“完成形”ではなく“過程”に価値を見出してもらう「プロセスエコノミー」、名付け親のけんすう氏が語る期待と課題
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  製品が作られる過程を見たり知ったりすることを通じて作者の思いや努力に価値を見出し、お金を払うという「プロセスエコノミー」。

 名付け親の起業家・“けんすう”こと古川健介さんは「従来のように“完成形”でマネタイズするのではなく、お客さんを“プロセス”から巻き込み、悩み事、つまずきなども共有することで共感してもらうということだ。場合によっては“プロセス”そのものでマネタイズすることができるので、そこで得た資金を物作りや生活費に充てることもできると思う」と話す。

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 「やはりアウトプットこそが重要であって、その前のバタバタを見せるのはちょっとかっこ悪いなとか、王道ではないよね、というのが美学としてあったと思うが、インターネットの普及によってノウハウがどこにでも落ちているようになったことで、アウトプットの質が高いところで均質化し、差が出づらくてしまっている。Twitterで流れてくる漫画を見ていても、どれもすごく面白いが、10分後には忘れてしまうというように、一瞬で消費されてしまうようになってきている気がしていた」。

 しかしアイドルなど、同様のビジネスモデルはこれまでも存在したようにも思える。

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 古川さんは「もちろんアウトプットも素晴らしいが、それができ上がるまでの過程が一つの作品になっているという点では企業が商品の背景を説明することにも似ているし、『ASAYAN』のモーニング娘。、最近では『Nizi Project』も完全にプロセスエコノミーの一種だと思う。“これだけ頑張って作ったんだから”と“自分ごと化”ができ、作品のこともより深く愛せるような状態になれた」とした上で、次のように説明する。

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 「これらがインターネットによってリアルタイムに体験できるようになったというのがプロセスエコノミーの新しい点で、例えばキングコングの西野亮廣さんはオンラインサロン上で映画作りについてのことなどを日々文章で投稿している。西野さんがすごいのは、そこで得た5000万円の収益を使ってミュージックビデオを撮るみたいな、普通だったらできないような新しいクリエイティブにチャレンジをしていていくので、そのプロセス自体が面白い。そのようにしてぐるぐる回るシステムになっているのはプロセスエコノミーの成功例だと思う。これがファンクラブと違うのは、ファンクラブ用のコンテンツではなく、自分が本当にやりたい作品作りに時間を使えているという点だ」。

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 今月26日に発売された『プロセスエコノミー』(尾原和啓著、幻冬舎刊)には、「時代の転換期を記したとても意味のある一冊になると思う」(西野氏)、「プロセスエコノミーが爆発的に来ると思う」(本田圭佑氏)、「伝統工芸の方などのプロセスエコノミーを主体としお役に立つことができたら」(市川海老蔵氏)などの推薦コメントが寄せられている。

 こうした思想の元、古川さんが立ち上げたのが、漫画や小説、伝統工芸など出来上がるまでの過程を見ることができるライブ配信サービス『00:00Studio(フォーゼロ・スタジオ)』だ。

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 「例えば原価100円のハンドメイド作品が1万円で売られていたりするのを見て、消費者の中には“ぼったくりだ”と言う人もいる。しかし『00:00Studio』でそのプロセスを見ると、むしろ“なんでこんなに安いの?”と思うぐらいの時間と手間をかけていたりすることが分かる。アウトプットの値段が同じでも、プロセスを知っているかいないかで値段に対する消費者の感じ方は全く変わってくる」(古川さん)。

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 小説家のナカタニエイトさんは、『00:00Studio』で作業の配信を始めたことで人気に火が付いたという。「小説を書き始めたのは1年ぐらい前だが、やはり素人の作品はなかなか読まれないなと感じていた。それが配信を始めてからは小説サイトのランキングにも名前が載るようになった。これはプロセスを発信していなければ絶対になかったことだと思う」と話す。

 しかし『00:00Studio』を覗いて見ると、作業風景という一見すると地味な映像がひたすら続くこともあり、「見てて面白い?」「暇じゃない?」「眠くなる…」といった感想も浮かんできそうだが、コメント欄には「頑張ってください」「完成楽しみにしてます」「また見に来ますね」と応援メッセージが並び、時にはお金を差し入れしてくれるユーザーもいた。

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 プロセスエコノミーが大好きだというネオンボウヤさん(36)は、「朝5時頃から8時間ぐらいは見ている。失敗してまた、一から作り直す過程など、完成品からは読み取れない製作者さんの思いとか試行錯誤見られるところが面白い。1日中、見入ってしまう。編集なしで常にライブ配信なので、トイレや休憩に入ったりするところも分かるし(笑)、下手すると日常の生活音も聞こえてくる」と語る。

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 「例えばカレットさんというガラス工芸家さんは朝7時、8時ぐらいから作品を作り始め、夕方まで作業している姿がひたすら流れる。地味ではあるが、普段は目にできない。以前は店頭に並ぶガラス細工の工芸品を見て綺麗だと思うことはあっても、高価だし、自分の生活には必要ないな、ということで買うことはなかった。でもカレットさんとコメントなどでコミュニケーションも取り合って、作品を欲しいなと思うようになった。

 他にも今からプロの漫画家を目指していきたいというクリエイターさんが頑張っている姿を見ていると応援したくなるし、有名になって欲しいなと思う。例えば空えぐみさんという方の『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる』(“沖ツラ”)というラブコメが沖縄で人気になって、沖縄ではコミックスの売上が他の人気作品を抑えて1位になった。えぐみさんと視聴者さんたちとで、配信の中で喜びを共有できたのは嬉しかった」。

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 ではプロセスエコノミーの普及の上で、どんな課題があるのだろうか。

 古川さんは「多くの人が参入することで、埋もれてしまう方も当然出てくる。そこは作りながらトークをするとか、カメラワークを工夫するとか、お客さんが楽しめるような差別化をしなければならないタイミングがすぐにやってくると思う。一方で、過程の見せ方が過激になっていったり、期待感を煽り過ぎて失敗したりする人も絶対出てくるだろうし、過程を見せすぎることで、中国企業が真似をし、先に製品を出されちゃうみたいなことも海外のクラウドファンディングでは起きている。

 プロセスエコノミーという言葉自体が残るかどうかはさておき、プロセスを公開する人というのは今後5年ぐらいをかけてじんわりと、でも確実に増えていくと思っている。クリエイターにとっては制作時間が一番長い。その間にファンとやり取りができていると有利だよね、ということになると思う。TwitterやInstagramが出た当初は芸能人が使うには安っぽすぎるよね、という声もあったが、今で普通に使っているし、映画俳優が製作プロセスを公開するようなことも、5年、10年後には“いいよね”ということになっているのではないか」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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