勝敗の「ターニングポイント」が見当たらない 藤井聡太王位の快勝を示す勝率グラフとの相関
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 将棋藤井聡太王位(棋聖、19)が8月18、19日に行われた、お~いお茶杯王位戦七番勝負第4局で、豊島将之竜王(叡王、31)に140手で勝利を収め、シリーズ3勝1敗で防衛に王手をかけた。先手の豊島竜王が相掛かりの出だしから研究手を出し意表を突いたと思われたが、これに藤井王位も対応。「少し苦しかったと思います」と振り返りつつ、冷静に対処し形勢互角で序中盤を経過すると、終盤の入り口あたりから徐々にリードを奪い始め、そのまま勝利につなげる攻めの連続。勝勢になっても、勝利に一直線というよりも、決して逆転を許さない手堅い攻めをつなげて快勝を収めた。この勝利を最先端の2つの機能が分析。本人が語るよりも、その数字は藤井王位の力強さを示すものになった。

【動画】藤井聡太王位が豊島将之竜王に力強く勝利した一局

 この対局を中継していたABEMAでは、形勢を勝率(%)で表示する「SHOGI AI」を搭載している。互角の50%から始まり、60%、70%と傾いていけば有利、優勢。99%が表示されるころには必至や詰みが生じていることもある。この勝率が変動する様子を示したグラフで、藤井王位が快勝を収める際、緩やかに99%へと近づいていく通称「藤井曲線」が描かれることもあり、ファンの中でも浸透し始めている。

 また、この対局からSHOGI AIの新機能として、最善手と同じ手を指した割合を示す「BEST率」、勝敗の分かれ目になる「ターニングポイント」が対局終了後に表示されるようになった。必ずしもBEST率が高い方が勝利するわけではないが、勝負どころの終盤でBEST率が高いほど、勝敗に直結することも多いと見られている。またターニングポイントは、勝率が大きく変わるポイントで、その一手の有無は対局者に与える影響も大きい。

 この一局の数字を見てみると、BEST率は豊島竜王が56%だったのに対し、勝った藤井王位が60%だった。中盤こそ両者とも52%で並んだが、序盤と終盤は藤井王位が上回っていた。興味深いのはターニングポイントだ。結果は「なし」。つまり、決め手となるポイントがあったわけではなく、重ねた一手一手が少しずつ形勢を良化させ、勝利にも近づいたことになる。これは先述の「藤井曲線」と同じことを意味していた。

 「神の一手」「AI超え」と呼ばれるようなセンセーショナルな手は、大きな話題にもなる。ただし強者が確実に勝利を得ようとすると、その展開は華々しいものから次第に遠ざかり、より地道で着実になっていく。じわじわと勝率が上がり、終局後に振り返ってみてもターニングポイントが見当たらない。こんな将棋が続くほど、藤井王位の強さはさらに際立っていく。

(ABEMA/将棋チャンネルより)

藤井聡太王位の快勝譜
藤井聡太王位の快勝譜
お~いお茶杯第62期王位戦七番勝負 第四局2日目 藤井聡太王位 対 豊島将之竜王
お~いお茶杯第62期王位戦七番勝負 第四局2日目 藤井聡太王位 対 豊島将之竜王
第6期 叡王戦 五番勝負 第四局 豊島将之叡王 対 藤井聡太王位・棋聖
第6期 叡王戦 五番勝負 第四局 豊島将之叡王 対 藤井聡太王位・棋聖