「アフガニスタンを押さえれば“一帯一路”がキレイに繋がる」タリバンへの経済支援を約束した中国の戦略とアメリカの失敗
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 アフガニスタンの首都カブールに侵攻した反政府武装勢力タリバンは15日、大統領府を占拠。指導者の一人が勝利宣言を行った。ガニ大統領はすでに国外に脱出、SNSを通じて「流血を避けるために国を離れた」と釈明、タリバンの事実上の勝利を認めている。混乱の中、カブールの空港には国外への脱出を図ろうとする市民たちの衝撃的な映像が拡散している。

・【映像】国外脱出を求めて空港に人が殺到

 そんな中、タリバンによる政治体制の構築を事実上容認する考えを示したのが中国だ。

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 中国問題グローバル研究所所長・筑波大学名誉教授の遠藤誉氏は「各国の大使館の職員が引き上げていく中、中国大使館とロシア大使館の職員は引き上げてはいない。これが何を意味しているかといえば、両国の大使館は危なくない、すなわちタリバンの側に立っていたという何よりの証拠だ。中国はこれにより、アメリカがいなくなったところに入っていくことができるようになり、そして一帯一路を綺麗に繋げられることになる」との見方を示す。

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 「中国はこれまで、巨大経済圏構想“一帯一路”をやってきた。地図をご覧いただくと、パキスタンとは“パキスタン回廊”と呼ばれるように緊密な関係にあるし、イランとも非常に緊密な関係にある。また、4月にはイランのほかトルコ、サウジアラビアなどの中東6カ国を王毅外相が歴訪したが、これらは全て“反米”の勢力ばかりだ。ただ、アフガニスタンだけが紛争で空白になっていたために、この“一帯一路”がなかなか繋がらなかった。そこで7月28日、王毅さんとタリバンの代表が天津で会い、“あなた方が政権を取った場合、私たちが徹底して経済復興支援をする。その代わりに、テロの活動はやらないと約束してください”と固い約束を交わした。これもタリバンが強気に出ていく要因になったのだろう」。

■「中国の支援によって秩序が保たれれば大変なことになる」

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 2001年、9.11の同時多発テロをきっかけにアフガニスタンへの侵攻を開始したアメリカ。それにより、ほぼ全土を実効支配していたタリバンは政権の座を追われ、一時ほぼ壊滅状態に陥ったものの、ゲリラ攻撃による反攻で紛争は泥沼化、米軍の被害も増大した。

 それから20年、バイデン大統領は今年4月、「アフガニスタンでの作戦において死亡した米軍関係者は2488名、“永遠の戦争”を終わらせる時だ」として駐留米軍を9月11日までに完全撤退させることを表明(後に“8月中”に変更)。去年2月にはアメリカと和平合意していたタリバンだが、この機を逃すまいと、政権の再興を目指して一気に攻勢をかけたのだった。

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 遠藤氏は「アメリカとしてはアフガニスタンなどの中東の国は放っておいて、中国との競争に集中しなければいけない。9月11日までに引き上げる、ということだったが、一体何を考えているのか。地図をご覧なさいよ、と。アフガニスタンが中国の側に付いたが最後、もう天下は中国のものと言ってもいいぐらいの、嬉しい、美味しい場所だ。そこをアメリカが読み取れなかったというのが不思議でならないし、政策のまずさを感じる」と話す。

 「皆さんもご存知の通り、アフガニスタン政府やアフガニスタン軍はアメリカの支援でできていた。しかしこの20年、アメリカがアフガニスタンに注いだ1兆ドルほどの資金の多くは政府や軍の要人のポケットに入り、30万人いるアフガニスタン人兵士のうち15万人は給料をあまりもらっていなかったともいわれている。そこにアメリカ政府やアメリカ軍がいなくなってしまった。もう誰のために、何のために戦っているのか、と士気が萎えてしまったと一方、6万人しかいないといわれるタリバンの兵士は“この機会を逃してなるものか”、と闘志が満々になった。

 そもそも軍事力を使って民主化させようというアメリカの発想自体、非常に宗教性が強い地域においては成立しないということを示したと思う。現時点では表面的には経済をサポートするという綺麗なことを言っているだけかもしれないが、中国が20年にわたる紛争で食糧難に陥っているアフガニスタンの人々をサポートし、秩序を保つことができれば、これは大変なことになると思う」。

■「中近東に関わっては失敗して撤退する、その繰り返しだ」

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 アメリカ出身のパックンは「アメリカ人の誰もが、“なんのためのアフガン戦争だったのか”という疑問を抱いていた」と話す。

 「振り返れば9.11のテロを起こした犯人を匿っているタリバン政権を攻撃するというものだったし、ブッシュ大統領は“我々は国づくりなんかしない”という公約のもとで当選したし、タリバン政権の代わりの何かをつくるということも本意ではなかった。撤退しようと言っていたオバマ大統領も結局は増派することになり、14万人を超える兵力でもって制圧することになった。しかし、やっぱり手に負えなくなってしまった。

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 選択肢は主に3つあったと思う。1つ目は支援金を引き続き注ぎ込み、6月時点のまま数千人のアメリカ兵を駐留させ、多国籍軍と一緒に秩序を守るということ。しかし遠藤先生がおっしゃった通り、アフガニスタン政府は腐敗していて、国民から愛されていなかった。やっぱりそういう政府は維持できないし、そこに付いているアメリカも国民からは嫌われてしまう。2つ目は、もっとお金を注ぎ込み、増兵して抑え込み、政府を作り直すということ。これもオバマ政権中に挑戦して失敗した。この2、3年は平和だったのも撤退するとカオス状態になるところ、タリバンとの交渉が続いていたからだ。

 だからこそ、3つ目の撤退という選択肢を取ったのだと思うし、大半のアメリカ人は今回の撤退は避けられなかったと思っているはずだ。それでもアメリカに協力してくれていた人々がタリバンに粛清されたり、処刑されたりするといったことも起きてくると思う。そういう方々を守れなかったとすれば、アメリカにとって恥になる。結局、アメリカも含め、フランスもイギリスもロシアも、中近東に関わっては失敗して撤退する、その繰り返しだ。そもそも挑戦しないほうが良かったかもしれない」。

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 アフガニスタン難民の取材も行ってきたジャーナリストの堀潤氏は「元タリバンで、今は現地で平和構築活動を行っている方は、“この数年の間にシリア、イラク、あるいはアフリカで武装勢力が活発になっている。そういう中で、アフガニスタンがまた空白域になっていた。ソ連が侵攻して撤退、アメリカが来てまた撤退、そういう時に暴力がはびこるんだ、世界はアフガニスタンにもう一度注目してほしいんだ”と訴えていた。

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 そして、彼は“アメリカ兵たちが薬を配ったり、教育の支援を行ったりしているのを見て、やはりこの国の統治の在り方は変えないといけないんじゃないかと考えた”と話していた。あれから数年経ってまさにその状況になってしまった。彼が今どうしているのか心配でたまらないし、中国との関係、国連は機能できるのか、我々自由主義諸国はどのように関わればいいのか」。

■「日本は“アンチ中国”として人道支援を」

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 今後について遠藤氏は「今の中国のモットーは、どんなことがあってもテロを根絶させるということ。ウイグル族の人たちを弾圧しているのは、テロを起こすからだという主張だし、今月9日にロシアが共同で軍事演習をしたのも、テロ対策のためだ。タリバンは原理主義的なテロ行動、分離独立を行うような人たちは領土に入れないというような強いメッセージを出したのも、中国とともに一緒にテロを抑えていこうということかもしれない。しかしタリバンとの会談直後にロシアとの軍事演習を実施したということは、本当はタリバンを信じていないということなのかもしれない」と推測。

 また、日本の役割については「アフガニスタンで立派な活動をされていた中村哲医師が犠牲になったという事実を私たちは忘れてはいけない。中村医師がアフガンでどれほど必要とされていたかということもしっかり頭に入れて、医療も含めた人道支援をしっかりし、いいイメージを作っていくということは、“アンチ中国”という方向性から考えても非常に有用なことではないかと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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