プロレスリング・ノアで約20年ぶりとなる広島サンプラザ大会。この真夏のビッグマッチのメインイベントであるGHCヘビー級タイトルマッチは、王者・丸藤正道が桜庭和志を下し2度目の防衛に成功した。

【映像】好勝負となったGHCヘビータイトルマッチ

 苦しい防衛戦だった。戦前、「桜庭さんのペースというのが非常にこちらとしてはやりづらい」と語っていた丸藤だが、そこは王者として序盤戦は関節技の達人である桜庭に対し、相手の土俵である寝技で勝負を挑んでいった。

 しかし、寝技勝負となれば、やはり桜庭が一枚も二枚も上手。足関節地獄からスリーパーホールドなどで、何度もロープエスケープに追い込んでいく。さらにムエタイ仕込みのミドルキックで腕を殺し、ヒジ関節を狙っていった。

 この展開をなんとか打破しようと丸藤は、側転からドロップキックを放つが、桜庭は蹴り足を空中でキャッチしてそのままアキレス腱固め。さらに丸藤得意のトラースキックのコンビネーションもすべてガードして、逆に左ハイキックでダウンを奪う。前半戦は完全に桜庭ペースだ。

 それでも丸藤は、桜庭のフロントネックロックを外すと、ブレーンバスターの体勢から前に落とし、そのまま虎王で一矢報いる。そして逆水平チョップを放っていくと、桜庭もモンゴリアンチョップで応戦。ここから丸藤の逆水平チョップと桜庭のモンゴリアンチョップのラリーという我慢比べ。

 負けず嫌いの桜庭はついにラッシュガードを脱いで上半身裸となって、胸板を真っ赤に腫らしながら応戦。胸の痛みが限界にきても「勝負は降りられない」とばかりに今度は「背中にチョップを打ってこい」とアピール。ここから丸藤の背中への逆水平と桜庭のモンゴリアンという、前代未聞のラリーが続く。

 ついには根負けした丸藤が背後からフックキックに切り替えるが、桜庭は虎王を避けてスリーパーホールド。丸藤はこれをなんとか抜け出しパーフェクトキーロックで切り返すが、桜庭はこれをさらに三角絞めで切り返し、丸藤がロープエスケープ。

 ここから桜庭はさらに執拗にスリーパーをしかけ、丸藤が背面からコーナーに叩きつけても、そのままコーナーに上がり宙吊り式のスリーパーをしかける。しかし、これが仇となる。スリーパーを抜け出した丸藤は、コーナーの桜庭をそのまま抱え上げ、師匠である三沢光晴さんの得意技、エメラルドフロウジョンを完璧に決める。

 これで形勢は一気に逆転。丸藤はさらに三沢さんを思わせるワンツーエルボー、さらにローリングバックエルボーで畳み掛けると、虎王から虎王・零を決め、ついに桜庭からスリーカウント奪取した。

 試合後、両者は握手をかわし、道場での練習後のようにリング上で座礼。丸藤は桜庭の土俵であるグラウンドに飛び込み、桜庭もラッシュガードを脱いでチョップ合戦を展開。お互いが歩み寄ることで、これまでのGHCタイトル戦にはない好勝負となった。

 逆転のV2を達成した丸藤は、バックステージでのコメントで「チャンピオンとして、N1に……出ない!」と、9月12日後楽園ホールで開幕するノア年間最大のリーグ戦『N1 VICTORY 2021』不参加を宣言。

 「このベルトを持っているからこそ、そう簡単にシングルをやっちゃいけない気がするんだよ。文句があるなら(リーグ戦で勝ち)上がってこい」と、あえて上から目線で他の選手たちに対して挑発的なゲキを飛ばし、10.10エディオンアリーナ大阪大会で、『N1』優勝者の挑戦を受けることとなった。

【映像】好勝負となったGHCヘビータイトルマッチ
【映像】好勝負となったGHCヘビータイトルマッチ