8日に閉幕した東京オリンピックについて、IOCのバッハ会長が「大会に参加した誰もがこのオリンピックを忘れることはないと確信している」、開催都市・東京都の小池知事が「都民、国民の皆様方に、この大きな大会をやり遂げられたことに心から感謝を申し上げたい」と述べるなど、様々な総括コメントが出されている。
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■「選手が頑張った、成績が良かった、メダルがいっぱい獲れた、だから成功だとは言えない難しさがある」
日本国内では最後まで開催の賛否両論が渦巻いた大会。IOCの「スポーツと活動的社会委員会」の委員も務めるオリンピアンの有森裕子氏は「コロナ禍で迎えなければいけなかったこと自体が異例だったし、それで混乱も起きた大会だったと思う。だから本来であれば全体をパッと見て評価できるかもしれないが、今回の大会は全てをまとめてどうだった、とは言えない。それぞれの部分の評価にしかなり得ない大会だと思う」と指摘する。
「競技の面に関して言えば、コロナ禍で開催が1年延長されたので、選手たちは気持ちも含めてコントロールも大変だったと思う。そういう中で、よく結果を出した大会だった。また、スケートボードなど、新しい競技の選手たちが見せた表情、言葉のひとつひとつには新鮮なところが多々あったと思うし、オリンピックの基本に立ち返らせてもらったところがあったと思う。若い世代にオリンピックの良さを見せていく存在として大事になってくると思うし、楽しみにもなった。
一方で、選手が頑張った、成績が良かった、メダルがいっぱい獲れた、だから成功だとは言えない難しさがある。大会を組み立てるまでのプロセスはどうだったのか。そして、これからどうなるのか。いろいろな方面の、いろいろな人たちがそれぞれに考えを持った大会だったと思うし、これから検証しなければならない大会だったと思う。そもそも、なぜ開催するのか、何をレガシーとするのか、ということさえも明快ではなかった。いま東京で開催する目標は何なのか、皆さんもよく分からなかったと思うし、全員の共通認識になったかと言えば、そうではないと思う。“復興五輪”についてもテーマであって、目的ではない。しかも開催が決まってからの“後付け”だ。
オリンピックというのは、お金もものすごくかかるので、現実的に呼べる国や都市は限られている。その意味では、開催した国だけでなく、世界から見ても意味があるということでなければならないと思う。それらを明快にした上で、どこで何を、どのようにするかを話さなければいけないのではないかと思う。そういう説明、議論、コミュニケーションが足りず、“理解してくれ”ばかりだった。よく“安心安全”という言葉が返ってきていたが、“安全”は数字やデータで客観的に示さなければならないし、それが形になっていない中で“安心”と組み合わせるのはおかしい。そういう疑問を持っている人だけでなく、応援している人たちの思いさえも“理解する”という姿勢が見られず、互いの溝が埋まらないまま開催に突入したイメージが残った」。
■「IOCの改革が求められている」
では、日本国外の見方はどうだったのだろうか。自宅では米NBCと日本のテレビ局の放送を3画面で同時に見ていたというパックンは「アメリカの放送は、全体的に運営のことを評価していた。専門家も、“これまでの大会の中で最も運営がスムーズだった。コロナさえなければ史上最高だったかもしれない”と言っていた。ただ、それはあくまで現場の皆さん、東京の皆さんについてのことであって、IOCの在り方への懸念の声は多かったし、開会式・閉会式の演出について疑問視する意見もあった」と振り返る。
ニューヨークを拠点にするジャーナリストの津山恵子氏も、「1984年のロサンゼルス大会から取材している写真家の友人に聞いたところ、“今までに見た大会の中でももっとも選手が素晴らしかった。非常に限られた時間、プレッシャー、観客がいないという環境の中でベストを尽くすところを見せつけた大会だった”と言っていたし、評価する論調もある。スポーツビジネスとアスリートへの支援は分けて考え、後者についてのサポートは今後も必要だろう。一方で、グッズを作りすぎたとか、お祭り騒ぎをやるためだけのサポートというのもあったと思うので、そういう改善点は洗い出す必要がある。のもあったと思うので、そういう改善点は洗い出す必要がある。
そして、日本政府や組織委員会が説明責任を果たす必要があると強く感じた。例えばCNNが“官邸や組織委員会に問い合わせたが、バブル方式を具体的にどうやってするのかということへの回答がなかった”などと書かれていた。そして、特にIOCへの批判は強かったと思う。ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストが掲載した論評にも共通していることだが、開催国、開催都市の人々の心情に配慮されていたのかどうかを非常に問題視しているし、ワシントン・ポストは強い言葉で“詐欺以上だったのではないか”、あるいは日本でも話題になったと思うが、バッハ会長のことを“ぼったくり男爵”とまで書いている」と話す。
その上で、「有森さんもおっしゃった、巨額のコストを日本国民の税金で返していかなければならないという問題だが、長野大会は20年かかって返済したが、東京大会は過去最高のコストがかかっているので、それ以上かかるのではないか。東京大会も選手村などでの工夫が海外でもすごく注目されていたが、気候変動問題など、“地球全体の問題を解決していくんだよ”というアピールをしたところに開催してもらうとか、アスリート・ファーストというのをもっと強く打ち出していくのがいいと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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