不妊治療中に「引き寄せの法則」に出会い…スピリチュアルや疑似科学にハマってしまう人たちに届きづらい専門家の声
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 「コロナワクチンは人体実験だ」。子どもたちへの新型コロナウイルスワクチン接種に抗議するデモ。取材したジャーナリストの鈴木エイト氏によると、母乳から胎児に副反応が伝播するといったデマを信じ込み、参加した母親たちもいたという。

 一見すると科学的に見えるものの、実証も反証もできない“疑似科学”、いわゆる“ニセ科学”。いわゆる“スピリチュアル”的なものも含め、効果やリスクの検証もないまま、商品や治療法として一般に広まっているものも数多く存在する。

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 スピリチュアルや科学的根拠のない健康法などを取材しているライターの山田ノジル氏は「スピリチュアルの場合、荒唐無稽な主張に染まってしまうと社会と断絶してしまうという問題がある。

 例えば子宮の声が聞こえるとか、新型コロナウイルスワクチンは5Gに接続してしまうといったことを言い出すと周囲が引いていってしまって孤立し、ますます正しく良質な情報にアクセスする機会が無くなってしまう。そうなれば、ますます事態が悪化してしまう。それでも皆さんに知っておいていただきたいのは、やはりお金や時間を搾取する側が悪いということ。だからハマってしまった人を責めたり人格否定をしたりしないでいただきたい」と指摘する。

■不妊治療中に「引き寄せの法則」に…

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 「霊媒師みたいな感じの女性が“木の声が聞こえる”といって音楽にする。それを聴くことで精神的に穏やかになったり、病気が治ったりするというようなストーリーのものだった」。井上昌則さんの場合、「音楽療法」に凝った経験がある。ところが「いわゆる断食とか菜食とかすれば良くなるという話だったが、結局は栄養失調になってしまった」。

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 5年前に夫をスキルス性胃がんで亡くした轟浩美さんは、様々な療法を探す中で、採取した血液を浄化し戻す「血液クレンジング」や「高濃度ビタミンC」点滴、さらにニンジンジュースを用いた食事療法などを試していったという。「“ガンに効く”“免疫力を上げる”と出てたので、ガンに克つことができるんじゃないかと」。しかし結果としては夫の体力を奪うことになってしまった。「“できることは全部やらなきゃ”というのが、逆に悪化させてしまった。一生消えない後悔だ」。

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 不妊治療中に「引き寄せの法則」に出会い、実践するようになったというクロミさん。「気持ちいいと感じること、楽しいと感じることを追い求めると、いい波動が出て、願い事が叶いやすくなるというものだ。引き寄せの法則は言い切るのがいい。だから私の場合、ノートに“何月何日に病院に行ったらいい結果が出ました”などと書くことで、自分の行動が願う方に向いていくと考えていた」。さらに子宮を温め、良い影響があるという触れ込みの、5mlで8000円もするオイルを購入。不妊治療で通院する際には布ナプキンに染み込ませ、気持ちを高めるようにしていたとも話す。

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 とはいえ、心のどこかで疑う気持ちもあったというクロミさん。「盲信していたわけではなくて、他の人に言えば、“怪しいよ”と言われるだろうなとは思っていた。だから周りや夫にも黙っていた」といい、SNSに“スピリチュアル”な投稿をしているのを見た友人たちが声を掛けてくれたことがきっかけで、怪しいサプリなどの“沼”から抜け出すことができたという。「加えて、商品を買って何も効果がなくて騙されたとか、被害に遭ったとかの体験談をネットで読んで、“私と一緒だ”と思い、完全に目が覚めたところがある。やっぱりちょっとでも怪しいなと思ったらネットを活用し、同じような体験をしている人を探して欲しい。周りの方は、“それ大丈夫?”“あなたが信じているものは本当に大丈夫なの?”と優しく傷つけないように声を掛けてあげるのが大事だと思う」。

■届きづらい専門家の声

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 “ニセ科学”について数多くの著書で警鐘を鳴らしてきた東京大学非常勤講師の左巻健男氏は「我々が何と言っても信頼しているのは科学だ。だから“科学的だ”と言われると、何か良いもの、安心なものだというふうに思ってしまう面がある。そして、これは科学だよねと思わせるような内容を持っているが、実は科学からは遠いものがニセ科学だ。一方で、科学も分からない部分をたくさんかかえているし、濃淡があって、簡単に線を引けるわけではない。普通の人にとって難しいのは、100%ニセ科学ではなく、部分的には科学が混ぜ込まれているので、ニセ科学の部分についても信用してしまうということだ」と話す。

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 「例えば、完全に効果が実証されないニセ科学として利用されるのが、“EM菌”という微生物資材。元々は畑などに入れて土壌を良くするために沖縄で開発されたものだが、次第に”何にでも効く”ということになってきた。ひどいものになると、沖縄本島はEM菌によって“結界”になっているので良いことがバンバン起きるという。台風は直撃しないか、直撃しても勢力が弱まる。地震が来てもほんのわずかしか揺れない、あらゆる病気に効く、福島第一原発事故の放射能をパクパク食べてくれる。1200℃という非常な高温でも死なないので、練り込ませて焼いたセラミックを建物の壁に使えば波動を出して住民が健康になるとか、水の中に入れると良い水になるという話もある。

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 問題は、そうした商売をしたりしている人たちは、それがニセ科学だと分かった上で命がけの営業活動をしているということだ。そして健康に不安がある人、本当に藁をもすがる思いでいる人たちは、 “すごい効果がある”と断言してくれるものが良い。“マイナスイオン”だって、大手の会社が出したものだが厳密に考えると科学ではないし、ホメオパシーという医療行為も、僕から見ればニセ医療だが。経皮毒、デトックスも同様だ。

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 もちろん、健康食品やサプリも含めて、強い副作用があるとか、致命的な問題がなければ良いと思う。“健康にいい水”というのも、害がなさそうであればいいんじゃないのと思っている。ただ、お金を捨てている。若い人は断言されたり“絶対”と言われたりしたら怪しむが、多くの人は逆だ。そこに対して僕たち科学コミュニケーションの専門家が対応しようとしても、科学者の言葉というのは難しく、断言もできないので、普通の人たちの間にはスッと入っていかない」。

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 ジャーナリストの堀潤氏は「左巻さんのようにきちんと解説をしてくださるような機関が必要だと思う」、リディラバ代表の安部敏樹氏は「科学コミュニケーションの専門家や橋渡しする人の育成について、真剣に議論しなくてはいけないと思う」と感想を述べていた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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