完全犯罪だ。K-1の“ダークヒーロー”安保瑠輝也が復活のKO勝利をあげた。安保は昨年9月に山崎秀晃にベルトを奪われ、拳の手術もあり長期欠場へ。7月17日の福岡大会で復帰戦を迎えた。
久々のリングに向けても“らしさ”を発揮した。対戦相手の幸輝に対し「相手が誰か知らないですけど」、「本当に格闘技やってきたんですかね」と毒舌を全開。これに反応がないとみるや「こんなプロ意識のカケラもない選手に負けるわけがない。当たり前にボコボコにします」。
これだけ相手をこき下ろすことができるのも、それだけの自信と覚悟があるからだ。ワンツー、左フックでダウンを奪うと、代名詞でもある2段蹴り。さらにボディに蹴りを叩き込んで3ノックダウンで勝利を奪った。1ラウンド53秒の短期決着だ。
力の差を見せての勝利だったが、自分が格上だと自覚しているからこそプレッシャーもあった。
「大口叩いたしヒールに徹して。それをやるには実力が伴わないと。大口叩いて負けるのは一番カッコ悪いので。ホッとしてます」
一夜明け会見でも「大口叩いて実力もある、倒せる選手になります」。今回はウェルターに階級を上げての出直し。「ウェルター級のベルトは俺しか似合わない」と、さっそくベルト獲得も宣言した。曰く「外国人もバチバチにしばける」。
いわゆる“ビッグマウス”のリスクを、安保はよく理解している。負けたらアンチに何を言われるか分からない。その怖さも引き受けた上でのリングだ。実際、山崎戦では屈辱を味わってもいる。
そこで大人しくならず、安保瑠輝也のやり方を貫いての勝利だ。ウェルターには野杁正明、ジョーダン・ピケオーという強い選手がいる。それも分かって王座奪取を宣言してみせた。
それどころか「ここから上の階級は全部オレが制覇してやろうと」。さすがにクルーザー級は厳しいが、ウェルターに続いてスーパー・ウェルター級のベルトも狙えるという。そこまでの可能性を自分に感じているのだ。
その自信が根拠のないものではないと、今回の試合で証明できたと言っていい。ダークヒーローがいることで、正統派のヒーローも輝くはず。安保が放つ独自の存在感は、これからさらに大きくなっていきそうだ。