いよいよ日本でも“ワクチンパスポート”の申請がスタートへ…接種できない人や子どもたちとの分断を防ぐには
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 来週26日から各市区町村で申請の受付が始まる“ワクチンパスポート”。新型コロナワクチン接種済であることを証明するもので、政府によると、現時点ですでに5カ国で使用が認められ、提示することで入国時の陰性証明の提示や自己隔離措などが免除されるという。また、海外渡航の際だけでなく、国内での生活でも活用が期待されている。

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 先月から接種証明、陰性証明ができるコロナアプリ「衛生パス」の利用が始まっているフランスでは、入場者1000人以上のイベントやコンサートなどでの提示が必要になっている。また、政府が19日に閣議決定した法案では、感染力が強いデルタ株の感染拡大に伴い、飲食店、病院、映画館、大型ショッピングモール、長距離列車などでの提示が義務化されることになっている。

 一方、事実上の“ワクチン接種義務化”に抗議するデモも起きており、議員の一人は「容認できない。3000万人のフランス人に首輪をつけようとする行為だ」と批判している。

■“打ちたくても打てない人たち”をどう考える?

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 愛知医科大学病院で重症患者の対応にもあたる後藤礼司医師は「重症化が防げるというのが、大きなワクチン接種の効果だし、接種が拡大した分だけ、医療機関が逼迫ししにくくなる。今、人数で見て“第5波”と言っているが、その意味では接種率と併せて重症化率や死亡者数の推移を確実に追い、見極めることも大事にしなければならない」と説明。

 その上で、“ワクチンパスポート”について、「もちろんロックダウンなど制限された状態を緩和していくためには良いかも知れない。ただ、接種というのはあくまでも自由意志で行われるべきもの。僕たち医療者の場合は“打ちたくない”と思っても許されないが、それを一般市民にも当てはめるのは難しい。今回、“ワクチンパスポート”に関連して経団連が様々な提言をされているのも有り難いが、これまでも途上国に渡航するときなどは、狂犬病や蚊、ウイルス対策として、いわゆる“トラベラーズワクチン”を打ってきた。新型コロナウイルスについても、世界を移動するためには接種は必要なことだと認識しなければならないし、そうしたワクチンの本質については伝え続けなければならない」と指摘した。

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 アーティストの市原えつこ氏は「“不要不急だ”と言われがちで、“責任が取れないから開催するのはやめておこう”と萎縮した判断をしがちな業界の人間としては、これまで通りに再開できるきっかけにもなる」と期待感を示す。

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 元経産官僚の宇佐美典也氏は「アメリカの新聞を読んでいると、“ワクチンパスポート”によってみんながワクチンを打つようになるかといえば、必ずしもそうではないという政府の分析があるようだ。むしろ“反ワクチン”の活動が盛んになる可能性もあるし、地域のインフルエンサーを取り込んで説得してもらうようなアプローチが必要だということも言われている」とコメント。

 「では、日本の場合はどうするかだが、もちろんワクチンを打つかどうかは個人の自由だし、行政については“法の下の平等”があるので接種していない人は公的機関にアクセスしてはいけないというようなことはできない。どう使うかは、あくまでも民間の判断になるだろう。疾患のためにワクチンが打てない人もいるわけで、国としては“これだけはやるな”ということを示した上で、ワクチン接種の普及のための材料にすることが重要だと思う」と話した。

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 一方、KADOKAWA社長で慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏は「公共の利益から考えれば、打ちたくても打てないという方のことは仕方ないと思う。その病気であるがゆえに元々できないこともあるわけで、そこはコロナが収まるのを待つしかない。未来永劫続くものではなく、感染者数が一定のレベルに収まるまでの中間解としてのものだ」と反論。「むしろ問題は、“他の人が打ってくれるから、俺は打たなくても大丈夫”という“フリーライダー”のような存在だ。僕は2回目を打ったが、副反応がキツかった。それでも社会を少しでも安全にしていこう思ってやっているわけで、打てるのに打たないという主張をする人に対しては、“それなりに不便がありますよ”ということでも構わないと思う」とした。

 さらに経団連の提言に対しても、「残念だなと思うのは、ワクチンを打った人が海外に行って戻ってくるときの隔離をなくすことも希望すべきではないか。現在でも日本からアメリカに行くときには隔離がないのに、アメリカから帰ってくると隔離しなければならず、それがネックで出張ができない。アメリカはすでに何万人もの観客を入れ、マスクなしでゲームをやっているわけだし、ワクチン接種済の人に関しては帰国時に陰性が確認できれば隔離しなくていい、となればガラッと変わる」と訴えた。

■接種を受けない子どもたちへの影響も?

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 “ワクチンパスポート”の導入を前に加藤官房長官は「ワクチンの接種はみずからの判断で接種をしていただくものであり、接種の強制、あるいは不当な差別的取り扱いにつながることは適切でないと考えている」と釘を刺している。

 宇佐美氏は「早くワクチン接種を始めた国では、接種を受けない低年齢層によって学校で感染が広がり、それが社会にも広がってしまうということが起きている。また、アメリカでは学校でマスクを外すべきか外さないべきかが議論になっていて、確かにマスクを着ければ感染は抑えられるかもしれないが、様々な菌やウイルスに対する免疫力が付きにくくなるという問題もある。“ワクチンパスポート”にも似たような問題があり、親が子どもと一緒に遊びに行けないという問題が生じてくると思う。メディアはそういうところも伝えていくべきだと思う」と問題提起。

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 後藤医師は「もともとアメリカにはマスクの文化がないので、なるべくなら外したいということにもなりやすいし、よく“子どもは風の子”と言われるように小さいうちにいろいろなウイルスに曝露されたり、免疫をつけたりすることによって最終的にプラスに働くこともある。

 ただ、新型コロナウイルスについて言えば、子どもと一緒にいた大人が重症化してしまったり、蔓延させてしまったりする原因にもなる。一方、未来のことを考え、子どもへのワクチン接種については最後の最後に決定がなされる傾向があり、今回も12~15歳のところまで下りてきた。ただ日本は少子化なので、子どもへの接種が始まる前に感染拡大がコントロールできていれば、そうした議論にはならない可能性もある。

 いずれにしろ、打ちたくても打てない人たちのため、打てる人たちができる限り協力する世の中にもっていくべきだと思うし、そのための対話やデマ対策を続けていくこと、“ワクチンパスポート”についても分断を起こさないよう、そうしたことを伝え続けなければいけないかなと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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