対中国問題では協調も可能? 文大統領の訪日キャンセルでさらにこじれる日韓関係、打開策は?
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 20日に行われた日韓の事務方トップによる会談。先んじて行われた日米の次官級協議での笑顔“肘タッチ”とは打って変わって、両者の表情は終始硬いままだった。

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 背景にあるのは、東京オリンピックの開会式にあわせて調整されていた文在寅大統領の訪日見送り発表だ。慰安婦や徴用工問題、さらに日本側が課している輸出規制に関して事前協議で何らかの成果を出したかった韓国側だったが、韓国青瓦台(大統領府)は「相当な理解の接近はあったものの、首脳会談の成果とするには依然として不十分」と判断した。

 日韓関係をめぐっては、韓国選手が選手村で“反日メッセージ”とも取れる横断幕を掲げたり、福島県産の食材を避ける目的で独自の“給食センター”を設置したりするトラブルも。一方、日本側も相馬弘尚駐韓公使が現地メディアに対し「文大統領はマスターベーションをしている」と発言したと報道。事実上の更迭に遭う事態となっている。

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 20日の『ABEMA Prime』に出演した元外交官で、防衛大臣政務官を務める松川るい参議院議員(自民党)は「オリパラはスポーツの祭典、平和の祭典なので、首脳同士が会いやすい場だ。一方で、ホストは菅総理一人なので、どうしても1人あたり15分、20分と、限られた時間にならざるを得ない。

 逆に言えば、難しい問題を解決するアジェンダをぶつけたり、“これがないからダメだ、成果がないとかダメだ”などと言う場ではない。それでも日韓関係で雰囲気を良くしたいということであれば来やすい場面だったし、日本側としては“来ていただけるのであればどうぞ”というスタンスだったので、率直に言って残念だ」と話す。

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 また、慶応大学現代韓国研究センター長の西野純也教授は「2018年2月の平昌オリンピックには安倍総理が行ったわけだし、来年の北京オリンピックも念頭にある文大統領としては、外交儀礼の観点からも日本に来ることを前提に考えていたのだと思う。ところが“この状況で行くからには何かしらの成果を上げないと意味がないのではないか”という国内的な世論が台頭、さらに日韓関係がどんどんこじれる状況になってきたため、ハードルが高くなってしまった。これは文在寅政権としても予想外だったと思う。

 松川政務官がおっしゃった通り、私としても来ていただければよかったと思う。ただ、国民感情が敏感に反応する非常にナイーブな問題を抱える中なので、来ていただいたとしても関係悪化を防ぐという点ではプラスには働かないだろう。結果的には、むしろ見送りになってよかったのではないか」。

■対中国問題では協調も可能?

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 文大統領の訪日中止を受け、菅総理大臣は19日、「日韓関係を健全な関係に戻すために、今後とも我が国の一貫した立場に基づいて韓国側としっかり意思疎通を行っていきたい」とコメントしている。

 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「韓国とは安全保障の観点からも仲良くしなければならないわけだが、慰安婦や徴用工、そして福島第一原発の処理水放出と、どの問題も日本に原因があると言ってくる。しかし慰安婦の問題は前政権のときに解決させたはずだし、処理水は韓国だって放出している。二国間での解決が難しければ、国際社会に対してアピールし、受け入れてもらうように持っていくしかないのではないか。

 もっと言えば、安倍政権が始めた“自由で開かれたインド太平洋戦略”によって作られたアメリカ、オーストラリア、インドとの4カ国の多国間安全保障の枠組み“QUAD”が国際社会からも評価されている。逆に考えると、こうした取り組みによって韓国の存在感が薄れてきているということも言えるのではないか」と疑問を呈する。

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 松川氏は「福島の問題に関しては基準値以下なので、科学的には全く根拠がなく、感情の世界の話だ。給食センターを作って運営するという話もできるならどうぞ、という話だと思うが、根拠なく貿易を止めたりすることは国際的な慣例に反しているので、そこは変えていただかなければいけない。一方で、日韓関係の悪化について、外交なので口にはしないが、特にバイデン政権は韓国が原因であることはわかっている。オバマ政権の副大統領として慰安婦の日韓合意の立役者になったのはバイデンさん自身だし、それを反故にしたのは文在寅政権だからだ。旧朝鮮半島出身労働者の問題についても、全て韓国が責任を持って個人請求権の問題を処理するということで一括妥結している。問題外だ」とコメント。

 その上で「先日の米韓首脳会談の結果、韓国としてはアメリカともう少し関係を改善しようというモードになったと思うし、アメリカも中国を念頭に置いて、日米韓の連携は大事だと言っている。日韓両国ともに、穏やかにマネージしていこうという思いはあると思う。ただし、徴用工の問題を放置したままで真の日韓関係の改善はない。歴史問題や65年協定は今の日韓関係を作っている基本条約なので、ここには影響を与えない形で、なんとか解決をしなければならない。釜山と福岡はフェリーで3時間だ。そのくらい近い国と安定的でない関係であることは国益ではない。ただ、譲れないものは譲れないの。そこはマネージしていくのが大事だと思う」とした。

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 西野氏は「かつて牛肉の輸入の問題でも非常に政治化したことがあるが、韓国の方々にとっては日本の問題であることに加えて、食の安全の問題に非常に敏感だ。オリンピックの選手たちにとても、日本のごはんをおいしそうに食べることは非常にやりにくい状況になってしまうだろう。そうであれば、給食センターについても、寛大な心で受け入れる必要がある。ただ、それ以外の輸入規制の問題は、日本は国際的な場できちんと説明をしているし、韓国もそれに基づいてきちんとした判断をしてほしい。

 また、北朝鮮問題、中国問題でも日韓の考え方がこの10年くらいでかなり違ってきている。しかし“歴史問題は日韓でやってください。ただ、北朝鮮・中国問題は我々にとっても重要な問題なのでここは仲良くしてね”というのがバイデン政権のアプローチでもある。ここは日韓で協力しようという動きになっていることは確かだ。特に対中認識では共に手を取り合える領域を探す努力をすべきだと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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