半年後に迫った中国・北京の冬季オリンピック。8月16日は全土で45人と、日本よりも圧倒的に少ない新規感染者数だった中国だが、ここにきてデルタ株による感染が拡大を見せ、有名観光地の閉鎖や入場制限も相次いでいるという。
そんな中、国際スケート連盟は「東京オリンピックでも採用された“バブル方式”が確立できない」との理由から、11月に重慶市で予定されていたフィギュアスケートのグランプリシリーズ中国大会が中止になったことを発表した。
■「中国政府としては100人、200人出るというだけで恐怖を感じる」
いま中国で何が起きているのか。最新の状況を抑えておこう。
まず、中国在住26年の藤田康介医師(上海)は「我々医療関係者の場合、3日~1週間に1度のペースでPCR検査を受け続けていて、その間にもし異常があれば、無症状であれ軽症であれ、即入院だ。もちろん個人でも希望すれば気軽にPCR検査を受けることができる。例えば10人1組の“プール式”検査であれば、1回300円ほど。そして患者が1人か2人出ると、すぐに感染者を隔離し、とにかく市中に感染者がいないという状態を作り出す“中国式withコロナ”に力を入れてきた。この検査と隔離、そしてワクチンが両輪なので、上海市の場合、接種率がほぼ8割を超え、だいぶ目標達成に近づいてきている」と話す。
「皆さん数字の信憑性をよく言われるが、そのくらいの対策をしている中での数字だし、もし何かあれば我々のところにはすぐに情報が入ってくるので、極めて正確なデータだと理解している。そこで8月16日を例に挙げると、上海では感染者が1人確認され、入院患者は2人だけ。全土でも、いわゆる市中感染者は6人となっている。一方、45人のほとんどは“輸入例”で、それが少し増えてきているという印象はある。先日、上海の空港で感染者が一例確認されたが、それがデルタ株だった。しかし、すでに5万人の空港職員のほぼ全員がワクチンを打っていたこと、すぐにPCR検査を受けたこともあり、クラスターは発生しなかった。変異株に対しては、ワクチンの効果が若干落ちるということはあるが、それなりに役割を果たしているのではないかと考えている」。
次にANN中国総局長の千々岩森生氏(北京)は「すみません、日本のように時短営業・休業要請のようなものはないので、昨日も居酒屋で友人とワイワイ、ガヤガヤと普通にお酒を飲んだ(笑)。ただ、先週までは全土で3桁の感染者が出ていたので、かなり緊張感はあった。日本に比べればかなり少ない数字だが、中国政府としては100人、200人出るというだけで恐怖を感じるような流れになっている。それだけに、例えば去年の一時期はお店に入るときに必要だったスマホに入っている“私は感染の危ない地域には行ってない”といった証明書が今また必要になってきていて、例えばタクシー乗車時、運転手さんに“まずQRコードをスマホで読んでくれ、お客さん”だ。そして証明書を見せてOKであれば、“じゃあ出発しよう”と。やはりこの1カ月ほどは緊張が高まっている」と話す。
■安藤美姫さん「できるだけ早めにスケジュールを決定してもらえたら」
そんな中でのグランプリシリーズ中国大会の中止決定。千々岩氏は「去年7月に中国政府が決めた、国内では国際大会はもうやらない、という方針の延長だ」との見方を示す。
「例えば大坂なおみ選手などの有名選手も参加し、毎年10月に開催されていた北京オープンというテニスの大会も2年連続で中止だ。フィギュアスケートの大会についても去年は開催されたものの、参加したのは中国の選手だけだ。もちろん、2月の北京大会まで時間がないので、やはりテストのような意味も含め、大きな国際大会をやりたいはずだ。それでも、やはり感染対策のためにやらない、という方針でいくということだろう。ここで下手に国際大会を開催し感染が広がった場合、北京大会を最悪の事態で迎えることになるからだ」。
また、北京大会の開催にあったっては、厳しい隔離、もしくはバブル方式が導入される可能性が高いという。
「上海や重慶では14日間だが、中国というのはとにかく首都を守るのが当たり前という感覚。おそらく観客やメディア、例えば松岡修造さんのようなキャスターの方が来ても、21日間の隔離をするか、バブルに入れるかのどちらかになるだろう。隔離をすればスタジアムはもちろん、街中にも万里の長城にも好きにどうぞ出ていいということになるが、そうでなければ決められたところからは絶対に出られない。そのどちらにするか、中国政府は頭を悩ませていると思う。私自身も21日間の隔離を経験したが、ずっと部屋から出られないので、少し心が折れる。食事は3食、ホテルの部屋の扉を開けると弁当が置いてあるので、それを取ってまた閉めるというのが続く。また、中国政府としては今回の東京大会をかなり評価しているし、参考にもしていて、アスリートについては21日間の隔離ということはせず、“バブル方式”が取られることになると思う」。
日中の企業課題を解決しているクリエイターの陳暁夏代氏も「去年の秋くらいからは今のような感じだし、私の知る限り、音楽ライブやアイドルの握手会なども行われているので、要するに変異株のことも踏まえ、オリンピックまでの間は海外の人に来てほしくないということだと思う」と話す。
フィギュアスケート元世界女王の安藤美姫さんは「無理してグランプリシリーズを行うよりも、北京オリンピックを世界中からアスリートが安心して来れるようにしたいということだと思う。ただ、21日間の隔離は少し厳しいし、冬の競技は雪や氷がないと何もできないという競技も多い。中国の選手も含め、全員が同じ条件で競技に向かえれば不公平さはないと思うので、もし本当に選手や関係者が隔離されることになった場合、できれば国や連盟の間で交渉して、少しスケジュールを前倒しし、チームで練習させてもらえるといいと思う」と指摘。
また、「IOCはもちろん、関係者の皆さんはアスリートがベストなパフォーマンスができることを望んでいると思うので、無理はさせないと思うし、そういう決定が下されれば、アスリートはその条件下でベストパフォーマンスをするという精神でいる。特に日本を代表して、国旗を背負って出場させてもらうアスリートはそういう鍛錬をすごくされているし、私たちが思う以上に本当に大変な思いをしながら毎日を過ごして、4年に1度という舞台で輝く。できるだけ早めに決定してもらえたら」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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