の一つに分類され、脳の機能に何らかの原因があるとされているが、薬や手術で治るものではないという。

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■「声をかければ誰かが助けてくれるし、生きていく方法はある」

読み書きできることが前提の社会で「発達性ディスレクシア」の当事者が抱える苦悩

 maicaさん(29)の場合、平仮名であれば次の文字を隠し、時間をかけることで、なんとか意味が理解できるという。「文字が動いて目が回ってしまうみたいな感覚。文字が宙を舞っているではないけど。それで、どう読んでいいかがわからない」。

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 発達性ディスレクシア研究会の理事長で元筑波大学教授の宇野彰氏は「図形の場合もあるし、文字は音とくっついているので、音の問題もある。そういうところが複合的に問題を生じていたり、読むのに時間がかかってしまったりするということが起きてくる。

 文字の場合、平仮名では小学校1年生の秋ぐらいまでにほぼ完成するので、その後に練習してもできないのかどうかをチェックすることで分かる。平仮名や片仮名は、音にすると1文字に対応しているが、漢字や英語には色々な読み方があるので、日本語と英語のバイリンガルで発達性読み書き障害のある方の場合、英語の方に重く出る」と説明する。

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 maicaさんが周囲との違いに気が付いたのは小学校低学年の頃だった。「国語の授業中、みんなは教科書を読めるのに、私は読めない。テストは問題文が理解できなくて、いつも居残りだし…。自分の中では“頭が悪いんだな”“バカなんだな”って完結しさせてしまっていた」。

 「数字はもちろん、英語もしんどかった」。宿題もできず、“頭が悪い”というレッテルを貼られ、いじめの対象にもなった。「学生のときは誰かに相談するのも嫌だった。でも、“頭が悪いから読めないのではなくて、それはあなたの一つの個性だから。そんなに悩むことはないよ”と、特に父はよく言ってくれた」。

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 高校を中退後はダンスや芝居を習うために留学。現在は劇団に所属し、舞台女優として活躍している。セリフを覚える作業をサポートしてくれるのが、同居する妹の星華さんだ。星華さんに極力"感情ゼロ"で台本を朗読してもらい、それを録音し、聞いて暗記する。感情を入れてしまうと、その音で覚えてしまうからなのだという。

 星華さんは「姉に初めて会った人の中には、字が読めない=頭が悪い、勉強してなかっただけじゃないの?みたいに考えてしまう人も多い。そういうことが少しでも無くなれば、発達性ディスレクシアの人も生活しやすくはなるのかなと思う」と話す。

 生活の中でも、至る所で困難が伴う。「書類など、郵便物も読めない。銀行口座を作ったり、水道の支払いをしたりする時にも分からなくなることがある」。それでも「最近では、カードをカメラで読み取ると入力してくれたり、読み上げてくれたりするサービスがあるので、よく使っている。声をかければ誰かが助けてくれるし、生きていく方法はあるので、そんなに重く考えるものではないと思っている」と前向きだ。

■気になったら相談できる窓口が欲しい

読み書きできることが前提の社会で「発達性ディスレクシア」の当事者が抱える苦悩

 sorairoさん(54)の息子・takashi君(10)もまた、読むことに極端な困難を抱えている。

 「小学校に入学した頃から、宿題に時間がやたらかかるとか、算数の文章題の意味がとれないなと思うようになった。五十音は順に全て言えるが、1文字だけ指差すと言えないことがある。正直、なんでこんなのができないのかと思った。その“どうして分からないんだろう”というのが先に立ってしまって、ちょっと怒っちゃったのは良くなかったなと思っている。勉強を強制したこともあったし、そういうことに対して、本人は“僕はバカだからなあ”なんてことを言う。自己肯定感を喪失していったのがありありと分かってきた時期があった」

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 こうした不安や葛藤は、takashi君が9歳で発達性ディスレクシアと診断されるまで続いた。「どうして分からないのかが分からないので、反復練習を強要したり、語彙力を付けるために無理やり本を読ませようとした。しかし漫画を読むこともできなかった。変な話だが、原因が分かって、逆にホッとした。息子には、“文字の読み書きに不自由がある障害がありそうだ。治るものではないけれども、良くしていくことはできるから、お父ちゃんとお母ちゃんと一緒に頑張っていこう”という話をした」。

 その後、sorairoさんはtakashi君のペースに合わせて読む練習をサポート。小学校5年生の今は、少しずつではあるが読んで理解できることも増えてきたという。学校側には認識してもらっているが、takashi君自身は学校での“特別扱い”を嫌っているようだ。

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 「障害があることがバレたくないということがあるようなので、テストでも“とめはね”に厳しい先生がいるが、“こういう感じのものが書いてあれば丸にしてほしい”みたいなという話をして、配慮につなげてもらっている。読みについても、1人ずつ教科書を読むときには、1段落だけで終わらせてもらうようにしてもらっている。発達性ディスレクシアにはいろいろなタイプがいる。読めない、詰まってしまったということであれば、こっそり教えてあげる。書くことが不自由で、読めないような文字を書いたとしても、“きれいに書いてある。ここまで書いて頑張っている”ということを言ってあげるのが一番いいのではないか」。

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 また、プライバシーを大切にしたいというtakashi君の要望を受け、家族団体などには参加せず、Twitterを通して情報発信を続けている。そんなsorairoさんが望むのが、相談できる窓口の設置だ。「うちの場合、たまたま1カ月で検査をしてくれるところが見つかったが、地域によっては予約できても半年待ち、1年待ちの状態で、検査をするだけで苦労をしている方もいる。また、学校によっては判断もしてくれないので、親が気づかなければ相談も行けないし、何をしてもいいのかも分からない。

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 前出の宇野氏は「小学校、中学校の中にも状態を見て客観的な評価ができる先生もいるし、教育委員会管轄の施設で対応してくれるところもある。しかし地域差、温度差が非常に大きいというのが残念な現状だ」と指摘。

 その上で、「病気ではないので手術や薬で治るものではないが、トレーニングしていくと楽になっていく人はいる。また、子どもの場合、大きくなって、自分の弱さと強さを自覚することでうまくカバーしていく人たちもいる。例えば読み書きが苦手なのに学者を目指そうというのはあまり現実的ではないと思うが、基本的には皆さん就職してそれなりにご活躍されていると思う。どんどん使える機器は使っていったほうがいいと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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