将棋の藤井聡太王位(棋聖、19)が7月21、22日に行われた、お~いお茶杯王位戦七番勝負第3局で、挑戦者の豊島将之竜王(叡王、31)に勝利、シリーズ成績を2勝1敗とし、防衛に大きく前進した。過去の対戦成績で大きく負け越し“天敵”とも呼ばれていた豊島竜王に対し、この王位戦で第2局に続き連勝。前局は逆転勝ち、本局は中盤からリードしての快勝と、これまでの負のイメージを完全に振り払った。
【中継】お~いお茶杯第62期王位戦七番勝負 第三局2日目 藤井聡太王位 対 豊島将之竜王
本局までに2勝7敗と大きく負け越していた相手に、巧みな勝負術と突出した終盤力で快勝した。先手番から久々に採用したかつてのエース戦法・角換わり(腰掛け銀)で挑んだが、1日目はむしろ豊島竜王のペースに。形勢には大きな差こそなかったが、封じ手の段階で棋士の間では「豊島竜王がやりたいことをやっている」というのが評判だった。
ただ、明けて2日目から形勢は両者の間を揺れ動くことに。ここで藤井王位の勝負術が光った。中継していたABEMAの「SHOGI AI」では、瞬間的にはっきり豊島竜王が優勢に見えるほど傾いたが、これが数字で見るよりも難解。豊島竜王が確実な一手を選択すると、ここから形勢グラフが藤井王位に傾き出し、終盤に向かうに連れて、その差はさらに開いていった。今回のシリーズで初めて中盤でリードを奪った藤井王位も、このチャンスを逃すことなく、持ち前の終盤力できっちり勝ちへと結びつけた。
対局後、藤井王位は「(1日目は)こちらがどう対応するのか難しいと思っていました。封じ手の局面で自信がなかったです」と苦戦だと感じていたと振り返ると、2日目の入り攻勢になると「本譜は細い攻めでしたが、勝負しようと思いました。攻めとしてつながる形になったので、こちらの玉を囲ってあるのが活きる展開になりました」と、ポイントをあげた。2勝1敗とリードして迎える第4局については「王位戦に関しては間が空くので、しっかり準備して臨めればと思います」と語った。
藤井王位にとって“最大の壁”でもあった豊島竜王に対して連勝を決めた意味は、非常に大きい。王位戦七番勝負の前まで、長時間対局で勝ったことがなかったが、持ち時間8時間の2日制という、地力と試される戦いで2勝1敗と勝ち越した。25日からは防衛・挑戦の立場を入れ替えて、叡王戦五番勝負が開幕する。ダブルタイトル戦となり合計「十二番勝負」とも呼ばれる中、王位戦七番勝負第1局で藤井王位が完敗した際には、「豊島強し」のインパクトが大きく、どちらのタイトル戦も豊島竜王有利という声も出始めていたほどだ。がっぷり四つに組んでの力勝負で、力強く寄り切るように勝った藤井王位。いよいよ王位の防衛、さらには叡王の奪取という三冠達成の未来も色濃く見えてきた。
(ABEMA/将棋チャンネルより)