小出恵介が約4年ぶりに連続ドラマに復帰した、ABEMAオリジナルのドラマ『酒癖50』が好評だ。小出復帰作であることと、酒の失敗=人生崩壊というスリリングなテーマで本編配信開始前から期待値は上がっていた。さらに本編配信スタート後に大きな注目を集めたのが、各エピソードのメインキャラクターたち。すなわち、酒で人生を崩壊させる主人公を演じた俳優陣による狂演の数々だった。
第1話で「自分ができるものは他人にもできる!」というモットーで生きるアルハラ剛腕営業マン・青田を演じたのは、浅香航大。好青年やミステリアスな役どころのイメージの強い浅香が一転、目を吊り上げ、首に筋を立て、声を枯らしてアルハラ男の暴君ぶりをフルスロットルで体現。自他ともに認める新境地開拓を宣言した。ドラマのオープニングを飾る第1話というだけあり、浅香はかなりのプレッシャーを背負って現場に立ったそうだが、逆にその重荷をモチベーションに変えたという。そんな浅香を煽るように、踏ん反り返ってアルハラ接待相手を務めたのが、袴田吉彦。アパ騒動後の袴田は怪演に磨きがかかっており、第1話でも絵に描いたような最悪クライアントを嬉々として演じている。
人の良すぎるサラリーマンがアルコールで性格一変。酒乱となり人生大崩壊。弱気サラリーマンの哀しき末路を描く第2話での前野朋哉もフルスロットルだ。柔和な顔立ちの前野が妙にハマり役であり、かつその優しい表情を崩さずにアルコールで性格を激変させる様子は結構怖い。普段暴れることに慣れていない男の暴走ほど危険なものはない。注目シーンは居酒屋を舞台にした横スクロール型アクション。泥酔した下野(前野)が次々と店員たちをなぎ倒す様は、かつて香港ノワールの巨匠ジョニー・トーから監督作品を激賞されたという前野の知られざる歴史を感じさせる。
飲み会の「無礼講!」という合図をきっかけに、自作ラップで上司を追い詰めていく総務部・口山を第3話で演じたのは犬飼貴丈。社内では捨てられた子犬のようにビクビクし、スマホでリリックを綴る日々。そんな男が飲み会の席で苦手な酒を飲んだら覚醒。見事な無礼講ラップを聞かせて、社内の人気者に。内気だった男が周りからもてはやされて調子に乗っていく過程を、犬飼が段階的かつ分かりやすく表現。さすが『ぐらんぶる』でお笑いポテンシャルの高さを証明した漢(オトコ)、単なるイケメン俳優で終わらない資質を持っている。しかもボス的上司を演じたカリスマラッパー・般若を相手に、ひるむことなくラップを披露するという鬼度胸も。なお第3話には般若だけではなく、ラッパー界からSAMも参戦。元仮面ライダー俳優とラッパーの競演という異種格闘技のような実験的キャスティングも本ドラマの面白味といえる。
実験的キャスティングは第4話にも当てはまる。近年はお笑い芸人の俳優業進出も増えているが、お笑いコンビ・しずるの村上純はまさにニューカマー。自惚れにも程がある意識高い系サイテー男を絶妙なラインで表現しており、SNS上では「いるいる!」の声が多数挙がった。『情熱大陸』をパロディ化したような劇中劇での村上扮する色川のナチュラルなまでのうさん臭さとウザったさは一見の価値あり。お笑い界でいえば、意識高い系のウザキャラはアルコ&ピース・平子祐希の専売特許だったはずが、それを村上はワンシチュエーションで凌駕した。第4話は村上の独壇場といっても過言ではない。コント師ならではの個性的人物の形態模写力は、今後の俳優業でも大きく活かされそうだ。