送迎バス園児死亡事故にEXIT兼近「きょう大丈夫だから明日も大丈夫、が成立しないのが子どもと関わる仕事」
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 先月29日、福岡県中間市の保育園で起きた園児の死亡事故。送迎バスの運転手として1人で乗り込んでいた園長が、倉掛冬生ちゃん(5)が降車していないことに気付かないままドアを施錠。冬生ちゃんは約9時間にわたり車内に閉じ込められ、熱中症で亡くなった。

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 園長が送迎時の確認や点呼を行わなかったことに加え、担任の保育士も冬生ちゃんがいないことに気づきながらも出欠の確認をしなかったという。警察は業務上過失致死の疑いで調べを進めているほか、福岡県と中間市も送迎体制や園児のチェックに問題がなかったか特別監査を実施している。

 1人で送迎を行っていた理由について、「朝、働ける保育士が少なく人手が足りなかった」と説明した園長。しかし保護者の間からは「日常的にできていることが5個あるとして、その5個がひとつもできていなかったということはわざとではないか。その5個の中の1つでもできていたら、その子は確認されていたんだから」との疑問の声も聞こえてくる。

■保育園の労働条件の問題だけにしてはいけない

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 ベビーシッターの経験のあるEXIT兼近大樹は「きょう大丈夫だったからといって、明日も大丈夫というのが成立しないというのが、子どもと関わる現場。今回の事故も、やはり“大丈夫だろう”が重なったのではないかと思うが、本当に一瞬の怠慢が一生の後悔につながる」と話す。

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 元帝京大学教授で、現在は社会福祉法人「加須福祉会」(埼玉県)の理事長として保育園の運営に携わる村山祐一氏は「ここ20年ほど変わっていない保育士の配置基準が矛盾を起こしているということは事実だ。労働時間が週40時間制になっても、わずかなお金を出しただけで土曜日も1日やりなさいというひどい条件で、現場は四苦八苦しながら人を集めてやっている。だから労働条件も悪くなるし、賃金も安くなる。そこは幼稚園と比較しながら改善してもらいたい。

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 ただし、事故というのは、“大丈夫だろう”と考え、それを怠ることの積み重ねによって起きるもの。日常的に複数の保育士でひとつひとつを点検するということが大切だ。今回も、他の子どもが泣いていて気を取られたといったことも考えられるが、当然やるべき出席確認についても軽く見て、“連絡はないけど休みなんだろう”と都合よく解釈してしまった可能性もある」とコメント。

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 また、送迎バスの問題については「保育園の基準で言えば、子どもが1人だとしても職員が2人付かなければならないが、送迎バスと園内のことは別になっている。それでも安全運転をするためには、同時に車内の子どもたちを見る人がいなければならないはずだ。そもそも子どもを預かる時には、担任が親から家庭での様子を聞くという交流の時間が必要だ。

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 それは1分でも2分でもいいが、年に直せばその積み上げが影響すると思う。その意味では、本来であれば親が送迎するべきだし、送迎バスに親子で乗ることができれば一番安心だ。つまり、これは単に保育園だけで解決できる問題ではない。大人の都合だけで安易にやり方を模索するということは絶対にあってはならないし、これは保育園の労働条件の問題だけにしてはいけないと思う」と指摘した。

■保育士に余裕がなければならない

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 東京都内の保育園に勤務する、現役保育士のてぃ先生は「人数がいても防げない事故もあると思うが、今回のケースで言えば、人数がいれば防げていたのかと言えば、ちょっと疑問がある。出欠確認はほとんどの園で行われているものだし、普段からルーティンになっていれば、当日だけ抜けていた、ということは起きづらいのではないか」と話す。

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 また「送迎バスに関しては地域や通わせている層によっても違うが、地方ではそれがないと通って来られる方が少ないということで運用しているケースもあるし、都市部でも定員割れを起こしているような園が付加価値を付けるために運用しているケースもある。ただ、考え方としてはパイロットがいて客室の安全は添乗員さんが守る飛行機と同じだと思う。子どもたちが乗り物酔いで吐くこともあるし、おしっこを漏らしてしまうこともある。とはいえ、親子で一緒に乗るというのは現実的ではない。今の子育て世代は、ほとんどが共働きなどで、どうしても保育園を利用したいという方が中心だ。そういう中で“保護者の方も乗ってくださいね”というのは、正直厳しい。

 本来、いい保育のためには、いい保育士がいないといけないし、いい保育士が力を発揮するためには余裕がなければならない。パンフレットやホームページ上で“うち、良い保育してまっせ”“食育に力入れてますよ”という保育園さんも増えているが、実行するのは現場の保育士たちだ。その保育士たちが普段から眉間にしわを寄せながら忙しそうに働いている状況であれば、謳い文句どおりの保育が行われていない可能性もあるんじゃないか」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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