今月7日、NASA（＝アメリカ航空宇宙局）の研究チームは、全米各地の沿岸部で2030年代中盤に満潮時の冠水被害が増加するとの見通しを発表した。
【映像】2019年 米オクラホマ州を襲った水害（2：45～）
「背景には、地球温暖化に伴う長期的な海面上昇がある。これにより、あらゆる場所で海面が上昇している。しかし、海面の変化を引き起こすほかの要因に目を向けた時、私たちはある1つの要因に注目した。私たちが『ノーダル・サイクル』と呼んでいるものは、基本的に月や地球の向きに関するものだ。何が起こるかというと、およそ20年という非常に長い周期の信号があり、月の影響で潮汐が変化する。このことが基本的な海面上昇と一致するということを私たちは発見した。そして、2030年から2040年の間に洪水が発生すると考えられる」
原因の一つと考えられているのが、潮の満ち引きに影響する「月の動き」。潮の満ち引きは、月が地球に及ぼす「引力」と、地球が回ることで生じる「遠心力」を合わせた「起潮力」が主な原因とされている。この「起潮力」が地球を引き伸ばすように働くことによって、潮位の高いところと低いところができ、潮位が上がり切った状態が「満潮」、下がり切った状態が「干潮」となる。地球は一日に1回自転をするため、一日2回満潮と干潮を迎える。
現在、月が公転をする軌道はおよそ18年と6カ月の周期で変化し、この周期のうち半分の期間では潮の満ち引きが弱まり、もう半分の期間では激しくなることが知られている。現在もこの激しくなる時期にあたるが、海水があふれるということはあまり多くはない。
しかし、次に潮の満ち引きが激しくなる時期にあたる2030年代中盤には、気候変動による海面上昇がさらに進んでいることが予想される。CNNによると、NASAの研究チームがアラスカ州を除くアメリカ本土の沿岸部全体と、ハワイ、グアムで水害が急増するだろうと警告。気候変動の専門誌に発表した。
NOAA（＝アメリカ海洋大気庁）の集計では、2019年に報告されたアメリカ沿岸部での満潮時の水害はおよそ600件あまりだったが、NASAの研究チームによると、2030年代中盤になるとこうした水害が1カ月以上繰り返される時期があったり、一部の都市で毎日または一日おきに起きる可能性があるという。
満潮時に起きる冠水は、長時間繰り返されることで各地に深刻な被害をもたらし、ひと月に10回から15回起きた場合、店の駐車場が水没し営業することができなくなったり、出勤することができずに職を失ってしまったり、汚水があふれ衛生状態が悪化する事態も懸念されているということだ。
このニュースについて、化学者兼発明家でCRRA機構長の村木風海（かずみ）氏は「地球温暖化の問題って、『地球』ってついているのでどうしても地球に目を向けがち。例えば、異常気象や干ばつが起きているとか、『今年の夏の気温は～』といった問題に目が向きがちだが、こういった地球以外の宇宙の問題が地球温暖化にも影響するというのは、もともとわかっているところもあるが、あらためて論文とか出てくると衝撃的だ」と話す。
また、14年後は今よりさらに海面上昇が進んでいる可能性をあげ、「ふだん海面上昇だけをとって見れば、何十センチかの上昇で済むかもしれないし、月の影響による上昇だけを考えたら何十センチで済むかもしれないが、合わせると増幅してしまう。だからこそ、人類は今から油断せずに温暖化対策をちゃんとしていかないと、特に海岸の堤防を高くするとか（海抜が）低い島国への対策を施すとかしないと、2035年に一気にツケが回ってくる」との見方を示した。
また、このNASAの見通しは、アメリカ国内に限った話ではなく日本にも影響があるという。「僕の研究所はお台場にあるが、お台場が沈みかねないと言うとそこまでひどいかはわからないが、日本の沿岸部が影響を受けることは明らか。僕ら日本人も他国のことと思わずに、今すぐ対策を施すことが必要になってくる」とした。
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