「“ママアスリート”という表現に違和感」安藤美姫さんが出産からの復帰、育児しながらの競技を語る
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 ジェンダー平等、多様性と調和を掲げ、参加したアスリートの男女比が初めてほぼ半々となった東京オリンピック。日本代表選手も583人のうち、史上最多となる277人の女子選手が出場した。その中には、陸上の寺田明日香選手など、出産を経て子どもを育てながら競技を続けるアスリートの存在も。

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 5度目の出場となった今大会を限りに引退を発表、「1年延期になってしまったオリンピックだったが、その舞台に立てたことには本当に感謝しているし、精一杯力を発揮できたと思う」と話すクレー射撃東京五輪代表の中山由起枝さんもその一人だ。

 しかし、妊娠・出産から復帰するまでには、多くの苦労も伴った。「自分が思っていた以上に体が変わってきてしまう。例えば骨盤が一度開いて戻ったことで、キュッと締めなければいけないときに力が入らなかった。緩んでしまっているということを実感した。あるいは復帰してしばらくしてから、散弾を発射したときの衝撃で奥歯に亀裂が入っていることが分かった。知識が無かったせいでもあるが、妊娠時期からカルシウム不足なっているということに気が付かず、競技にも影響することになった。今であればサポートしてもらえるかもしれないが、当時は困難な状況だった」。

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 子育てとの両立にも悩んだという。「私が現役復帰したのは18年前だが、その時には日本の体制がまだ構築されていない状態だったので“自力”だった。海外の選手の場合、お子さんを連れてきて、競技中はパートナーやチームメイトが面倒を見るということもそんなに珍しくない光景だが、日本ではそうではない。逆に同性の選手から、“子どもがかわいそう”という言葉をかけられ、ショックを受けたこともある。最近ではサポート体制や支援もしっかりなされているので、それを活用すればもしかするとトップ・オブ・トップになれるかもしれない。ただ、国立科学スポーツセンター(JISS)には託児所も設けられているが、地方から来るアスリートや、そこが競技会場でない場合には利用できないので難しいところもある」。

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  フィギュアスケートでオリンピックに出場した安藤美姫さんは「私の場合も日本では前例がなかった。もちろん骨盤の開きを感じることはあったし、内転筋が伸びちゃって全く締まらず、イメージでは飛んでいるのに転んでしまい、1回転すらもできなかった。そこで最初に習った先生に頭を下げて、“ジャンプをやりたい”と教えてもらった。大家族なのでサポートもすごくしっかりしてもらえたし、トレーナーの先生も本当に応援してくださった。名古屋と関東と行き来して、朝6時からとか、夜中に練習をレッスンしたが苦と思わず、また1回転から習えると思って、めちゃくちゃ楽しかった」と振り返る。

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 「9歳から競技をやっていたので、“簡単だし”みたいなメンタルになっていた。それが“こんなに大変な競技なんだ”というのを改めて感じて、誇りに変わった。小さい頃の気持ちに戻って、楽しみながら3回転を取り戻せたので、面白かった。ただ引っかかったのは、メディアの報じ方だ。幸せは人それぞれだし、私は子どもがいることにすごく幸せを感じていた。それなのに、“もう安藤は終わった。復帰は絶対に無理だ”というようなことも言われた。

 でも私の性格上、“わかんないじゃん。前例がないのに、なんで最初からできないとか、無理だって言うんだろう。絶対に全日本選手権に行く、やってやる”と決めて1年間を過ごした。そして中山さんのように、子どもと離れる時間が多いとかわいそうだということを言われるだろうと思ったので、それだけは言われたくないと思って夜中に起きてミルクを作ったし、海外の拠点にも一緒に連れて行き、試合会場でもギリギリまで授乳していた」。

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 その上で安藤さんは「そもそも、“ママアスリート”という言葉にすごく疑問を覚える。たしかにプライベートにおいては、お母さんという立場だ。しかし日本代表として会場で戦うときは、他の選手と変わらない精神でいる“アスリート“だ。中山さんもそうだと思うが、そこになんで“ママ”をつけるのかな、“パパアスリート”はいないじゃないかと。もちろんリスペクトの意味も込められているのかもしれないが、私にはあまり感じられない。むしろ“違い”がフィーチャーされているのかなと思う」と訴えた。

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 中山さんも、「私もそこには違和感を持っている。“ママアスリートとしてオリンピック出場”と表現されると、残念な気持ちが先立つ。出産をして競技に復帰するためには強い意志がなければできないし、周りの理解、サポートがなければできない。そういうアスリート自体が少ないから“ママアスリート”と呼ばれていると思う。環境がそうさせているのだと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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